聖女様の身の上話 ~セクハラ専務とブラック会社の末路~
ケイ先生の思いつきで始まったかのような私の施術者生活ですが、私が想像していた以上に順調でした。
最初は、足裏と内臓整体。院の患者さんには目新しかったようで、10分ワンセットで1000円だったらお試し感覚でやってみようか、という方は結構いらっしゃいました。もっと長くじっくり施術して欲しいという患者さんにはサロンの先生を紹介するようにしていたので、先生方もお客様が増えてらっきー☆ というわけです。
そのうち、整体の延長分なども任せてもらえるようになりました。私は鍼灸師ではないので鍼やお灸はできませんが、自費扱いでの整体なら大丈夫です。女性の施術者の需要って実は潜在的には多かったみたいで――肩こりに大胸筋のアプローチって有効なんですけど、施術の一環とは言え男の人に胸やお尻を触られるのは抵抗があるな、っていう女性の患者さんは少なくなくて、何気に私、ひっぱりだこです。男性の施術者だとどうしても遠慮が先に立って甘くなりがちなところ、私は同性の気安さで遠慮なくガンガンいきますからね。
でも男性施術者の事情もよく理解できます。某激安店では女性のお客様に訴えられちゃった男性施術者もいましたし。もちろん、施術者側にはやましい気持ちなんてこれっぽっちもなかったのでしょう。そんな邪な気持ちを欠片でも持つのならセラピストを名乗らないで欲しいとさえ思います、他の真っ当な施術者の迷惑ですから。男性施術者は大変です。女性は女性でまた違った苦労や大変さがありますけど、それは割愛します。
患者さんからの需要があると、院長も認めざるを得なくなるんですね。院長、当初の反対を忘れたように手のひら返して私に整骨の患者さんも割り振るようになりました。ゲンキンなものだと思わなくもありませんが、施術ができるのは大歓迎です。
院長は放課後――いえ閉院後に私を残らせてまで手技練習に付き合ってくれるようになりました。……下心? 多分あったでしょうね。バイクで来れない雨の日に、遅くなっちゃったから~ってあの真っ赤なフェアレディZでアパートまで送ってくれたりしましたから。その時にちょっと不愉快なことがあったので、次の日にケイ先生にチクって――いえお伝えしておきました。バスなくなっちゃったでしょ~なんて見え透いてるったらありゃしない、ホントにどうしようもない小猿です。
でもあの小猿、仮にも院長だし腕だけはいいんです。性格はねじ曲がってますが口は上手いし、柔整師としては有能な人だったんで、信者みたいな患者さんもぽつぽついましたしね。
ケチだし、こすっからいし、若い女性の患者さんだと規定時間をオーバーしてまで過剰サービスしちゃうような小猿じゃねぇや院長ですけど、あんなヤツでもケイ先生の夫だし、いいところだってなくはないのです。
私の交通費までガメようとしたドケチ野郎ですが、私に技術を仕込むことに関しては教え惜しみはしませんでした。訊けば何でも嬉々として教えてくれました。筋肉のことも、手技のことも、各々の症状に対する様々なアプローチの仕方も、ストレッチのやり方とかも、本当に何でも惜しみなく教えてくれました。
あるいは院長には、所詮この女にはありったけの技術や知識を与えても俺を脅かす存在にはなり得ないっていう打算みたいなものもあったのかも知れません。とにかく自分がいちばんじゃないと嫌な王様気質な野郎でしたから。ありていに言うとナメられてたんでしょうね私。でも、それならそれでいいのです。私は小猿じゃねぇや院長から盗めるだけの技術を盗んでやろうと割り切ることにしました。
フクムラ鍼灸整骨院で働き始めて1年程した頃、前職のブラック会社のセクハラ専務が逮捕されました。
よくこういうニュースを見るたびに、半年後なり1年後なりでやっと逮捕かよのんびりしてんなケーサツは何やってたんだ、なんて思ったりしてましたけど、ソレ系のヤツって本当に時間がかかるものなんだな、ってことを身をもって知りました。警察屋さんサボってるわけじゃないんですね、ごめんなさい。
この件はネットニュースにもなりました。名前や会社名を伏せたって、ネット探偵の皆様の手にかかれば即座に丸裸です。FBIも真っ青な手並みです。セクハラ専務の名が日本中に轟きました! 凄いですね! セクハラ専務とブラック会社、一気に全国区です! 宣伝効果抜群ですねすごーい(棒)
ちなみにあのブラック会社、私に比較的よくしてくれてた先輩が弁護士立てて三下り半をつきつけた結果、他の社員までもが便乗しガタガタになっていると風の噂で聞いていました――直属の上司だったカガさんに、駅で偶然会いましてね。雨の日以外はバイク通勤で滅多に駅に寄りつくこともなくなってたのに、凄い偶然でした。カガさん、私のテリトリーのお隣の市に住んでるんだそうで。
やはり蛇の道は蛇というか、同じ業界にいるわけですからカガさん、色んな話を聞き込んでましたよ。あのブラック会社、もう風前の灯だとかって。ひとりが残業代プラスアルファをせしめて足抜けしたら、俺も俺もってなるわけじゃないですか。その当時であのブラック会社、社員の半数近くがごっそり辞めたってその時カガさんは言ってました。ホシ弁護士は余程上手くやってくれたようです。流石自称ブルース・ウィリスです。
そんなところにセクハラ専務の逮捕でしょう、もう収集がつきまへんってなって、結局あの会社、潰れちゃいました☆
私が直接手を下したわけじゃないけど、最終的にとどめをさしたのは私なのかなーなんて、勝手に思ってるんですよ。
倒産寸前に社員の半数近くが参加したとも言われる集団訴訟(?)、カガさんによると何とあのみそっかすのミソノさんまで名を連ねてたとか。小者のくせにうまく立ち回ったものです。運転免許は無事に取れたんでしょうか。
クズ野郎ことクズミは会社と命運を共にしたようです。カガさん情報だと、給料もロクに払ってもらえず放り出されたとかで。こんなことなら集団訴訟(?)に加わっときゃよかった、カガさんの会社に口きいてもらえませんかって泣きついてきたんですって。もちろんカガさん、断りましたって。当然ですわね。馬鹿には似合いの末路です。ざまぁです。
ブクマ評価等ありがとうございます。とても嬉しく励みになっております。
転移前・現代日本でのざまぁです。
因果応報はありまぁ~す! というお話です。
別名:やはりどこかで帳尻が合うようになってるでござるの巻。