激動の一日が終わり
「ここまで来れば大丈夫だろう...」
衛兵から逃げる為、酒場から便利屋ドリューまでを、全速力で走った二人。
肩で息をするモロとは対照的に、ドリューはまるで疲れた様子がない。
「モロ。疲れているかもしれないが、ここの案内をしよう。」
便利屋ドリューの一階、正面は依頼人とのやり取りをする場所で、空気が張り詰めている。
ー
だが、さらに奥へ進むと、たちまち景色が変わる。
「す…すごい!」
「ここが、君の新しい家だ。」
木製の綺麗な扉。
シックな黒色の扉。
そして、水色の扉。
用途の分からない部屋へと繋がる扉が、雑然と並んでいた。
そのうちの一つ、白くて、横に滑る扉を開けるドリュー。
中には白いベッドと、簡素な机、壁際には薬品が整然と並んでいた。
小さくなったエヴァをベッドの中央に寝かせるドリュー。
そして、手で記号を描き、その記号を半分に切る。
スゥーッ……
エヴァの体が次第に元の大きさに戻っていく。
「エヴァさん…」
スー……
スー……
静かな寝息が聞こえ、安堵したモロは、彼女に優しく布団を被せた。
「心配しなくても、エヴァなら大丈夫だ。”頑丈さ”なら、僕の何倍もあるから。」
ピクッ
エヴァの眉が動く。
「さて、今度は君の部屋と…お風呂も案内しよう!」
ー
モロは案内されたお風呂に入り…
ー
「今日は色々あって疲れただろう?ゆっくり休んでくれ。」
モロの部屋の扉は、上部に小さな窓がはめ込まれ、どこか落ちついた印象だ。
「ドリューさん。本当に…何から何まで、ありがとうございます!」
「ふふ。どういたしまして!」
ドリューは片眼鏡を掛け直す。
「君がここにいるのを決めたのと一緒で…僕も君を守ると決めたんだ。これからも、頼ってくれ。」
「それじゃ、おやすみ…モロ。」
「おやすみなさい…ドリューさん。」
月明かりが、モロの新しい部屋を照らす。
「……今日は、本当にいろんなことがあったな……」
生徒の冷たい視線。
教師の怒号。
それらを追い払うように、便利屋ドリューでの出会いや、エヴァとシンバの魔術決闘が脳裏に浮かんだ。
「でも…楽しかった……かも?」
鞄を開き、骸骨の頭を眺めた。
「ーー骸骨さん。君のおかげ、だよ。」
そう言ってから、ふと我に返る。
「……って。僕が操ってるんだった。」
誰に聞かせるでもない独り言が、部屋に溶ける。
そのまま布団に潜り込むと、一日の疲れが、ようやく体に追いついてきた。
まぶたが重くなり、静かに眠りへ落ちていく。




