表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】前世は剣聖の俺が、もしお嬢様に転生したのならば。  作者: 自転車和尚
堕ちた勇者(フォールンヒーロー)編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

207/247

第二〇七話 復活(アナスタシス)

「……もう動けるかな? 君を治すのに結構労力を払ったんだその分は働いてもらわないとねえ」


「……質問です、なんで私生きているんですか……? 私死んだはずなのに……」

 エツィオ・ビアンキ……前世の名前はエリーゼ・ストローヴという美しい少女だった彼は、その持ち前の美貌を最大限に活かした笑みを浮かべて目の前で信じられないという顔をしている黒髪の少女を見ている。

 黒髪の少女の名前は立川 藤乃……混沌の森(ケイオスフォレスト)での新居 灯との戦闘において敗北し、とどめを刺されたはずの彼女はとあるホテルの一室で目の前でニコニコと笑うエツィオを見て呆然としている。

「そりゃあ一度死んだ君を蘇生させたんだよ、ちなみに結構時間かかってるんだよ? これでも」


「……蘇生? えっ……!? そんな!」

 立川は慌ててゆったりとした手術衣の前を自らはだけると、自分の体を確認する……細身の体と形の良い乳房が露出したため、エツィオは気を利かせて別の方向へと視線を動かした。

 だが、立川はそれどころではなく……自らの体を念入りに確認している。そこにあるのは確かにあの時新居 灯の攻撃でつけられた腹部の傷を縫った後が未だ痛々しく残っている。

 花霞(ハナガスミ)とか言ったっけ、あの技は超高速で二連撃を放つ技のようだが、ほぼ同時着弾するとは思っていなかった、そこに油断や隙があったとしか思えないのだ。

 そっと手でその傷跡を撫でると、激しい痛みを感じて軽く悲鳴をあげてしまうが、その痛みのおかげで立川はほっと息を吐いて生きているという安心感を感じている。

 生きている……あの時死んだはずの私が生きていたのだと実感すると、堪えきれずに涙がこぼれていく。

「い、生きてた……私……死んでいなかったのね……」


「いや、死んでいたよ。そりゃあもう内臓ははみ出てるし、刀で胸を一突き……心臓も動いていなかったねえ」

 無神経なエツィオの一言に涙を流しながらも、彼を睨みつける立川……しかし彼がそういうのであればなぜ私は今ここにいるのだろうか?

 疑問を感じた立川を見て、そっと彼女のはだけた手術衣を優しく丁寧に直すとエツィオは彼女の元を一回離れ、別のテーブルに置いていた紅茶の入ったカップ手にとると、再び彼女の元へと戻ると、立川へカップを差し出してからベッド脇の小さな椅子へと座り、笑顔のまま話し始める。

「まあ君は一回死んだ……でも君は仲間に愛されていたね」


 そう話すと、エツィオは自らの胸を手のひらで軽く叩いて、立川に自分の胸を触れと促す。

 なぜそんなことを……と理解ができない立川だったが、促されるまま自らの胸へと手のひらを当てる……そこで違和感を感じて何度か手を当て直す。

 思っているよりもはるかに大きな鼓動……まるで人間ではない何かのような力強い鼓動を感じて驚いたままエツィオの顔を見つめる。

「鬼貞……あの鬼が君に黙って魔王様にお願いをしていたようだね。自分の魂の一部を事前に切り分けていたらしい……君に何かがあった時に使ってくれと頼んでいたんだろう、だから今の君は半分鬼みたいなもんだよ」


