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【完結】前世は剣聖の俺が、もしお嬢様に転生したのならば。  作者: 自転車和尚
第三章 混沌の森(ケイオスフォレスト)編

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第一六〇話 追撃(パシュート)

「X》※【……→○〒」


 大百足はゆるりと小さな山をその巨大な体で取り囲むと、顎肢を慣らして月へと目を凝らす。この高さからだと山間にある集落や、遠くの街が見えている。

 明るい世界だ……どこかしこにも明かりがついており、夜空の星が見えにくくなっている。自分が生きていた時代はもっと空は綺麗だったか。

 祀られていた時もこんなに空気は汚染されていなかったな……残念だ。


 少し空気も澱んでいる気がする……人間とはなんと愚かしいことをするのか、自然を敬い共に生きようとしたものはいなくなってしまったのかもしれない。

 特に整備された道は、大百足の感覚からするとどうしてこんな匂いを放つ鉄の塊が走り回っているのか全く理解できない。煙を吐きながら進む乗り物……人間が乗って移動するためのものらしいが、食べるものではなさそうだ。


「=%?/……!#*+」

 不思議な言語でひとしきり人間への恨み言を呟くが、この不可思議な言葉を聞くものは近隣には存在していない、あの緑の男は理解できていたし、意思疎通は楽だったが人間には聞き取れないのだろう。

 だが今自分の姿は可視化されており、遠くに赤い光が瞬くのが見える……様子を伺っているときに理解したが、治安を維持するための組織があるらしい。


「??+*`==><」

 そんな中、大百足の感覚にこちらへと高速で近づいてくる何かが捉えられる……匂いは男ではないな。どちらかというと不快な匂いではない、放っておいても問題ないだろう。

 緑の男と、金の男その二人と契約をして現世へと復活したものの、その巨大な体を支えるために今までは活動を大っぴらに行っておらず、依代となっていた小さな百足の姿で山間に隠れていた。


 ようやく全盛期の半分といったところか……それでも十分自分の庇護を忘れたこの国の人間たちを滅ぼすには十分だろう。

 空を切る音が響くと、突然大百足の胴体に鈍い衝撃が伝わる……なんだ? 飛んできたであろう方向を見ると二人の女人が何かにまたがってお互い言い争っている。

「ちょっと四條さん! 大して効いてないじゃない!」


「……通常弾ではダメですかね、最初から徹甲弾とかがよかったかもしれません」

 感覚を研ぎ澄ませてその二人の声を聞くが……日ノ本の言葉だ、つまりこの国の人間。

 一人は馬のような物体に跨っており、紺色の服に身を纏った黒髪の女人……もう一人は大きな煙を吐いている筒のようなものを持った少し意匠の違う服装の女人が物体の後ろに座ってこちらへと筒を向けている。

 筒から轟音が巻き起こると大百足の体に衝撃が何度も走る……傷は小さく、それほど破壊力の強いものではないが、非常に不愉快極まりない攻撃だ。ざわざわと怒りが込み上げてくる……なんだあの二人は、自分を誘っているのか?

「……なんかお怒りじゃないかしら……」


「……まあ、あれだけバカスカ叩き込めば仕方ないかもしれません」

 女人が自分の視線に気がついた……では自分がやるべきはこの不遜な二人を怯えるまで追い回し、手足をもぎ取った後に涙ながらに赦しを乞う悲鳴を聴きながら食い殺すことだ。

 女人は柔らかいからな……筋張った男は美味しくない、見ると一人は肉付きも良さそうだし、もう一人は細身だが二人はまだ若いのだろう、年齢によっては人間が美味しくないが、おそらく。

 ダラダラと顎肢の間から涎を垂らす大百足……最近食べていない人の味を楽しむのも一興か。ずるりと脚を蠢かせながら、大百足はゆっくりと二人へと向かっていく。




「うわあああああ……カサカサする音が気持ち悪いっ!」

 私は慌てて二人で乗っているKoRJが改造したV型八気筒エンジンを搭載した大型バイクのアクセルを開けて加速していく……総排気量六〇〇〇CCを超える化け物マシンは路面にタイヤのブラックマークを刻みつける。

 そうそう……以前台東さんと話した際にエフエフに登場するバイクに乗った主人公、ロナウド様みたいなことがしたい! と話していたのだけど、今回の任務前に『新居殿はこういうものも好きだし、操れますよね、グボォ』とかいって渡してくれたのがこれだ。

 凄まじいまでの暴力的な加速……本気で走れば一〇〇キロまで約一秒だっけ、これ。夜の高速道路上でリズミカルで獰猛なエキゾーストノートを響かせながら、私と四條さんは大百足に射撃を加えながら逃げていく。

「……新居さん、もう少し丁寧に運転してください」


「そうは言われ……てもッ!」

 高速道路上は一応完全な直線ではなく、緩いカーブなども存在している……そしてこの化け物バイクは思ってたよりも私のコントロール下に置きにくい……重さもそうだけど全身を震わせるような振動も凄まじい。

 少しでもラフにアクセルを開けようものなら、タイヤの限界を迎えてすぐにぐずり始める……前世の記憶にあるが、暴れ馬……という言葉がふさわしいな。

 そういえば、前世の記憶でノエルが最も愛した馬は、超筋肉質の軍馬でそれほど凄まじい速度は出ないのだけど、どんな悪路も問題なく進める世紀末の王様が乗っているような巨馬だったな。


