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幼馴染ざまぁについて二人で考えてみた

作者: 久野真一

これ、前から疑問に思っていたので、対話形式で書き起こしてみたのでした。

「なあ、雪歩。ちょっとこれ見て欲しいんだけど」


 俺、天道駆(てんどうかける)は、投稿サイト「小説家を目指そう!」の日間ランキングを幼馴染の三輪雪歩(みわゆきほ)に見せる。

 出てきたのは、開幕で幼馴染が主人公を手ひどく振って、その結果、主人公は別の女性と結ばれ幸せになり、主人公の良さに今更気づいた幼馴染は地団駄を踏む、と言う定型パターンの小説だ。

 最近、流行っている幼馴染ざまぁという奴らしい。


「うーん。正直に言っていい?」


 雪歩とは小学校以来の付き合いで、中学・高校とも別だが、割と仲良くしている仲だ。

 容姿そこそこ、スタイルそこそこ、成績そこそこ。

 地味だけど、そこがいいという奴もいるような感じの娘だ。


「どうぞ」

「この幼馴染、人間じゃなくてモンスターじゃない?」


 凄まじくキツイ言い回し。


「人間じゃないは言い過ぎだけど。気持ちはわかる」


 幼馴染とは読んで字のごとく、幼い頃は、あるいは幼い頃から仲が良かった友達の事だ。


「たとえ、相手の男がキモいと感じても普通言葉は選ぶよな」


 主人公を振る幼馴染は悪評など知ったことか、というタイプなんだろうか。


「まあ……たまにそういう性悪な子はいるけど。長年友達付き合いしてたらないと思うよ」

「同感。仮に俺が雪歩に告白したとして」

「キモっ近寄らないでくれる?」


 ずさっと後ずさりをされると少し傷つく。

 こういうところまで含めて雪歩の芸風なのだけど。


「とりあえず、そういうボケはおいといて。言葉は選ぶだろ?内心キモっと思ったとしても」

「ギクシャクしてたら、咄嗟にキツイ言葉吐いちゃうかもしれないけど」


 確かにそれはもっともだ。

 関係がギクシャクしているところに告白をかまされたら、心にも無い言葉を言うのかもしれない。


「でも、そういう前フリもないよな」


 一体、十年以上の間幼馴染、つまり友達関係を築いていたはずの二人に何があったらそこまで手ひどく振れるんだろうか。


「他の可能性としては……幼馴染だと思っていたのは主人公の男の子だけ、とか?」


 もしそうだとしたら、とても痛い話だ。


「つまり、主人公が一方通行の友情を抱き続けて来た、と」


 確かに、この仮説には納得感がある。


「そうそう。ストーカーに迫られたら、ひどい言葉もぶつけるかも」


 わかる。わかるんだが。


「それって幼馴染でも友達でもなくない?」

「そうね。単なる加害者と被害者の関係かな」


 悲しげに目を伏せて言うけど、実にひどい結論だ。


「あと、主人公を虐げてる女の子が幼馴染っていうのもよくあるけど、単にイジメっ子だよな」

「そうね。普通、友達とは言わないよね」


 やはり謎だ。


「幼馴染って小さい頃からの友達って意味だと思ってたんだけど、実は別の意味?」

「この小説での用法は違う意味かも」

「それだったら、別に片想いしていた高嶺の花に手ひどく振られるでもいいよな」


 本当に謎だ。

 ずっと仲が良くない幼馴染とか。どっかにそういうレアモンスターがいるのか。

 そういう奴とは普通、途中で縁切るのでは。


「謎だ……」


 腕を組んで悩んでしまう。


「ところで、駆はなんでこんな話題を振って来たの?」


 氷のような視線で射抜かれる。


「実は、雪歩の事、ずっと好きだったんだ」


 これまでの話題はその前フリ。


「キモっ。あんたみたいなやつに好意を寄せられて迷惑もいいところよ。仕方ないから幼馴染として付き合ってあげてたけど……」

「そのさあ。なんで、ざまぁされる幼馴染を真似てるんだ?」

「言ってみたらどんな気分になるかなって」

「で、ご機嫌はいかが?」

「さすがに振った後も気分悪くなりそう」


 うげーと言った顔をしている。


「やっぱそうだよなあ」

「ところで、この告白はマジ?それとも冗談?」

「一応、マジのつもりだったけど」

「駆の告白は淡々として、そう聞こえないから!」

「悪い。しかし、その辺は雪歩も知ってるだろう?」


 昔から、そうだった。


「私としては……もっと情熱的な告白が欲しかったな」

「誠にすいません」

「でも、いっか。付き合おっか」

「そんな軽いノリでいいのか?」

「顔はフツメンだけど、ノリはいいし、居心地がいいし、有りかなって」

「なんかひどい言われようだな」

「冗談、冗談。なんだかんだで助けられて来たところはいっぱいあるし。好きなのは本当」

「雪歩の方こそ淡々としてて、信用出来ないんだが」

「それはお互い様だと思う」

「……そうだな」


 というわけで、なんとなく友達の延長線上で付き合うことになった俺たち。


「結局、幼馴染ざまぁって何だったんだろうな」

「創作にあんまり深く考えても仕方がないよ」

「ま、そうか」


 そんなどうでもいい事をしゃべりながら、いつものように二人で下校したのだった。

さて、どのような印象を抱かれたでしょうか?

結果的に、幼馴染ざまぁに批判的な内容になりましたが、感想などお待ちしています。

「幼馴染ざまぁって形式として妙だよな」とか思われる方は、

【★★★★★】をタップして評価いただけると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 幼馴染ざまぁへのアンチテーゼとして面白い作品だと思います。 それにしてもこの幼馴染達いいな、こういう幼馴染欲しいです。 [一言] ざまぁされる幼馴染キャラって ・サイコパス ・腐れ縁…
[良い点] この幼馴染二人は仲がよさそうで何より [気になる点] 幼馴染ざまぁものってかざまぁもの全般に違和感感じるのは一部のジャンルのカウンター作品という一面があるからだと思う 長奈々なじみ系で言…
[良い点] 自分が日々疑問に思っていたことがそのまま文章になったかのようですっきりしました ランキングに乗る「幼馴染」ってなんでそんな嫌いな奴を幼馴染扱いしているのか謎だったんですが、やっぱり幼馴染っ…
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