06.部活~まさかの甘い時間?!~
-数日後 放課後-
今日は、部活見学+体験入部がある。
見学しながらも先輩たちと活動ができるのだ。
私は、部活に対してやる気がないので、帰宅部になる事にした。
心も莉沙も同じ感じ。
だけど、あの三人は、
隼:「おい、直輝。早く行こーぜ?」
直:「ちょい、隼!服を引っ張るな!」
奏:「隼、少し落ち着いて下さい!」
隼:「いーじゃんか~。俺、すげぇ楽しみだったんだよ!久しぶりのバスケ!!」
テンション高っ!!まるで、
直:「小学生か」
って、直輝と同じ事、考えてたんだ。
直:「たくっ。 まぁ、しゃーね、行くか。あ、奏多も参加だぞー」
奏:「……分かりましたよ。早く行きましょう」
という訳で、バスケ部の方に行ってしまった。
私達だけが教室に残された。
すると、莉沙が
莉:「お願い!ゆき、心!バスケ部、見に行きたいんだ!」
「「え?!なんで」」
思わずハモってしまった。
莉:「私、あの…その…」
心:「莉沙?」
莉:「私!超カッコいい先輩、見つけたの!!だから、ついて来て!」
心と私がポカーンとしていると、
莉:「ば、べべ別に、無理にとは言わない!けど…頼めるのゆき達くらいしかいないから…」
出た。莉沙のツンデレ。
『まぁ、しょうがない。やる事もないし、行こ?心』
心:「そうだね。行こっか」
莉:「ありがとーー!!!!」
いわゆる、恋する乙女の付き添いという訳で。
直輝たちを追いかけるように、私たちも体育館に向かった。
-体育館にて-
ギャラリーに行くと、すでに沢山の女子がいた。
その視線の先にいるのは…
「キャー!直輝くーーん!!」「隼くん、素敵~!!」「奏多様~!!」
この三人。
心:「相変わらず、すごい人気だね」
『そうだね。で、莉沙。見つかった?』
莉:「うん!!あの青いシャツ着てる人だよ!カッコよくない?」
…青いシャツ? あぁ、あの人か。
整った鼻で、茶色がかかった髪。
ぱっちり二重の大きな瞳。
流れる汗もキラキラしている。
完璧に莉沙のタイプだな。
『カッコいいね。心は?』
心:「カッコいいと思うよ」
莉:「でしょ?!」
輝き続けるあの三人に、
負けないくらいの煌めきを持ってる人だと思う。
きっと、今まではあの先輩が、
こうやって叫ばれていたんだろう。
莉沙を見ると、夢の中だった。
心を見てみると、誰かを目で追っている。
誰…? 隼くん?
隼くんが動けば、心の目も一緒に動いている。
あぁ、心は隼くんが好きなんだ。頑張れ!心!!
って、肝心な事を忘れてた。
『あ、ねぇ、莉沙。あの先輩の名前は?』
莉:「え?黒野穂高先輩だよ?」
『ふーん。ん?黒野って、生徒会長じゃない?』
莉:「えぇー、気づくの遅~。心は気づいてたよね?」
心:「もちろん。あれ、ゆきは気づいてなかったの?」
『うぅ…はい』
莉:「ははー、ゆきらしい」
『うるさいな…………って、直輝?!』
直輝がコートの中で倒れた。
と、同時にホイッスルが鳴り響く。
直輝に意識はあるみたい。でも、足を引きずっている。
私は、走り出した。
莉:「え?あ、ちょ、ゆき?!」
心:「どこ行くの?!」
二人の声も聞かずに直輝のもとに走った。
自分でもよく分からないけど、走っていた。
マネージャーに聞くと、保健室に向かったらしい。
直輝は「一人で行く」と言って聞かなかったようだ。
きっと、今も一人で歩いているはず…!
