焦る影・後編
資料室では、魔術協会が作成した様々な資料が並んでいる。
そのうちの一つ、禁術の記載がある資料を見繕う。
禁術とは、魔術協会によって定められ、使用を禁じられた魔術。
特に、白骨化した遺体を操る魔術は、”骸骨操術”と呼ばれ、
本来なら国民全員が知っているほど、危険な魔術。
「それを、学園で堂々と使うなんてな…モロ。一体どんな子供なんだ?」
その魔術が危険と呼ばれるに至った事件…
――
ちょうど百年前——
無数の白骨を操り、この国のどこかで大暴れしたやつがいた。
名前はムエ。
魔術協会の記述では―
その白骨の体はあらゆる攻撃も防ぎ、
その白骨の腕はあらゆる建物を、いとも簡単に崩壊させた。
その白骨の拳は、対処にあたった人々を次々に返り討ちにした。
そいつを捕まえる頃には、崩壊した街に、辺り一面、真っ赤な血が…
「うぇ―」
思わずえずくチリヌル。
(こんな惨い事件。何が目的だったんだ?)
この事件も満百年を経ち、人々から、その記憶は薄れてきている。
しかし、骸骨や死体を操ることが危険だという思想は、今なお残り続けている。
――
キィー―
ビクッ。
その事件に入り込んでいたのか、突然の物音に自然と体が反応する。
「…あら?お疲れ様です。チリヌルさん。調べ物ですか?…まさか…例の?」
眼鏡をかけた女性が入ってきた。
「あぁ、マテリアさん。お疲れ様です。そのまさかですよ…
”骸骨操術”によって起こった事件を調べてて…」
「マテリアさんは…」
彼女が持っている鍵が視界に入る。
「…やべっ!もうそんな時間でしたか。」
チリヌルは読んでいた資料を片付け始める。
「ふふっ。ゆっくりで大丈夫ですよ!」
「それにしても…凄い数の資料...無理はしないでくださいね!」
「…あざます。」
「そういえば…マテリアさんってお子さんいらっしゃいましたよね?」
資料を元の場所に戻しながら質問する。
「はい。まだ小さいですけど、とっても可愛くて。」
マテリアさんの子供の話から何か掴めないかと思ったが、そんなはずもなく…
ーー
チリヌルは自分の部屋に戻り、明日からの計画を立てる。
「見回りはマストだよな…問題はどこを見回るか…」
「ルミナス学園の周りはあらかた調べたが…」
「だぁ…元はと言えば、あの学長がだな…」
机に体重を預け、項垂れると、
「寝るか…」
考えても無駄だと悟り、チリヌルは眠りについた。




