表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/13

第12話 第1章クライマックス(ワイバーン戦)

 天界のオフィス。

 俺は栄養ドリンクの空き瓶で作った塔を横目に、モニターを凝視していた。


 勇者レオ一行は、第1章の最終エリア『天空の回廊』に到達していた。


 断崖絶壁に架かる一本の吊り橋。

 その上空を旋回するのは、このエリアの主――『ワイバーン』だ。


 【Boss: Sky Wyvern】

 【Ability: High Altitude Flight, Fire Breath】


 空からの炎ブレスによる一方的な攻撃。

 RPGにおける「初見殺し」の筆頭だ。


 攻略法はシンプル。

 「弓や魔法で撃ち落とす」か「降りてきた隙を狙う」こと。


 だが、今のパーティを見てみよう。


 レオ(勇者):武器はひのきの棒。対空攻撃手段なし。

 グロック(戦士):裸。対空攻撃手段なし。  

 マリア(聖女):計算機を叩いている。攻撃する気なし。

 イグニス(魔法使い):唯一の遠距離攻撃役だが、極度の近眼。


「ククク……空を飛ぶ蜥蜴か。だが、俺の『邪眼』には太陽の黒点しか見えん」


 イグニスが杖を空に向けるが、彼が狙っているのはワイバーンではなく、遥か彼方の太陽だ。

 撃ったらフレアで地球が温暖化する。


「降りてこい! 俺と正々堂々、地べたで殴り合おうぞ!」


 レオが棒を振り回して叫ぶが、ワイバーンは賢い。

 安全圏からブレスを吐く構えを見せている。


「ああっ! 空からの熱い視線(物理)! 焼かれる! 俺の肌がカリカリベーコンになっちまう!」

 

グロックが涎を垂らして両手を広げる。


 タンクが機能していない。

 このままでは全員黒焦げだ。


「マリア! 障壁魔法(バリア)を張れ!」


 俺は叫んだ。

 彼女ならできるはずだ。


「えー? 対空バリアはオプション料金よ? 1分につき1000G」


「払う! 俺が(アバター経由で)払うから!」


 だが、間に合わない。


 ワイバーンが大きく息を吸い込んだ。

 ブレス発射まであと3秒。

 イグニスは太陽を狙っているし、レオは石を投げようとして自分の足に落としている。


 俺はキーボードに指を走らせた。

 ワイバーンを直接攻撃することはできない。

 だが、ワイバーンの「精神(メンタル)」に干渉することは可能だ。

 空を飛ぶ生物にとって、最も致命的なデバフは何か?


 Target: Enemy_Wyvern_Boss

 Add_Trait: [Acrophobia (高所恐怖症)]

 Level: MAX (Fatal)


 「自分が高い所にいることを思い出せッ!」


 ッターン!


 その瞬間。


 上空で威厳たっぷりに翼を広げていたワイバーンが、ふと下を見た。

 地面まで数百メートル。

 落ちたら死ぬ高さ。


「ギャッ……!?(高っ!?)」


 ワイバーンの顔色が青ざめた(爬虫類だが)。

 足がすくみ、翼が硬直する。

 「飛んでいる」という事実そのものに恐怖したワイバーンは、空中でパニックを起こし、揚力を失った。


 ヒュゥゥゥゥン……。


 墜落。

 回転しながら落ちてくる巨大な質量。

 その落下地点にいたのは――


「うおっ!? 来るな! 俺はMだが圧死はNGだ!」


 グロックだった。


 ドズゥゥゥン!!


 凄まじい地響きと共に、ワイバーンがグロックの上に直撃した。


「ぐべらぁっ!?」


 土煙が晴れる。


 そこには、白目を剥いて地面にめり込んだグロックと、その上で「怖い怖い高い怖い」とガタガタ震えてうずくまるワイバーンの姿があった。  


 グロックのHPバーが点滅している。

 だが、彼は生きていた。

 そして、震えるワイバーンの腹の感触に、何かを感じ取ったようだった。


「……重い。肺が潰れそうだ。だが……この震え……俺を求めているのか?」


 グロックは血だらけの手で、自分に乗っているワイバーンを優しく抱きしめた。


「よしよし、怖かったな。俺が受け止めてやったぞ」


「キュー……(地面最高……)」


 高所恐怖症になったワイバーンは、地面(グロック)の安心感にすがりつき、彼に甘えるように顔を擦り付けた。

 変態と爬虫類、種族を超えた奇妙な友情(依存)が成立した瞬間だった。


「……見事だ」


 レオが腕組みをして頷いた。


「俺の覇気が重力すらも操り、奴を地に縛り付けたか」


 違う。

 高所恐怖症だ。


「素材が傷ついてないわね。生け捕りにして動物園に売りましょう」


 マリアが電卓を叩く。

 ワイバーンが怯えてグロックの股間に顔を埋める。


 ――こうして。

 第1章のボス、ワイバーンは討伐された(精神的に)。


 俺は深く、長く息を吐き出した。

 どうにか第1章をクリアした。

 だが、モニターの隅には既に第2章の文字が浮かんでいる。


 俺の戦い(残業)は、まだ始まったばかりだ。

 ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

 これにて第1章『チュートリアルの絶望』が完結となります。


 スライムに負けそうになり、一本道で迷い、毒沼を温泉にし、最後は空飛ぶ竜を高所恐怖症にする。

 デウスの苦労と、レオたちの自由すぎる攻略(?)を楽しんでいただけたなら幸いです。


 さて、明日からは新章『第2章:業務拡大と中間管理職の悲哀』がスタートします!

 ダンジョンのギミックはより複雑になり、謎解き、透明床、そして「強制恋愛イベント」など、神様泣かせの理不尽なオーダーがデウスを襲います。

 さらに、戦士グロックの変態性にも磨きがかかり……?


 明日も更新します!

 「第1章面白かった!」「ワイバーン可愛いw」「デウスに有給を!」と思っていただけた方は、 ぜひブックマーク登録と、ページ下部の【☆☆☆☆☆】評価をお願いいたします!

 皆様の応援が、デウスの胃薬代となり、作者の原動力となります。


 第2章でも、胃痛と笑いのカオスな旅にお付き合いください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