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復讐は誰のため?

復讐合戦になり、タイトル合わなくなり変えました。 よろしくお願いします。




10/18 慈悲は示したつもりですわ。これでも10年以上訴え続けたつもり

              ↓

慈悲は示したつもりですわ。これでも20年以上訴え続けたつもり

に変更しています。

10年なら、子供の年がだいぶん変わる所でした(^^ゞ



 誤字報告ありがとうございます。

大変助かります(*^^*)

「貴方の役割は終わりました。 この国から直ぐに出ていくことを勧めますわ。 まあ別にどうでも良いですけど、命の保証はしかねますが」


壁全体に掛かる赤いベルベットのドレープカーテンと、同色のカーペットが壇上から長い階段を通り床面へと続く。


高みにある謁見室の王座から、腕組みし発せられた女王の声は、どこまでも低くドスが効いていた。

女王の傍らには、右に長男ステビア左には次男ニコラス、背に三男バルザックが控えていた。

末子の長女オクタビアは、現在潜伏調査の為不在である。


壇上の者は、全員黒と白で統一された葬儀を連想させた衣装を纏ってる。


王配であるグランバックは、顔を青くし項垂れつつもしつこく食い下がった。


「俺は君の夫であり、その子達の父親だろう? いくら家庭を省みなかったからといって、追い出すのはいくらなんでも酷いだろう。 もう一度話し合うべきだ。 子供達の為にも!」


一度も家族に興味を示さず、政務に参加もしない夫が何を言っているのだろう(まあ逆に手を出されても、邪魔でしかないとは思うけど)。


女王・子供達・側近達や使用人達も、心の底から蔑んだ目でグランバックを見遣った。


「慈悲は示したつもりですわ。 これでも20年以上訴え続けたつもりです。 ですから離婚届にサインし、今夜にでも出立された方が良いでしょう。 本当は慰謝料を請求したい所ですが、争うのも馬鹿らしいのでしませんわ。 ()にもこの子達の父ですしね」


グランバックは焦り言い繕う。

「待ってよ。 俺が本当に愛してるのは君だけ『前王妃(母)の殺害犯が捕まりましたのよ。 今詳細を調査中ですが、何人かの名前が既に出ている様です』・・・」


「まあ貴方には関係ないでしょうけれど・・・」


「ふぐっ・・・離婚届をこちらに」

言葉につまり息を飲む程動揺を見せている。


グランバックは説得を諦め、側にいた文官から離婚届を受け取りサインする。


女王はその書類を文官より受け取り、備に見遣りもう一枚の書類を手渡す。


親権放棄書類だ。

「今後連座で子供達にまで咎が及んだり、貴方が落ちぶれて頼られても迷惑なので。 書いていただけますね?」


グランバックは憎々しげに女王を見るが、扇に隠されて表情は見えない。


「それを書いてくだされば、今お持ちの現金と宝石は持てるだけお持ちくださっても結構ですよ。 断るならそのまま放り出すだけ。 愛する(内縁の)妻と愛人と子供達、養うにはお金が必要ですわね。 ふふふっ」