 エツィオの言葉に優しかった鬼の困ったような顔が脳裏に浮かぶ……ああ、貞ちゃん……私……貞ちゃんに守られているんだ……優しかった貞ちゃんが一緒に。

 ボロボロと涙を流しながら嗚咽を漏らして泣き始める立川……ごめん、ごめん……私が不甲斐ないばかりに……そのまま彼女は声を殺して泣き続ける。

 エツィオは泣き続ける彼女にかける言葉などない、と言わんばかりに黙って自らのカップから紅茶を啜る。彼女がたてる鳴き声を聞きながら、窓の外の夜景を見つめる。

 何分が経過しただろうか? 気がつけば彼女は泣くことをやめ、軽く目元を拭うとエツィオへと問いかける。

「……私はなんのために生き返ることになったの?」


「もう戦いたくない、というのかと思ってたよ……安心した」

 黙ってベッドの上で座り込む立川を見たエツィオは、その雰囲気と目の光を見て薄く笑う。立川の目は強く光を放っている……その光は新居 灯のように戦士としての強さを感じさせる何かを湛えており、その目を見るだけで彼女がまだ戦えることを理解したからだ。

 エツィオは椅子から立ち上がるとそっと彼女の側へと座り、軽く肩を抱いてから笑顔で話し始める。

「僕の望みはただ一つ……新居 灯を手に入れることだ。そのために僕はこの世界を裏切る」


「それで魔王様に鞍替えしたと……剣聖(ソードマスター)に負けた私を蘇らせたのもそのためですか?」

 立川の言葉にクスッと笑みをこぼすと、エツィオはベッドサイドから立ち上がり、テーブルに置かれていた少し蛍光色の液体が入った小瓶を手に取り、立川へと手渡す。

 その液体は立川が見たこともないような色で光り輝き、蓋を開けると恐ろしく強いハーブのような匂いが辺りに漂う……思わず鼻を押さえてしまうがそれを見たエツィオが笑顔のまま彼女へと声をかける。

「それは霊薬(エリクサー)だよ、あちらの世界では流通量は少ないらしいけど現存してるらしい。ちなみに不老不死になるというのはでまかせで、病気や怪我を劇的に治療する薬品でしかないそうだけどね」


「……そうですか……私の記憶にもそういうのはありました。確かにそれと同じもののようです」

 立川は黙って小瓶から液体を飲み干す……刀傷がほんのりと暖かく感じられ、ジクジクとした鈍い痛みが引いていくような気がする。

 軽くエツィオに見られないように手術衣の隙間からお腹などについた傷を見ると、みるみる内に赤黒く変色していた傷が元の肌色に戻っていくのが見える。

 霊薬(エリクサー)というのも眉唾ではないな……軽く手を何度か握り直すと、嘘のように軽く力がみなぎっている気がする。

「……お礼はどうすればいいですか? あなたにすれば良いのですか?」


「魔王様にいうのだね……君の傷が完全に癒えたら彼の元へと連れていくよ。それとこの刀も渡しておく」

 エツィオはベッド脇に立てかけられていた騎兵刀(サーベル)を彼女へと手渡す……それはきちんと手入れをし直されていた聖剣琶蘭(ベラン)そのものである。

 立川の復活を喜ぶかのように、琶蘭(ベラン)が細かく振動しているようにも見える……大事なものをそっと抱え込むように騎兵刀(サーベル)を抱く彼女の姿が、エツィオにはふと懐かしいような印象を覚えた。

 ああ、そうか……エリーゼが見ていたノエル……剣聖(ソードマスター)を見る光景はこれに似ていたのかもしれないな。一人納得すると、立川には何も告げずにエツィオはその部屋から出ていく。

「じゃ、ゆっくり休むといいよ……あれから結構時間が経っている、情報をアップデートするといいよ」




「心葉ちゃん結構出るとこ出てるよねえ……」


「なんなんですか、なんで私の方見てるんですか、ぶん殴りますよ灯さん」

 温泉に浸かりながら隣にいる心葉ちゃんをまじまじと見ていると、彼女は不満そうな顔で私を睨みつける……おっと前世の目つきになっていたのか、いかんいかん今の私はちゃんと女性なのだから、女性として見なければな。

