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【完結】前世は剣聖の俺が、もしお嬢様に転生したのならば。  作者: 自転車和尚
堕ちた勇者(フォールンヒーロー)編

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第二一五話 黎明(デイブレイク)

「ムカついちゃったな〜、絶対倒すわ。ちゃんと力を貸しなさいよ全て壊すもの(グランブレイカー)


『……いつも貸してるじゃないか……それはカウントしないのか?』

「あ? なんか言ったか? いつでも海底に叩き込んでやってもいいのよ?」

『……なんでもないです……お好きにどうぞ……』

 ブチ切れモードの私の思考は恐ろしくシンプルに、まるで自らが一本の剣になったかのようなそんな感覚に包まれている……私はノーモーションからいきなり虹色大蛇(レインボウサーペント)の背後へと現れる。

 振り向く間も無く、私の斬撃が虹色の鱗を切り裂く……だが少し浅い、怪物は体をくねらせながら距離を取ると、魔法を発動していく。

「「水よ凍れ、そして貫け!」」


 虹色大蛇(レインボウサーペント)の眼前に氷の槍(アイスジャベリン)が数発生み出される……こいつは氷系統の魔法の中でも攻撃力の高い魔法だったな。だいたい一メートルくらいの長さの氷でできた塊を飛ばすが、その速度は矢よりも早く、硬度も高いため人間の体は簡単に貫くことができるし、頭にでも当たったら致命傷だ。

 大気中の水分を凍結させることもできるけどちょっと手間で、手持ちの水などを触媒に使って発動させた方が効率がいい……それ故に海とか湖とか、水のある場所だと構築に魔素をそれほど消費しないから連射ができる。


「ミカガミ流……螺旋(ラセン)

 氷の槍(アイスジャベリン)が私に向かって飛んでくるが、私はその飛来してくる魔法に向かって軽く刀を振るう……防御に特化した技である螺旋(ラセン)だ。

 この技で敵の咆哮(ハウリング)を防御できるのは既に実証済み……特にこの氷の槍(アイスジャベリン)は氷で出来ているんだから、斬れるに決まってる。

 甲高い音を立てて弾かれた後、勢いを失って私の周囲へと叩き落とされる氷の槍(アイスジャベリン)を見て、虹色大蛇(レインボウサーペント)が驚きの表情を見せる。

「「……! 魔法が!」」


「当たり前でしょ、これ、魔法って言ったって物理攻撃に近いんだから防げるわよ、当たり前じゃない」

 彼の疑問に答えた後、ゆらりと体を揺らした私は一気に突進する……あの精神攻撃(マインドアタック)を何度も叩きつけられてたまるか。

 これだけでは効果がないと慌てた虹色大蛇(レインボウサーペント)は複数の氷の槍(アイスジャベリン)を作って、速射してくるがそんなもん当たるか! 少しだけ足に力をこめて姿勢を下げたのち、私は一気に技を放つ……。

「ミカガミ流……朧月(オボロヅキ)


「「うぎゃあああっ!」」

 私の姿が一瞬で消えたことで見失った怪物は左右を見る……だがそこには私はいない、私は死角から斜めに怪物を袈裟懸けにする。

 一瞬遅れて、切り裂かれた傷口から血が噴き出す……私は滑るように別の場所へと着地すると刀を構え直し、虹色大蛇(レインボウサーペント)の出方を伺う。

 怪物の体が震え、怒りの表情を浮かべたWor(ワー)様の顔が私を見ている……だが、違和感がすごい、やっぱり彼は小顔じゃないとなー……。

「ちょっと聞きたいんだけど……Wor(ワー)様は元に戻せるの?」


「「……なんだ、お前僕を元に戻すって、何を言っているんだ……この人間は自分から依代になったんだぞ、繋がりを斬るまで離れるものか」」

 虹色大蛇(レインボウサーペント)の素の声だなこれは、ならそのつながりってやつを断ち切れば、元に戻って明日はライブで歌を聴ける、とそういうことでいいよな?

 ならちょっと今まで使い所がなくて使ってなかった技を使わせてもらうとするか……ミカガミ流の剣術は刀による物理攻撃がメインなのだけど、受け継がれてきた歴史を紐解いていくとやはり儀礼などで使う技も多数残っている。私は一度刀を鞘へと入れ直すとふわりと優しく、まるで凪いだ風のように抜刀し刀を振るう。

「ミカガミ流……絶技、黎明(レイメイ)


「「……? な、なんだ? 何も斬れていない……不発か?」」

 斬られたはずの虹色大蛇(レインボウサーペント)が自らの体を確認するが、どこも斬れていない……そりゃそうだ、この技は肉体なんか斬らないんだから。

 この技が斬るのは繋がり……儀式などで刀を振るい対象に降りかかる悪意とか、憑き物、そして呪いなどを断ち切るために開発されたからだ。

 ノエルから数えて十数代前の剣聖(ソードマスター)は、国家に使える神官としての役割も担っていた、その人は戦に赴く戦士たちの身の安全を守るためにこの優しさすら感じる黎明(レイメイ)を編み出した。

「いいえ、斬れてますよ、あなたとWor(ワー)様の繋がりがね」


 その剣聖(ソードマスター)の加護は絶対的で、戦にでた戦士がふとした幸運で命を拾ったり、呪われた対象を救ったこともあったらしい……だが、この優しい技はその後あまり使用されることはなくなった。

 やはり力こそ正義というか、代を跨ぐごとにミカガミ流でも物理的な強さを求める風潮が強く結果的に絶技であるにもかかわらず、この技は日の目を見ることがなくなっていった。

