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第3話【不穏な風】
碧斗と憐花は、導と別れた後
なだらかな坂道を登っていた。
夕暮れに染まる空の下、
道の先には、もうひとつの町が見えている。
碧斗「……じっちゃんが言ってた異変、たぶんあそこだ。」
2人は導から町の様子を見てきてほしいと頼まれていた。
憐花は、うなずきながら足を進めた。
草木は、静かすぎるほど静かだった。
鳥のさえずりも、虫の声も、遠い。
どこか、風景そのものが色褪せているように感じた。
町に着いたふたりは、
その違和感を、すぐに肌で感じた。
建物は無事なのに、
人影がほとんどない。
たまにすれ違う者たちも、
どこかぼんやりと、無表情に歩いている。
碧斗「……空気、重てぇな。」
憐花は、深く呼吸をしてみた。
肺に入るはずの空気さえ、少し冷たく感じる。
ふと、
彼女の頬をかすめる風があった。
それは――
冷たい風だった。
憐花は顔を上げる。
風は、町の奥へ、奥へと向かって流れている。
まるで、
誰かに導かれるように。
憐花「風が...呼んでる?」
碧斗「……行くか。」
憐花「うん。」
ふたりは、風に逆らわず、
その流れに従って歩き始めた。