 しかし……細身で均衡の取れた肉体だよなあ、無駄な肉がほとんどついていないのにそれでも女性としては羨むほどのスタイル……改造人間(エンハンスド)って言ってもちゃんと女性だもんなあ。


「見ないでください」

 軽く手を握ると水鉄砲の要領で私の顔にお湯をかける心葉ちゃん……わぷ。今私たちは先日の戦闘で結構なダメージを受けている、と判断されて週末の時間を生かしてKoRJが関東近郊に有している温泉にきている。

 ここは普通の温泉旅館ではなく完全にKoRJの福利厚生用の施設なので、警備もバッチリだし伸び伸びと休養ができるようになってて、時折使用しているんだよね。

 家には数日KoRJの温泉施設で遊んでくると伝えており、帰ったら家事が大変そーだなとは思ってるものの今日だけはのんびりしておきたいと思っている。

 この温泉本当に食事も美味しいし、お湯は肌にいいし周りは関東とは思えないくらい静かなんだよねえ。


「……何食べたらそんな体になるんですか?」

 少し私をじっと見つめていた心葉ちゃんが私に話しかける……うん、まあ普通に食べてたらこうなったんですけどね、特別に何かしたわけじゃないんだけど。

 私が答えに困って考えていると突然彼女が私の胸を軽く触り始めた……ちょ、ちょっと! その触り方はちょっと……ふにふにと私の胸を軽く揉むように触ってから、彼女は自分の胸を軽く触り……再び私の胸へ手を当てながら不満そうな顔を浮かべ、軽く揉みしだく。

「……ずるい」


「ずるいって言っても……食べて運動してこうなっただけなんだよね……あ、あんまり触られると……ちょっと……んっ……」

 ちょっとあんまり触らないでほしいな……昔自分でもこの体スッゲーな! って体を触ってて敏感な部分が多いことに気がついてしまい、ちょっとだけびっくりした記憶があるのだから。男性と違って女性の体は繊細なんだな……と前世との差異に驚いたが、それ以上はなんとなく戻って来れそうになかったのでやめている……。

 私が嫌がっていると認識したのか心葉ちゃんはそれ以上は私の身体を弄ることは止め、黙って元の場所へと戻っていく……密着した時に恐ろしく健康的なスベスベした肌だったな……と女心に少しだけドキドキしてしまった自分が憎い。

「この後夕食でしたっけ?」


「そうそう、ここの夕食は美味しいんだよねえ……大阪ではそういうのなかったの?」

 彼女が軽く顔を手で拭うと、ちゃぽん、と水滴が落ちる音が辺りに響く……少し考えてから心葉ちゃんは軽く首を振る。そういや大阪では男性陣に混じってたわけだしな。

 もしかしたらこうやってお風呂を一緒に楽しむ友達もいなかったんだろうなあ……そうだ思いついた。

「心葉ちゃん、今度ミカちゃんも誘って温泉行こうよ、ミカちゃんお風呂入ると面白いんだよ」


 その言葉に少しだけお湯に当てられたのかそれとも照れているのかわからないが、心葉ちゃんの桜色に染まった頬がほんのり朱色を増した気がする。

 彼女はいつか大阪に戻ってしまう……だから今のうちに沢山彼女との思い出を作っておきたい、友達として一緒に笑い合えるようなそんな存在にお互いなりたいと素直に思った。彼女は軽く頷くと、再び私をどきりとさせるような微笑を浮かべて笑う。


「……いきます、私も灯さんとミカさんとも一緒に……ずっとお友達でいたいです」

_(:3 」∠)_ ということでエツィオさんの隠し球と肌色回


「面白かった」

「続きが気になる」

「今後どうなるの?」

と思っていただけたなら

下にある☆☆☆☆☆から作品へのご評価をお願いいたします。

面白かったら星五つ、つまらなかったら星一つで、正直な感想で大丈夫です。

ブックマークもいただけると本当に嬉しいです。

何卒応援の程よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