09.宿泊研修~私のキモチ、君オモイ~
-翌日-
よく晴れている。良かった。いい研修になりそう!!
早く寝たから、早く目が覚めた。
これで直輝に迷惑をかけなくても済んだ。
朝日、気持ちイイ~~~ って、ん?あれは?
直輝?! 早くない? まだ20分も前だよ?
いや、まさか!!直輝はいつもこれくらいに来てるとか?
じゃあ、私はどんだけ待たせてんのよ。
今日くらいは急がなくちゃ!!
荷物ok!よし!!直輝が待ってる!
バタバタ……
『行ってきまーす!!』
「気をつけてね。結希奈。行ってらっしゃい」
『うん!!お母さん、ありがと!』
「はい」
『直輝!!!』
「へ?」
上の空だった直輝はなんだか、
今まで見た事のないようなものを見ました!
みたいな目でこっちを振り返った。
『お、おはよ』
「あ、あぁ。 てか、大丈夫か?お前早くね?いつもより15分も前だぞ?何かあったのか?」
『いや、部屋から直輝が見えたから、待たせちゃいけないと思って』
「あぁ、そういう事。 ん、じゃあ、行くか」
『うん!!楽しみだね!!』
「っ!! お前さぁ…」
『ん?』
ため息交じりで直輝が呟いた。
「いや、やっぱなんでもない」
『うん?』
それっきり直輝は、しゃべらなくなってしまった。
話しかけても、「そうだな」とか「あぁ」しか返ってこない。
やっぱり、何かあったのかな?私、何かしちゃったの?
どうしてだろう。なんでこんなに胸が痛いの?
直輝? 私、分からないよ… どうすればいいの?
不意に、涙が出そうになった。
-3時間後-
「わぁ~すごい!」「海、綺麗だね!!」「ホテル、超豪華じゃん!」
ホテルに到着した。皆は、口々に感動を表わしている。
でも、私は
心:「ゆき?大丈夫?」
莉:「顔色、悪っ!」
『え?あ、ごめん!ヘーキだよ?』
私、上手く笑えてるよね?
折角の研修なんだ!楽しまなくちゃ!
莉沙と心に迷惑かける訳にはいかないんだから!
しっかりしろ!自分!!
「ゆき…」
『ホント大丈夫だって!気にしないで』
心:「なんかあったら、ちゃんと言ってね?」
莉:「無理は絶対しない事!!」
『分かりました。ありがと。心、莉沙』
莉:「ゆき~~~~!!!」 ギュゥ!!
心:「うるっ!」 ギュウゥ!
『わぁぁぁ~ って、痛いよ!!』
「「「ははは」」」
3人で、笑いあった。きっと、大丈夫だよ。
で、今日は、午後から自由行動なんだけど
その前に。お昼を作らなきゃいけない。
私たちのグループは、王道のカレーを作ります!
女子は、カレーの下準備をして、男子は、火熾しをする事になった。
でも、直輝はクラス委員なので今も、クラスのみんなに
指示を出している。忙しそうだなぁ。無理しないでね…。
まぁ、私たちは野菜を切る事になったんだけど
『わぁー!莉沙!危ないから!!』
『て、心!!指、気をつけてよ!!』
そう、この二人。はっきり言うと、料理には向かない。
今だって、包丁を握る手が震えている。
私は、小さい頃から母の手伝いをしていたし、
それなりに料理もできる。
本当のお母さんとお父さんに再会した時に、
手作りの料理を食べさせたいと思って手伝い始めたんだけどね。
という事で、二人には洗い物を頼んで。
私が下準備をすることになった。
莉:「ゆきって、ホント料理できるよね~」
心:「羨ましいなぁ~」
『こんなの誰でもできるよ。今度、二人にも教えてあげるよ』
莉:「え?イイの??」
『もちろん!!』
心:「ありがとー!ゆき」
『ふふっ』
私は、こんな二人が大好きです(笑)
二人のおかげで、元気が出てきた。
すると
隼:「莉沙は、昔から料理は向かないもんな~」
莉:「隼!! うっさいわね!人は一つくらい向かないものはあるわよ!!」
隼:「はいはい、分かったよ」
心:「で、隼くん。何かあったの?」
隼:「あぁ~、そうそう。ゆき。お前さ、直輝と何かあったの?」
『っ?! …分からない…』
隼:「分かんない、かぁ~」
莉:「七河がどうしたのよ?」
隼:「ん?いや、直輝さ、昼は別グループで食べるとか言い出したからさ…」
「「「え?」」」
隼:「変だろ?何かあったのかって聞いても、答えねぇし…。ゆきなら何か知ってるかな?と思って」
『そうなんだ…』
体から何かが抜けたようだった。
隼:「え?ゆき?大丈夫か? なんかごめんな?」
『うんん、いいの。 あ、隼くん。これ、下準備、終わったから』
隼:「あ、サンキュー じゃ、火にかけてくるわ~」
隼くんが行ってしまった後、なんだか体が重く感じた。
心:「ゆき?」
莉:「七河も何考えてんだか…」
『私は、大丈夫だよ?ホント気にしないで?あ、でも、ちょっとトイレに行ってくるね!』
「…………」
二人の心配そうな顔を見て、
思わず泣いてしまいそうだった。
私、完全に直輝に避けられてるな。
そう思ったら、ホントに涙が溢れてきた。
皆に知られたくないから、ホテルのトイレまで走った。
『直輝…』
声に出したら、急に切なくなった。
私、どうしちゃったんだろ?
直輝の態度一つで、こんなに落ち込むなんて。
らしくもない。だけど、だけど!
今の涙は止まらない。止まってくれない。
涙の正体を理解するのに時間はかからなかった。
私は、直輝の事…好きなんだ。
でも、こんな気持ち、伝えられないよ。
私は、直輝とこのままでいたいよ。
直輝…。お願いだから、避けないで…。
何かしちゃったんだったら、謝るから…。
いつもみたいに、笑ってよ…。お願い…!!
『直輝!!!』
気づいたら小さな声を上げながら、
私は、泣いていた。