悔しいけれどその通りな為、サインを走らせる。

そして投げつけるように文官へ渡し、女王の承諾を得て踵を返すようにその場を後にした。


「まずは1匹目」

声に出さず唇でなぞる。




 カザリーニ国の女王クレミオンは、王配(グランバック)との間に4人の子を持つ母でもあった。


前国王(父)が病に倒れ、次いで前王妃(母)は馬車の事故で見罷れた。


クレミオン14才の年である。


その年に立太子となり、翌年には弟(当時8才)が成人の15才になるまでの暫定で女王になることに決定した。


年若い女王の後見として、前王弟のダグラスが宰相として就任。


女王の王配として、前王弟の義理の息子となるグランバックが内定した。


聡い女王は気づいていた。


前王(父)、前王妃(母)の死亡は前王弟によるものだと。





当時父である王は、腹違い(王は正妃、王弟は側妃の子)の王弟(ダグラス)のことを信じて可愛がっていた。


しかし王妃(母)は、ダグラスのことを訝しんでいた。


母の友人達が、本人の愚痴とも批判とも取れる発言を、口にしていたのを聞いていたからである。


「兄は愚かではないが、融通がきかぬ。 自分ならばもっと上手く立ち回り、この国や貴族を栄えさせるのに」


そんなことを、貴族御用達の高級クラブで喚いていたそうだ。


その友人は変装していた為、ダグラスには気づかれてはいない。


そもそもは身分証を提示すれば入店可能だが、危険人物はお断りのハイセキュリティの場所である。


怪しい人物は省かれる。


勿論身分証の偽造等すれば、すぐ警備兵が駆けつけて留置場へ直行である。


目立たず気分転換をしたい貴族向けの店なのだ。


経営者は大商人であるが、後援には侯爵家が付いていると噂のクラブ。


黒色の大理石を多分に用いて作られた店内。

内装も黒で統一されており、店員の制服は黒スーツと白シャツ、黒の蝶ネクタイで統一され女性は入店禁止である。

勿論店員も男性だけだ。

滑らかな大理石のテーブル、高級革のソファー、間接照明で顔がはっきり見えない配慮がされ、他では口に出来ない高級酒が揃っている憩いの場がコンセプト。

料金とて破格で、裕福な上級貴族か富豪しか立ち寄れない雰囲気がある。



そんな場所を騒がす愚か者が、その日訪れていた。


それも王弟とも在ろうお方だ。


いつもと雰囲気が違う店内。


隠す素振りがない為、誰もが一目で王弟と解る風貌と発言。


だがその場で発せられた言葉は、既得権益を狙う貴族にとってはこの上ない極上の蜜だ。


王弟に便宜を図って貰うことを条件に、様々な手助けを約束していく。


1人2人と協力者が出てくることで、なし崩しで自分達も加わろうとする欲深な貴族達。


酒の勢いで気も強くなっているのだろう。


覚束ないながら言質を取られていく。


そんな状態を、母の友人サンクタナロ侯爵は伝えてきたのだ。


勿論中立派も多くいるが、その場で飲酒していた貴族達は王弟といがみ合う仲ではなく、友人もしくは知人達である。



頑強だった王(父)が病に倒れたのは、それから少し経った時だった。

表向きは病だが、真実は毒物の摂取によるもの。


幼少から様々な毒に慣らされている王族には、耐性が付いている為ほとんど効果はないが、今回の毒は耐性がないものだった。


各国の王家で慣らす毒はやや異なっているし、それは最上級の秘匿情報だ。

他国に知られてしまえば、毒殺の難易度が格段に下がる。

薬物による暗殺に重点を置く国も出るだろう。


だが、今回は他国ではなく極狭の者しか知らない情報だ。

他国に内紛があると知られる訳にはいかない為、調査も極秘に行われていた。

その最中に前王(父)は力尽きてしまった。


調査は前王妃(母)が引き継ぎ続行したが、謎多い馬車の事故で亡くなってしまう。


誰が敵か味方か判断がつかぬ伏魔殿に、まだ若い王女と王子が残された。


若い王女に残された道は、一時的に王弟の手を取り国の存続を図るしかない。


恐らく王弟(ダグラス)の義理の息子(王弟妃の連れ子)を自分(クレミオン)と婚姻させ王配とすれば、王弟(ダグラス)は影からの実権を握るだろう。


弟の成人のまでに弟を亡き者にすれば、王弟の支配は続くことになる。

当時の国王夫妻を屠る手段を持っているこの男に、弟の殺害など赤子の手を捻るようなものだ。


私は信じられる側近の執事のアークス、乳母ケイト、幼い頃から私付きだった侍女メリーに相談する。


最初に行ったことは、弟の身柄の安全を確保すること。

母方の祖父は、隣国と接する位置にある最強最大の軍備が揃った辺境伯当主。

次期辺境伯も祖父と力を合わせて、国の境界を守る強者で人格者だ。

きっと弟を守ってくれるだろう。


軍の兵士達も昔馴染みが多く、余所者が入り込みづらい職場でもある。

軍の訓練は厳しいが、その分生存率が上がり長く就労している者が多い。

入れ替わりが少ないと、スパイが入りづらい。

逆にスパイが入れば情報が筒抜けになる可能性もあるが、余程の手練れでなければこの軍での諜報活動等不可能である。


そんな訳で秘密裏に手紙をやり取りし、祖父ら自ら弟を迎えに来て辺境へと連れ立った。


勿論、前王弟(ダグラス)らは反対した。

しかし祖父より次期国王を守れる自信があるならここに置くが、もし暗殺や不慮の事故があった場合、前王弟(ダグラス)が守れなかった咎を受けて処刑の覚悟があるならと条件を付ける。