 ノエルは何度か使ってたらしいけど、全て壊すもの(グランブレイカー)で殲滅する方が性格的にあってたんだろう……それと、仲間にアナという希代の聖女がいたことで、彼女の領分に踏み入るのも気が引けたのかあまり振るうことはなかったようだ。

「「……な、なに……体が……」」


「この技は対象の繋がりを断ち切る……どういうやり方か知らないけど、依代にしてるってんだからなんらかの繋がりを持ったんでしょ?」

 虹色大蛇(レインボウサーペント)の腹部に大きな裂傷が走る……だがその場所からは血は噴き出さない、まるでその部分だけが別の空間に接続しているかのように眩い光を放ち、そこから人の頭がぬるりと現れる。

 Wor(ワー)様だ……彼がステージ衣装のまま、その傷口からずるずると吐き出されていく……それと同時に怪物の頭部が変形していく、それまでの顔ではなく大蛇の顔へと……鋭い牙と、黄金の瞳を持つ神の使い(セイクリッド)そのものへと変化していくのだ。

「「……維持できない……! そんな馬鹿な! このままでは……」」


『依代がなくなった神の使い(セイクリッド)はそのまま世界に残ることはできない、持って数分だ』


「……待ってりゃ消滅するんでしょうけど……あんたムカつくわ」

「「……何を……ぐぎゃあっ!」」

 私はそのまま虹色大蛇(レインボウサーペント)の胴体へと斬撃を叩き込む……鱗を断ち切る感覚と、血が舞う……痛みで悲鳴をあげる怪物にさらに私は斬撃を叩き込んでいく。


「私の頭にポンポンポンポン攻撃してくれちゃってさ、あんた一体何様よ」

「「……ぎゃあっ! や、やめ……」」

「うるせえな! 乙女の怒りを思いしれ! このクソ蛇が!」

「「や、やめ……やめろぉ……や、やめて……くださいぃ……!」」


 逆手に持った刀で何度も何度も虹色大蛇(レインボウサーペント)の体を差し貫く……その度に化け物の悲鳴が上がる……だが私はブチ切れたままクソ蛇の頭を殴りつけ、刀を突き刺し、そして胴体を膾切りにしていく。

 だがさすがは神の使い(セイクリッド)……既に頭以外は切り裂かれて、血まみれになっているがまだ生きている……これで当分こっちの世界に悪さなんかできないだろ。

 痙攣しつつ、地面へと横たわっている虹色大蛇(レインボウサーペント)の体がほのかに光出す……そろそろ時間切れか。

「「……お、お前の顔は覚えたからな……次、次あったら絶対に殺してやるぅ……」」


「捨て台詞言ってないでさっさと死ね! 二度とここにくるな! クソ蛇!」

 頭を思い切り蹴り飛ばした瞬間、虹色大蛇(レインボウサーペント)が消滅する……いや正確に言うと依代を失って別の世界へと送還されたと言うことだ。

 ったく……私は刀をくるりと回して鞘へと放り込むと、あたりで倒れている人たちの様子を見る……数人は既に息がない、おそらく最初に犠牲になったのだろう。

 Word of the Underworldのメンバーはちゃんと息があるが、意識がない……床に倒れているWor(ワー)様は粘液っぽいものに塗れているが、軽く唇に手をかざすと、息がある……よかった。

 次第にあたりの空間から嫌な感じが抜けていく……通常のライブハウスへと戻り始めているのだろう。

「……め……聞こえるか? 戦乙女(ワルキューレ)、応答しろ」


「聞こえます、通信途絶してましたか? もう原因は解消しました警察官に入ってきてもらっていいと思います。それと数人犠牲者が出ています」

 リヒターの冷静そうな声がインカムに聞こえる……私はWor(ワー)様の隣に膝をついて座りながらインカムに答える。そういやインカムでの連絡全然きてなかったな。

 呻き声が辺りからも聞こえてくる……さっさと退散しないと私顔見られちゃうかもな、そう思って立ちあがろうとした私の手を誰かがしっかりと掴む。

「……え?」


「……君は……女神……それとも幻?」

 声の方向を見ると私の手を握っているのは、Wor(ワー)様だった……かなり辛そうで意識も少し朦朧としているのかもしれない。

 再び私は彼のそばへと座るとそっと微笑んで、彼の額に手を載せて軽く撫でる……うわっ、すっごい肌が綺麗……とても男性とは思えないくらい手入れしてるなあ。

「大丈夫です、もう助けがきます……それまで休んでいてください」


「……名前……教えて……お礼を言いたい……うっ……」

 少し辛そうな表情でWor(ワー)様が私に問いかける……名前教えて、って言っても私の名前言うわけにいかないしなあ……でも今彼は朦朧とした意識で話しているから、今名前言っても覚えていない可能性もあるしな。

 うーん……私は少し悩むが、彼が安心するならと私は彼の手をもう一度そっと握ると彼に答える。

「……灯です、今は休んでください、Wor(ワー)様……」


「ありが……と、灯……ちゃ」

 そのまま彼は意識を失う……うう、Wor(ワー)様に私の名前読んでもらっちゃったー! なんだか嬉しくなって私は彼の手をそっと離してから思わず恥ずかしくなってしまい、中途半端なスキップを刻んで歩き始める。

 なんかミカちゃんにも自慢できない思い出ができた感じで、少しだけウキウキした気分になっちゃうな……目が覚めたら全部夢だった、と思うだろ現実味がないし。

 扉を開けて外へ出ていくと私と入れ替えで警察官たちが中へと入っていく……さ、これで今日の仕事は終わりだな……私は歩きながらインカムに話かける。


「任務完了、帰ってお風呂入りたいです……送迎お願いできますかね?」

_(:3 」∠)_ お怒りだと男性言葉になる、って設定をすっかり忘れていまさら頑張る


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