第11話 ライバルパーティ登場
天界のオフィス。
俺はモニターの前で、今日一番の冷や汗をかいていた。
順調(?)に進んでいたレオたちの背後に、猛烈なスピードで接近する反応があったからだ。
【Party: Order of the Silver Wing(銀翼騎士団)】
【Status: Elite / High Speed Progression】
正統派の勇者候補パーティだ。
リーダーはイケメン騎士、仲間は賢者、聖騎士、弓使い。
全員が高レベルで、装備も一流。連携も完璧。
彼らは第1層から第4層までを、レオたちが費やした時間の10分の1で突破してきた。
「まずい……!」
今回のミッション条件は『レオ一行による魔王討伐』だ。
もし、このエリート集団が先に最深部へ到達し、ボスを倒してしまったら?
レオたちの功績はゼロになり、俺の任務は失敗(=ボーナスカット&左遷)だ。
画面の中で、エリート集団がレオたちに追いつこうとしている。
場所は第5層への連絡通路。
一本道だ。
「ここを通すわけにはいかない!」
俺は管理者権限を行使した。
彼らを殺すわけにはいかない(正規の勇者候補なので、殺すと始末書ものだ)。
あくまで「足止め」をするしかない。
Target: Corridor_Area_05
Object_Place:
Effect:
「迷宮名物・無限回廊だッ!」
ッターン!
◇
エリートパーティのリーダー、アーサーが足を止めた。
目の前の通路に、突如として『黄色と黒の縞模様の看板』が現れたからだ。
そこには古代語(日本語)で『工事中につき通行止め』と書かれている。
「……待て。何かおかしい」
アーサーが剣の柄に手をかけた。
「ダンジョンの奥深くで、これほど整然とした人工物……。これは『王の試練』に違いない」
「ああ、間違いない」
賢者が眼鏡を光らせる。
「この看板から放たれる魔力(俺の神力)……ただならぬ気配だ。迂闊に踏み込めば、魂ごと消滅させられるぞ」
彼らは優秀すぎた。
深読みしすぎて、ただの看板(物理判定なし)を「高度な精神トラップ」だと誤認し、その場で作戦会議を始めてしまった。
そこへ、レオ一行がのんびりと歩いてきた。
「ふぁ~、昨日の狼は可愛かったな」
「毛皮、もったいなかったわ(チッ)」
レオたちは、道を塞ぐエリート集団と看板に気づいた。
「む? 先客か」
レオがアーサーに声をかける。
「おい、そこで何をしている? 邪魔だぞ」
「警告する。この先には不可視の即死トラップがある。我々が解析するまで待て」
アーサーが親切に忠告した。
「トラップだと?」
レオは看板を見た。
彼のINTは3だ。
漢字が読めない。
「フン、ただの板切れじゃないか。俺の覇道には関係ない!」
レオは看板を蹴り飛ばした。
ガシャン! と安っぽい音がして看板が倒れる。
「なっ……!?」
エリートたちが絶句する中、レオはズカズカと先へ進んだ。
そこは俺が仕掛けた『無限回廊』のエリアだ。
真っ直ぐ進めば、永遠に同じ場所に戻ってくるループ空間。
「レオ、気をつけて! 空間が歪んでるわ!」
マリアが警告する。
だが、レオは自信満々に言った。
「俺の勘が言っている。『真っ直ぐ』は罠だとな!」
レオは突然、壁に向かって斜めにダッシュした。
方向音痴スキル『絶対迷走』の発動だ。
本来なら壁に激突するはずだが、そこは無限回廊の「継ぎ目(バグりやすい箇所)」だった。
ズルッ!
レオの体が壁をすり抜けた。
空間の繋ぎ目を、方向音痴という名のランダム移動で強引に突破したのだ。
「ええっ!? 壁の中へ!?」
「待ってレオきゅん! 俺も挟まりたい!」
「金目のものは置いてきなさい!」
仲間たちが慌ててレオに続き、壁の中へ消えていく。
残されたのは、エリート集団だけだ。
「……見たか、今のを」
アーサーが震える声で言った。
「あの看板の罠を物理的に破壊し、さらに空間の裂け目を見切ってショートカットした……。あいつ、何者だ!?」
「天才……いや、怪物理論の使い手か……!」
彼らはレオの後ろ姿に畏敬の念を抱き、敬礼した。
そして、「我々はまだ修行が足りないようだ」と言って、来た道を引き返していった。
俺はモニターの前で脱力した。
勝った。
勝因は「文字が読めないこと」と「真っ直ぐ歩けないこと」。
……本当にこれでいいのか、勇者。
第11話、お読みいただきありがとうございます!
「優秀な人は深読みして自滅し、馬鹿は直感で突破する」という、コメディにおける真理を描きました。
デウスが設置した「工事中看板」と「無限回廊」は、レオのINTの低さと方向音痴の前には無力でした。
エリート騎士団の方々、真面目すぎてごめんなさい。
さて、次回第12話は『第1章クライマックス(ワイバーン戦)』です。
これまでの小競り合いとは違う、空からの巨大な脅威『ワイバーン』が登場します。
対空攻撃手段を持たない(イグニスは当たらない)パーティ。
デウスは、空を飛ぶ敵をどうやって地面に這いつくばらせるのか?
そして、戦士グロックとワイバーンの間に生まれる、種族を超えた(歪んだ)友情とは?
明日も更新します!
「エリート集団の勘違いw」「レオの方向音痴が役に立った!」「工事看板は卑怯w」と思っていただけたら、 ぜひブックマーク登録と、ページ下部の【☆☆☆☆☆】評価をお願いいたします!
デウスの胃痛と引き換えに、物語は第2章へと加速していきます!
引き続き、応援よろしくお願いいたします!