同じように祖父も守れなかった場合責めを負うと付け足して。


前王弟(ダグラス)はここで詰んだ。


弟は邪魔だが、何かあれば責は自分へ帰る。


実の祖父を相手に、その案事態に反対することももはやできない。

身内の女王たる(クレミオン)も賛成しているのだから。


弟と離れるのは、身を切るような寂しさだ。

だが、これ以上家族が死ぬ絶望は回避の一択だった。



いつか迎えに行くと告げ、弟を送り出す。


「お姉ちゃん。 僕待ってるから・・・・・・・死なないで!」

私は頷き強く弟を抱きしめた。

弟も私に強く抱きついた。

でも王族として涙は見せない2人。

これは今生の別れじゃない。


ーーーー生きる為の逃走(さくせん)なのだからーーーー



次の策は、幼馴染みの医師に協力を仰ぐことだ。


近い内に私は婚姻するだろう。


でもその前にすることがある。


幼馴染みスティーブの魔法スキル『サンプル抽出』で、王配(グランバック)の子を孕む前に英雄級の遺伝子(精子)を抽出し、取り込もうと思う。

国の為にはグランバックの子だけは駄目だ。

情を盾に取られて、王弟の言いなりになる未来しかない。

そしてどうせ生むなら強い子をと。



これは、所謂人工受精の魔法版。

生きている英雄から条件を抽出し、魔法で対象者の子宮に固定するものだ。

この魔法は、スティーブと私と祖父、助産婦とサニーしか知らない。

スティーブは産まれた時の検査で、生殖能力なし(精子ができない)と診断されて公爵家の嫡男だったが、孤児院へ捨てられた。

死産として届けられ、戸籍も抹消されたらしい。


何故それを知るかと言えば、スティーブの乳母になる予定だったサニーが、自分の実家の有力者である祖父へ相談したからだ。


出産当時、サニーは風邪気味で休暇を取っていた。

臨月で出産の近い奥さまに移ってはいけないからと。

産まれてからの仕事は沢山あるからと、半ば無理矢理有給休暇を取らされたのだ。

そして死産であった為、そのまま解雇となった。


新しい命が失われたことで悲しい気持ちで過ごしていたサニーは、それでも自分の子への時間が出来たとわりきることにした。


しかし友人の助産婦に懺悔を聞かされ、状況は一変した。

生殖能力がないことで死産扱いされ、孤児院に送られたことを。


一度は乳母としてその子を育てるはずだったサニーは、咄嗟に辺境伯へ秘密裏に連絡した。

これがばれれば助産婦の命が危ないからだ。

それでも助産婦にも了解を取った。

自分もこのままその子が死んだものとされるのは、医療者として容認できないと。

結局秘密裏に辺境伯へと引き取られ、物心つく前には辺境伯の子として育てられた。

身分は孤児としてであったが、安全面に配慮すれば致し方ない。

辺境では国との争いの他にも魔獣被害で親を亡くすこともあり、孤児は珍しい者ではなかったのもある。


そして、幼い頃に定期的に遊びに来ていた(クレミオン)と友人になった。

スティーブは10才の時教会でスキル認定を受け、『サンプル』を習得する。

その際身の安全の為に、出生の秘密も打ち明けられた。

祖父に大事に育てられたスティーブだからか、それほど動揺していないように見えた。


「わかった」と言って部屋を出ただけだ。


でも私は心配で、スティーブの部屋を訪ねた。


ノックでも返答がなくそっと扉を開けると、部屋の隅で踞り声を殺して肩を振るわす彼を見つけた。


私は馬鹿だ。

捨てられたと言われて、ショックを受けない筈ないじゃないか。

まして死んでいると思った親が生きていて、自分が生きていれば殺されるかもしれないなんて。


私は「ごめんね、ごめんね」と言いながら大泣きした。

なんで謝っているのかなんて解らないけど、謝っていた。


スティーブは「何でお前が謝るんだよ」と言って、つられて泣き出した。


解んないけどごめんスティーブと言って、ずっと2人で泣いて泣き疲れて倒れていた。

その頃からの付き合いである友人なのだ。

きっと協力してくれる筈だ。



魔法での成功率(着床率)は低いが、性交前に妊娠すれば良い。

それまでは閨の儀は中断しよう。

政務が多忙で、それ所ではないと言えば通るだろう。

そもそも弟が国王を継ぐのだ。

私の子が早期に出来ては、かえって継承権問題となりかねない。



産婦人科に通うことも、周囲は勘ぐることはないはずだ。

女王として、妊娠が出来るように産婦人科医に相談することは不自然ではないのだから。


矛盾は生じるも、前王弟(ダグラス)に不信感を与えぬように王配(グランバック)を納得させる必要がある。


ご機嫌取りは面倒だが、ここで妾等を作ってくれれば計画を進めやすいが。




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