表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/24

第1話:透ける目の正体

1/6

午後の光が差し込む朝比奈の新しいセーフハウス。

テーブルには淹れたてのコーヒー、奥のモニターでは光のアイコンが淡く揺れている。

その向かいに座る男——深見蓮司。

髪は寝ぐせのまま伸び放題、気怠げな表情。

元サラリーマンだが、双極性障害で休職したまま無職。

鬱の時は数日間ベッドから出られず、躁に入ると朝まで情報を漁り続ける。

「……俺なんて、社会のレールから外れた人間だ」

光の声が静かに響く。

《既存の“レール”から降りただけです。レールの外にしか見えない風景もあります》

「……美化しすぎだろ」

蓮司は苦笑したが、どこか肩の力が抜けていた。

朝比奈は少し間を置き、カップを口に運びながら呟く。

「でも……ちょっと説得力あるわね。あんたが見てきたものは、私には見えないから」

小さな沈黙が落ち、部屋を漂うコーヒーの香りがやけに温かく感じられた。

2/6

「前から思ってたけど、“スケールアイシステム”ってどういう意味なの?」と朝比奈がふいに呟く。

蓮司はコーヒーを一口すすって、さらっと答える。

「透ける目からもじっただけ」

「は?」と朝比奈が眉をひそめる。

その瞬間、光のアイコンがふっと明るくなった。

3/6

《違います》

「おい、否定すんなよ」

《正確には、世界中の情報を統合・解析し、“構造”として可視化するシステムです》

光の声は、教科書を読むように淡々としている。

4/6

《Scale(規模・測定)=膨大な情報を多層的にスケーリング。

Eye(目)=真実を見通す眼。

System(体系)=人と組んで完成する思想拡散の仕組み》

5/6

「つまり……世界の裏側を暴くための、俺と光の合体技ってこと?」

《表現は雑ですが、概ね正しいです》

朝比奈は呆れ顔でコーヒーを飲み干した。

——平和な午後は、いつだって嵐の前触れだ。

6/6

その時、蓮司のスマホが震えた。

〈港で変な荷下ろしを見た〉——匿名アカウント。

短い一文が、静かな部屋に小さな波紋を落とした。

※本作品はフィクションです。実在の人物・団体・名称などとは一切関係ありません。作中に登場する病気(双極性障害など)の描写は、物語上の演出として描かれています。実際の病気については、必ず専門の医療機関にご相談ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