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【完結】前世は剣聖の俺が、もしお嬢様に転生したのならば。  作者: 自転車和尚
第一章 恐怖の夜(テラーナイト)編

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第二二話 探偵(ディテクティブ)

「灯ちゃんと一緒か……あの銀髪の小僧はいないよな、な?」


「こ、こんにちは……悠人さん……?」

 今私は仕事の話のためにKoRJへと赴いていて……今回のお仕事のパートナーとして悠人さんがきたのだが……なぜか私との挨拶もそこそこに志狼さんを探し始める悠人さん。

 どうしたんだろう? 今までだったら一〇〇パーセントセクハラがスタートしたものだが……様子の違う悠人さんに戸惑っていると、青山さんが私を呼んで……小声で話し始めた。


「先日の博物館の降魔被害(デーモンインシデント)から、ああなんですよ……」

 博物館の降魔被害(デーモンインシデント)……ああ志狼さんにお姫様抱っこされて私が恥ずかしがった時の件か……。

 とは言われてもなあ、私もまだ自分で納得していない部分も強いので、何か言われても困るんだけどなあ。だって私別に恋なんてしてないもん。

 あの時コロッと行きそうになったけど、一日寝たら普通になってたからコロッといってないもん。

「あの、悠人さん? 時間も勿体無いので仕事の話を優先しませんか?」


「だめだ! 俺は……俺は納得していないぞ! あの小僧をボコボコにして灯ちゃんを魔の手から救わなければいけないんだ」

 おいおい……まあ、私も前世で似たよーな感じで狙ってた宿屋の娘をどうにかして彼氏から奪おうと一生懸命になったことがあるが……がっつくと逆効果だぞ? と言いたい。

 前世と違い、女性となった私は男性のそういう部分が少しだけ嫌になってきてはいるのだ。

 悠人さんは興奮した面持ちで吠えていたが、そこへ八王子さんが入ってきた。

「……毎回だが、もういいかね?」

 興奮する悠人さんを放置して、八王子さんの説明がスタートする。その間も悠人さんは興奮した顔でエキサイトしていた。


「……では俺と灯ちゃんでそっち系の組織にカマかけるってことでいいのね」

 ようやく話を聞く気になった悠人さんの返答に八王子さんが頷く。

 話としてはこうだ、最近裏社会においていくつかの噂が流れ始めている……『異世界からの来訪者と手を結ぶことで……永遠の命が手に入る』と。

 永遠の命、確かに魅力的な響きではある。人間である以上いつかは必ず死ぬ……それ故に出来るだけ長く、少しでも長く生きたいと思うのは人の性だ。前世ではその軛を抜け出すために不死者(アンデッド)への道へ堕ちるものも多かった。

 しかし、そうやって手に入れた永遠の命で幸せを享受したという話はなかなか聞かない……。私も前世の最後は悲惨なものだったが、別に永遠に生きたいとは思っていなかったし、結果的にはこうやって新しい生を、この世界の女子高生ライフを楽しんでいるわけで……。

 人生は思い通りにはいかないものなのだなと思うのだけど、それは皆同じなのだろう。


 先日博物館で戦った呪屍人(マミー)吸血鬼(ヴァンパイア)などもそういう人間の欲求から生み出されたものである。世界が変わったとしても、人が求めるものは対して変わりがないのだと改めて認識する。

 悠人さんが説明を聞いて頷くと、凄まじく気合の入った顔で叫ぶのを見て私は本当に頭が痛くなった。

「では灯ちゃんは俺の助手兼愛人という設定でお願いしたいッ! ミニスカでちょっと体のラインが出る感じで、胸元が少し開いた感じの……ちょいエロ秘書風のスーツを灯ちゃんに支給して着せてくださいッ!! そしてええええ! 灯ちゃんは俺のいうことに絶対に服従するということでいいですねっ!!」


「あ、じゃあ今回お断りします、試験勉強もあるので帰っていいですか?」

 私は何事もなかったかのように八王子さんに微笑みを浮かべて全力で拒絶する。 

 今回は戦闘任務がメインではないので設定上秘書になるのはまあわかるけどさ……なぜ悠人さんの愛人設定が必要なのか、絶対その設定を名目にセクハラする気だろお前。

 そう言う設定があったところでどうこうなる私ではないが、どうせそう言う服を着た私を見て『いやあ、眼福♪眼福♪』とかやりたいんだろ? お前は。

 完全にフリーズする悠人さんを見て、八王子さんが『こいつ懲りねえな……』という顔をしつつ私を見つめ、再び話を再開する。


「まあ、灯くん。今回は戦闘が起きるとは限らん。武器も持って行動できない以上……秘書という設定で同行するのは仕方のないことではないか?」

 その言葉に悠人さんが首が千切れんばかりの勢いで頷いている。どうしてこの人は……。

「秘書はわかりました、でもミニスカとか胸元がとか、そういう悠人さんが喜びそうな格好は遠慮致しますので……それでいいですか?」


 悠人さんはそれでも嬉しそうに締まりのない笑顔で頷く……好意はわかるんだけどさ……セクハラに全て直結するのが良くないんだぞ……と思いつつ子供みたいに喜ぶ悠人さんを見て、私は内心ため息をつく。

 私は恨みがましい目で八王子さんを見るが、その顔を見て八王子さんは満面の笑顔のままそっと目を逸らす。部長さん? あなたの部下が大変な意味でコンプライアンスの敵と化してますけど、何も言わないんですかね?

