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暇を持て余す

三話目です!

「ったく、うるせぇんだよなぁセンコーって奴らはどいつもこいつもよぉ」


 教室から抜け出した武人はそう悪態を吐きながら現在校舎の敷地からも抜け出していた。


「にしても、また出てきてちまったよ。どうすっか」


 武人は凡そ週一の頻度で授業を途中で抜け出す。

 一度出て来てしまうとほとぼりが冷めるまで戻るのは得策ではない。

 度々校舎を抜け出している武人はそれを良く知っていた。


「さーって何処で暇つぶすか」


 暫く学校へと戻らない事を即決した武人は暇つぶしを何処でするかを考えた。

 学園寮へと夜こっそり戻るのでそれまでの時間を浪費する手段を思案する事は武人にとって難しい事であった。

 何故なら幾度となく同じことを繰り返しているからだ。いい加減暇つぶしのネタも切れてきたのである。

 友人が居ればまだ幾らかやりようはあるが現在それに該当する人物達はは学校で授業を受けている。


「……ゲーセンでも行くか」


 もう何度目かも分からないその選択肢を選んだ武人は溜息を吐きながら市街地への道を

歩き始めた。



「何っ!?見失っただと……!! 一体何をしているんだ!!」


 市街地の狭い路地、暗くじめじめとしたその場所で携帯を耳に当て通話先の人物にそう

怒鳴りを上げる人物がいた。


『も、申し訳ございません!! 目を離していた訳ではないのですが何分素早く……』

「何を言い訳している!! 相手は小学生だぞ!!」

『はっ……!!、本当に申し訳ありません……!!』


 電話越しに相手は確かな自身の無力さを悔いながら謝罪をした。


「……謝罪で事が済むのか!? 口を動かす前に足を動かせ!! 見つけられなければ厳罰処分はするのはお前だけじゃない、部下の教育を怠ったとして俺も終わるんだ!! いいから探せ……自分の命を探すと思ってな!!」

『は、はい!!』

 男の怒声に怯えるように言った部下である男はそう言って電話を切った。

「……くそっ!!」

 携帯を握りしめたまま男は壁に自分の拳を殴りつけた。



 何とか市街地で時間を潰した武人は虚無感に打ちひしがれながらおぼつかない足取りで

地面を歩いていた。


「格ゲーにレースゲームにアーケード……後クレーンゲームか……」


 自分がこの数時間でプレイしたゲームの種類を口頭で誰に言うわけでもなく上げる武人。

 そして武人はオレンジ色になっている空を見上げてまるで空に叫ぶように言った。


「……あああああ飽きたあぁぁぁぁ!!!!」


 突然通行路でそんな事を叫ぶものだから老若男女、様々な職種の人が肩をびくりとさせ

ながら驚き武人を見ると、すぐさま危ない人だと認識し足早にその場を去って行ったのだ

った。


「くっそぉ……」


 そう、武人は完全に飽きていた。

 以前から既に飽きていたのだが今日のゲーセンで完全に飽きてしまったのだ。

 この一年、度重なるゲーセン通いによって武人のゲームテクニックはゲーセンに設置してあるものならば市内で右に出るものが居ない程度(武人の勝手な思い込み)には上達してしまった。

 超えるべきものが無い、達成すべき目標がない。

 そんな状態では飽きるのは明白であった。

「ってか何でここはパチンコもスロットも無ぇんだよ……それどころか競馬も無いとか信じらんねぇ」


 武人が住む現在住んでいる開浜市は人口の三割が医者の息子や財閥の令嬢と言った裕福層、そして四割が彼らに奉仕する人間、残りの三割が普通に労働する一般人で構成されている。

 更に補足すると、何も奉仕する人間というのはボディーガードだけではない。

 奉仕する人間は大きく分けて三種類の職の選択肢がある。


 一、ボディーガード。

 二、執事

 三、メイド。


 近年、ボディーガードを目指す人間は武人の在籍している防守学園に通い、執事は同じく開浜市にある聖道学院男子奉公科、メイドは女子奉公科に在籍し勉学に勤しむ。補足すると聖堂学院に入るためにはかなり裕福な家庭の財力が無ければ入るのは難しい。


 閑話休題


 開浜市は開発からまだ十年程しか経っていないため未だ他の市にあるような施設が建設されていない事がある。競馬場などはそもそも立地の関係で建設が出来ないのだが今後の日本の未来を担う富裕層の子供に悪影響を与えかねないという懸念はその他のギャンブル施設の建造躊躇の後押しをしていた。


「っはぁぁ久々に回してぇなぁ」


 武人はそう言いながらパチンコのハンドルを回す動作を振りで行った。

 そんな動作をしながら道路の隅に停車しているパトカーとすれ違いになった時である。


「おー武人」


 その車内から武人を呼ぶ声がした。


「ん、あぁ栄治か」


 武人はその男の事を栄治と呼んだ。


「何だよテンション低いな」

「いやぁなんか今日は色々考えちまってな」

「お前が考え事とか明日地球は滅んじまうのか」

「うるせ、そういうお前は今日も腹黒警官やってんのか」

「腹黒は余計だ」


 勝又英二かつまたえいじ、東開浜警察署にて勤務をする警官。武人が一年生の時に特別講師という形で防守学園に授業をしに来た事をきっかけに知り合い仲良くなった人間だ。


「まぁ今日は気分乗らねぇしまた今度遊ぼうぜ」


 武人はそう言うと止まっていた足を動かした。


「あぁ。また隣町の競馬場で一発当てような」

「当たった事ねぇだろ。こんなトコでサボってねぇでちゃんと仕事しろよー」

「そりゃお前だ武人、俺はパトロールだっつーの!」


 二人は他愛もない会話をするとその場で別れた。



 栄治と別れて数分後、武人は未だ意味も無く歩いている。

「まだ優佳達学校だけど先に寮戻るか……ん?」

 帰る事を決めかけながらふと視線を巡らせると自分がまだ通った事のない道がある事に気が付いた。


「……まだ、時間がある、か」


 寮へと帰ってもまだ友人が帰っていない事が分かっている武人。


「たまには、ブラブラ探検ってのも悪くねぇか」


 ふとした気まぐれでそう思った武人は道路を一つ跨いだその路地へと足を向けた。

 まさかその気まぐれが、今後の自分の生活を大きく変える事になろうとは知らずに。


ここまで読んでいただきありがとうございます!!

本作が少しでも気に入って下さった方は是非ブックマークや感想、広告の下の☆から☆☆☆☆☆→★★★★★というように評価などしていただけると幸いです!!

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