 大百足は四條さんの射撃を受けて完全に私たちをターゲットにしたらしく、高速道路の上を凄まじい勢いで走ってきている。高速道路のアスファルトを砕きながら大百足が迫る……その前を結構な速度で駆け抜けていく私たち。高周波というか独特の甲高い叫び声を上げながら、大百足は私たちへと向かっている。

 四條さんが相変わらず無表情のまま、弾倉を引き抜いて高速道路上へと投げ捨て、背中から別の弾倉を取り出して装填する。

「通常弾では効果が薄すぎますね……では」


 四條さんが装填し直した対物(アンチマテリアル)狙撃銃(ライフル)を構えると、既に攻撃手段として認識されているのか大百足は口から紫色の液体を弾丸のように発射して、妨害を試みる。

 確認しながら、私はバイクを左右に振って回避をしていくがこの動きだと四條さんは対物(アンチマテリアル)狙撃銃(ライフル)を射撃することが難しいらしく、攻撃は行えない。

「新居さん、運転が……」


「わかってるわよ! 少し黙ってて!」

 おそらくだけどあの紫色の液体は相当やばい代物だ。毒というよりは強酸性の何かだと思うので、当たれば即アウト……な液体だと思う。

 現に液体が着弾したアスファルトは真っ白な煙を上げて大穴を穿っていっているし、街灯も一瞬で溶けて消えていっている。

 そんなものに当たるわけにはいかないので、私は必死に大百足の放つ液体を回避して回る。かなり無理やりな軌道で高速道路上を逃げる私たちだが、四條さんはタイミングを見計らって動きが安定する瞬間に狙撃銃(ライフル)を発射する。


 入れ替えた弾倉に入っていたのは、おそらく戦車ですら一撃で弾け飛ぶレベルの徹甲弾……その名前にふさわしいレベルで大百足の胴体がまるで豆腐のように弾け飛ぶ……しかし大百足は胃に介した様子もなく損傷した損傷した体節を切り離すと、磁石でもついているかのように再び体が一体化してそのままのスピードを維持して追いかけてくる。

 え? それはズルい! どうやらこの大百足の体は、体節ごとに切り離し接続が可能な状態になっているのだろう。四條さんがその様子を見つつ冷静な声で宣言する。


「……なら徹底的に破壊すればいいですね」

 四條さんが左右に回避を続けながら突き進むバイクの後部座席から大百足に向かって正確に射撃を繰り返していく。命中するたびにドス黒い体液を撒き散らしながら体節が吹き飛んでいくが、意に介せず大百足はまだ私たちの後を追いかけ続けている。

 だが当初相当な長さのあった体節は徐々に短く、そして全体としての速度も微妙に落ちてきている気がする。

「効いてますね、ある程度削ったら対処ができるかも」


「……期待してるところ悪いのですが、一旦弾切れです」

 狙撃銃(ライフル)の弾倉を引き抜いて投げ捨てる四條さん……背中にベルトで止めている別の弾倉を取り出すと、そのまま流れるような動作で装填して彼女の手には少し大きすぎるボルトを引いて準備を完了する。

 再び構えると大百足に向かって次々と射撃を開始する……彼女の狙撃銃(ライフル)が火を吹くたびに吹き飛んでいく大百足の体節。

「*+@!! $%&!!」


「……そろそろかな? 四條さんッ!」

 大百足が怒り狂ってさらに速度を上げる。高速道路上にある標識などを薙ぎ倒しながら迫る怪物……長さを確認した私は頃合いと判断して、四條さんと視線を合わせると彼女は頷く……このバイクのサイド部分に括り付けていた全て破壊するもの(グランブレイカー)を引き抜くと私はそのまま大百足に向かって跳ぶ。


『ようやく我の出番か……あんまり汚さんで欲しいのだが……』


「任されました」

 さらにバイクの運転席へと四條さんがそのまま移動し、サイドターンの要領で一気に道路上へと停止させた。

 大百足は跳躍して向かってくる私を見て、大きく顎肢を広げる……そのまま丸呑みだとか思ってるんだろうけどさ、残念。私は跳んだままの姿勢から刀を振りかぶり、狙いを定める。

「ミカガミ流……絶技、月虹(ゲッコー)ォッ!」


 私の振り下ろした刀が大百足の頭部を文字通りかち割り、引き裂いていく。ドス黒い体液を撒き散らしながら、怪物は真っ二つに分かれながらそのまま高速道路を数百メートル進んだところで、痙攣しながら路面へと音を立てて崩れ落ちた。体液はあちこちの飛び散り、街灯や標識を焼き焦がし植えられた木を腐らせていく。


『腐食性の体液か……あまり長く立ち止まっているとお前にもダメージがくるぞ、離れた方がいい』


 確かにね……私は刀を何度か奮って体液を落とすと少し先でバイクを止めている四條さんの元へと小走りに走っていく。大百足の体液の匂いは凄まじく、正直言えばすぐにここから離れたい。細かい調査は、KoRJの調査班に任せればいいか……。

 四條さんが少しだけ表情を柔らかくして私に手を振っているのをみて、私も軽く手を振るとインカムに報告を行った。


「あ、任務完了しました……ただ、ちょっと臭すぎてシャワー浴びたいです! 早く回収お願いしますっ!」

_(:3 」∠)_ V8搭載のバイクって本当にあるんですよねえ……ほんと度し難い


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