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五話 断罪の夢
その夜、ファリ――フィールは夢を見た。まだファリでも、ニルヴェルヘーナでもなかった遠い過去の光景を、ただぼんやりと眺めるだけの夢。そう呼ばれる、断罪の責め苦を。
透明な、綺麗な結晶を手にはしゃぐ子供。
それを見守る両親、祖父母、そして親類やいとこ。
これみてぇ、と子供は笑顔で走っていく。
石が、きらりと意味深に光る。
そしてすべては赤になった。子供以外のすべてが、動かなくなって、赤になった。握っていた石はどこかに消えて、数日前に買ってもらったばかりの衣服に、何かがこびりついて。
子供は、独りになった。
――エスレディア公爵の悲劇。
己が引き起こしたあの陰惨な事件がそう呼ばれ、メルフェニカ国内で未だ時折話題に上ることを彼は知らない。なぜなら、子供はすぐにある一門に引き取られ、国を離れたから。
国王が、行方知れずとなった公爵の嫡子フィール・エスレディアを、何年も昔から探していることさえも、彼の父と王が友人で、成人している彼に爵位を継いで欲しがっているなど。
ファリ・ニルヴェルヘーナとなった『彼』は、知らない。