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連関のストラーダ  作者: やせんちゅ
第2章【風の止まった男】
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第7話【スルヴァという男】

【スルヴァ回想】

あの日――ある戦場で

俺は、兵長として部隊の指揮を任されていた。

選ばなければならなかった。

動くか。

止まるか。

留まれば、

仲間たちは包囲され、全滅するかもしれない。

動けば、

突破できるかもしれない――

答えはなかった...

俺は、

動くことを選んだ。

……結果は。

多くの仲間を、

失った。

俺の選択で。

俺の責任で。

それ以来、

俺は恐れるようになった。

動くことが、大切なものを失うかもしれないということを。

ならばー

【 もう動かないほうがいい。】

俺のグレイカームはそんな俺の想いから生まれた。


止まることこそ、最も罪のない選択だと、

自分に言い聞かせた。

そして今、

俺はまた、選択を迫られている。

この町で。

町の奥にあるご神木。

かつて、この町の守り神だった大樹。

それは、

枯れかけていた。

このまま時間が過ぎれば

ご神木は、間違いなく朽ちるだろう。

だから俺は、

選んだ。

止めることを。

俺のソウルドライブ――

**「停止の領域」**を使い、

ご神木の時間を、

止めた。

だが、その影響で町の時間まで止まりつつある。

けれど俺はもう後戻りできない...

動けば、また失う。

止まれば、何かを守れるかもしれない。

それが、

俺に残された、

最後のプライドだった。

スルヴァは、

静かに空を仰いだ。

選択の重みが、

今も、肩にのしかかる。

本当は、

どちらを選んでも、

完全な救いなどないと知っている。

それでも――

誰かを傷つけるよりは、

自分ひとりが止まる方を、

選びたかった。

ただ、それだけだった。

……ほんのわずかに、

冷えた胸の奥で、

あの少女の飛ばした紙飛行機が、

小さく、震えながら漂っていた。

動かないはずの空気を、

かすかに揺らしながら。

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