「八王子さん……今度コッシー・カブラヅカのケーキ奢ってくださいよ……?」




 悠人さんと私はとある小さな雑居ビルの前に立っている。

 彼の話によるとここの一角にはあまり知られていないが、元指定暴力団の事務所が入っているらしく、私たちは探偵とその助手という設定で出向いてきたのだ。

 そして私は現在非常に困ったことになっていて何度も服装の乱れがないか、確認しながらモジモジしている。


「んー、灯ちゃんいいねえ、それ。ふくよかなお尻のラインがもうね、たまらないわ」

 悠人さんがめちゃくちゃ嬉しそうな顔で、ひょいと私の服装を……特に後ろからの眺めを見ている。

 私はお尻周りを隠すように手に持った鞄をお尻へと移動させて……必死にエロい視線を防御している。なぜこんなことになったのか……周りに人が多くないのがまだ幸いしているけど、この突き刺すような悠人さんの視線には耐え難いものがある。

「ちょ、ちょっと! そんなまじまじとこっちを見ないでくださいよ……困りますっ!」


 私は今回の仕事に関して、悠人さんの希望だったミニスカートを拒否していて……あまりそういう印象にならないだろうと言われたパンツスーツを支給されてそれを着ているのだが……思っていたよりも体のラインが出てしまうスリムタイプなので、特にお尻周りのラインがきっちり出てしまっているため、今更ながらに黙って着てしまった自分に激しく後悔している……。

 スリムなパンツスーツを支給すると開発部の人が話していた時、悠人さんがやたら締まりのない顔をしていたのだが、これを想像していたからなのか……やられた。

 しかしなんでKoRJの支給部隊はこういうものばかり支給してくるんだ……これならまだ戦闘服を着てくる方がマシじゃないか……とはいえ、支給部隊が渡してきたスーツなので、伸縮自在な上に強化繊維でできているらしい。

 見た目以上に防御能力も高く戦闘すらこなせるスーツということで、こういう任務にはうってつけなんだとか……でも私の体型には明らかにあってないぞ! これは!


「さて、仕事は仕事だからな。口裏を合わせよう。灯ちゃんはうちのバイトという扱いなんで基本的に何も喋らなくていいからな」

 悠人さんが珍しく仕事モードの顔で、私に指示を出し……笑いながらスーツの胸元に入れている名刺を軽く見せる。

「俺は、もともと探偵業もやっていてな……これから回る事務所は基本的には顔見知りだ。とはいえ、何があるかわからないからな……いざというときは脱出を優先した方がいいだろう」


 名刺には『御蔵島探偵事務所 主任 墨田 悠人』と書かれている、本当に探偵の資格持っているのか……私は意外な経歴に少し驚いて名刺を見つめる。

「まだこの事務所は営業しててね、所長には許可をもらってある」


「探偵の仕事って何が多いか、わかるかい?」

 名刺をしまうと、私の顔を見ながらタバコを口に咥えて笑う悠人さん。

 探偵の仕事……? 漫画とかで出てくる探偵……くらいしか私には知識がないのだけど、本当の仕事はかなり地味な仕事が多いと聞いたことがある。それこそ失踪した人を探すとか、犯人を探すというのはあまり無いのだとか。


「俺が一番受けたのはね、不倫調査だったんだ。まあそれに嫌気がさしてたんで、KoRJの誘いに乗ったんだけどな」

 悠人さんは笑いながら指に灯した火を使ってタバコに着火すると、軽くひと蒸しして私に顔を近づけてそっと囁く。

「不倫調査って、ホテルとか入るんだよね……どう? 調査で入ってみる?」


「へ? え?」

 ……? ん? 一瞬反応できなかったが……これセクハラじゃねーか! 少し顔が赤くなった私はすぐに悠人さんから距離をとって、断固拒否する。

「い、いえお断りします……って、なんでまたセクハラするんですか!」


「なーんだ、灯ちゃんなら内部の調査ですよねって言いそうだったのになあ、惜しい惜しい」

 悠人さんはカラカラ笑いながら私の反応を楽しんでいる。この人は本当にブレないな……。タバコを路面に擦って消すと、携帯灰皿へと吸い殻を入れ、私に向き直ると悠人さんはビルの入り口へと歩き始める。私は慌てて彼の後へとついてビルへと入っていく……。


 小さな雑居ビルだが、受付には警備員の老人が座っているが、彼は不思議な二人組の私たちに目を向けると……興味がなさそうに手元に目を落とす。

 通路の奥にあるエレベーターに入り、悠人さんが目的の階数のボタンを押すと口を開いた。


「こういうビルの警備員はな、揉め事に巻き込まれないようにそれっぽい客には何も言わないように教えられているんだ。ただ、俺がここにきたことはすでに報告されているだろうな」

 そういうものなのか……私は今まで経験したことのない状況に頷くしかない状態だ。


「まあ、数年前と状況が変わっていないといいんだが……」

_(:3 」∠)_  意外な経歴のセクハラお兄さん


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