体育館から保健室まではなかなか、遠い。
私は必死に直輝を追いかけた。
体育館からは、また黄色い歓声が響きはじめた。
しばらく走って、廊下でうずくまっている人影を見つけた。
『直輝!!!』
「?! って、お前かよ…。」
『何やってんのよ!!』
「いや~、足を挫いたらしくてさ、あはは」
『だから、そーじゃなくて!ああー、もう!!ほら!肩、掴まって』
「え、あぁ、うん」
直輝は自分より人の事を考える。
だから、素直になれなかったり、人に頼る事をしなかったり…
不器用だし、変に遠慮するし…
まぁ、私も人の事は言えないとこもある。
莉沙にも心にも
「ゆきはちゃんと人を頼らなくちゃ!何の為の友達なの?」
と言われた事がある。
だけど、たとえ人の事を言えなくても、
直輝には無理しないでほしい。
一番最初に助けに行くから、助けを求めてよ。
もっと、もっと…
『頼ってよ…』
「え?」
『もっと、もっと頼ってよ。私の事…
私って、そんなに頼りないの?
直輝を支えるくらいの強さは
持ってるはずなんだけどなぁ~』
私のバカ…!なんで、ここで泣くのよ。
いつも助けてもらってばっかりの私。
直輝と話した事もなかった小学4年生の頃。
母さんと父さん(←叔母と叔父です)とはぐれて、
迷子になった時、直輝が何故か隣にいた。
中三の時。変な人に話し掛けられて、連れて行かれそうになった時も、
直輝が来てくれた。
一番助けてほしい時、隣にいるのは、
友達でもなく、母さんと父さんでもなく、
いつも直輝だった。
「ゆき?」
『直輝が…助けて…って言った…ら、ちゃんと…助け…に行く…から…
だからね…直輝の…こと…守らせてよ……うっ…くっ……』
「ゆき…。 ゆき、分かったから、泣くなよ」
そして、いつだって直輝は、
「泣かないで…。」
優しいんだ。
「なぁ、ゆき。俺の一番の助け、知ってるか?」
私の頭を撫でながら問いかける。
『…? 知ら……ない…』
「俺の一番の助けは、お前が、ゆきがいる事だよ?」
『…え?』
今、なんて言ったの?という言葉は、
言えなかった。それは、気づいたら
直輝の腕の中だったから。
「俺はずっと、助けられてきたんだ。ゆきにずっと」
『嘘だよ…だって…私……何も…ヒクッ…して…ない』
心臓がドキドキしてる。だけど、なんだか心地良い。
「いーや、ゆきは俺を助けてんだよ? 今だって、一番最初に来てくれたじゃん」
『そ、それは…』
直輝が心配だったからだよ?
でも、それは言葉にできなかった。
上手く言葉が出てこない。
こんな風に直輝と、
男の人と話すのなんて、初めてだから。
「じゃ、ゆきに頼もっかな。俺と保健室、行こ?てか、連れてって?」
『う、うん』
私はきっと、真っ赤な顔をしている、はず。
こんな顔、見られたくないから、直輝より一歩早く歩いた。
-保健室にて-
「あぁ。結構、派手にやってんなぁー」
そんな事を言いながら、手当をする
北川先生。
「2、3日はあんまり動くなよ?」
「はい」
「ん、出来た。たっく…気ぃつけろよ。学園の王子様の七河直輝君。」
嫌味っぽく笑った先生。
「やめて下さい、それ。つーか、俺、王子じゃないですから」
「ほぉー。 本人は無自覚か…」
「はぁ?」
「ま、いっか。いいじゃねぇの?
俺も高校ん時は、女子にキャーキャー言われて、
お前みたいな感じだったから(笑)」
「いきなり自慢ですか?嫌味ですか?」
「別にー」
「…。ありがとうございました。行くぞ、ゆき」
『あ、うん。失礼しました』
私たちは先生の言った事が、理解できずに保健室を出た。
-北川side-
保健室来室者
1‐3 七河直輝 捻挫
はぁ~ 面倒くさい奴。いや、奴ら。だな
4月から俺の仕事が一気に増えた。それの原因は。
「七河直輝・松本隼・林奏多が、
とりあえず何かをしてその仕草に
ノックアウトした女子生徒の世話と処理」というもの。
‷なんでこんな事をしなきゃ、なんねぇんだ。
たかが、男三人にやられるなんて…。
ここの女子は、ホントに大丈夫か?‴
と本気で思っていた。ついさっきまでは…。
七河がここに来た瞬間、それは覆された。
そして、俺は確信した。‘これは、奴らの所為だ’と。
まぁ、奴らも運び込まれてくる女子もかわいい生徒だし、
俺の後輩でもあるから、見捨てはしないが…
あの3人、あれは犯罪の領域だな。
やっと、女子の気持ちが理解できた俺だった。
-北川side end-