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第19話:告発前夜

1/4

夜、バックアップ拠点の一室。

モニターには完成した“確定線”の航路図と海外子会社の名前が並んでいる。

朝比奈が腕を組んだまま言った。

「これだけ揃えば、マスコミも無視できないはず」

蓮司は頷くが、口元は固い。

「……問題は、どこが放送してくれるかだな」

2/4

光が通信回線の監視結果を映す。

《一部メディアで放送予定だった特集が、スポンサーの圧力で取り下げられました》

「やっぱり茅葺の傘下か……」

朝比奈が舌打ちする。

《報道が封じられる可能性は高いです》

「じゃあ、こっちは直接流すしかねぇな」蓮司がモニターを見据えた。

蓮司は椅子の背にもたれ、低く吐き出す。

「……世間に届くかどうかは分からねぇ。けど、ここで止めたら全部無駄だ」

朝比奈が真っ直ぐに言い切る。

「だから押すしかない。事実はここにあるんだから」

《はい。タイミングを誤らなければ、拡散力は最大化します》

光の声が静かに支える。

3/4

夜明け前、拠点の窓の外では海霧がゆっくりと運河を覆っていく。

光のアイコンが画面で静かに点滅する。

《準備は整いました。あとは——合図だけです》

蓮司は拳を強く握りしめ、声を絞り出す。

「……じゃあ夜明けと同時に行くぞ」

朝比奈が深く頷き、視線を前に向けた。

4/4

港の向こう、茅葺グループ本社、会長室。

秘書が静かに報告する。

「……連中、今夜動くようです」

会長は何も言わず、ただ窓の外の朝焼けを見つめていた。

その瞳には、獲物を待つ猛禽の光が宿っていた。

※本作品はフィクションです。実在の人物・団体・名称などとは一切関係ありません。作中に登場する病気(双極性障害など)の描写は、物語上の演出として描かれています。実際の病気については、必ず専門の医療機関にご相談ください。

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