言ノ葉.
「 眠いねえ 」
甘い声がした。
机に突っ伏していた顔を上げると、5月の柔らかな日差しを浴びてチョコレート色の髪をした女の子があたしの左隣でほほえんでいた。
やわらかそうなふわふわした髪が、5月の爽やかな風に揺れる。
フランス人形のように大きな瞳にすっと通った鼻筋、そしてぽきんと折れてしまいそうなほど細くて小さな小さな身体。
我ながら、ハイスペックな親友を持ったものだと思う。
ドッからどう見たって、何度見た顔であっても見るたびにその美しさに脱帽してしまうくらいだから。
「 んー、」
それに比べて、女子なのにぐたっと机に突っ伏してるあたしってどうなんだろう。
まあ左隣は窓だし、右隣の男子はサッカー部でグラウンドでサッカーしてるはずだから美羽以外顔なんて見られないんだけど。
「 唯ぃ、よだれ出てる。 」
「 まじ!? 」
ガバッと顔をあげ、思わず制服の裾でよだれをぬぐいそうになる…って待て待て、そんなことしちゃったらガキ丸出しじゃないか。
えーと、ハンカチハンカチ…
制服の赤いブリーツスカートを探っていると、美羽が「 はい 」とレースの可愛いハンカチを差し出してくれる。
「 あ、いいよこんなきれいなハンカチ 」
だってこんな高級そうなハンカチ、あたしのよだれなんかで汚したくない。
っていうか改めて美羽は女の子だなあ、と思う。
まあ、あたしも一応女子なんだけど。
「 いいよぉ、使って~? 」
ぐい、とハンカチを差し出される。
よだれらしきものは輪郭を伝っている、う、気持ち悪っ
「 …ごめん、使わせてもらう。 」
お言葉に甘え、ハンカチで輪郭をぬぐった瞬間。
隣のサッカー部男子、櫻井が目を丸くしてあんぐりとこちらを見つめているのに気付いた。