1.変身しちゃった日
20XX年某月某日朝。
片桐 静香は夢から目覚めた。
「なに今の?」
静香は、自分がカマキリのような姿の黄緑色の戦士に変身して戦う夢を見ていた。
「なんか、面白い夢だったけど……」
「静香! 朝ごはんよ! 起きなさい!」
室外から母親の声。
静香はパジャマから制服に着替える。
「おはよう」
食卓に着く静香。
テレビでは、殺人事件のニュースを連日放送していた。
「最近、多いわね、殺人」
と、母親。
「静香も巻き込まれないよう気を付けるのよ」
「はーい」
ご飯を食べる静香。
「行ってきます」
ご飯を食べ終えた静香が玄関で靴を履く。
「気を付けるのよ」
「うん」
静香は家を出て登校する。
登校中、それは突然起こった。
通学中に通る喫茶店の屋根に何かが落ち爆発した。
「うわ!」
爆風で瓦礫などが飛び散る。
「なんなの?」
爆煙の中に、黒い影が見える。
爆煙が晴れると、アリのような姿をした怪物が露わになった。
「え?」
怪物は静香に気づくと、ゆっくりと迫ってくる。
現況に恐怖した静香は足が竦んだ。
「あ……あわわ……」
怪物が静香の胸ぐらを掴んだかと思うと、宙へ持ち上げ、放り投げた。
「きゃあ!」
静香は綺麗な放物線を描いて地面に落下する。
「ぐ!」
地面に叩きつけられ、痛みを味わう。
「やめて……!」
だが怪物は攻撃の手を緩めなかった。
「ああ!」
静香は怪物に蹴り飛ばされた。
(に、逃げなきゃ!)
覚束ない足取りでその場から退却しようとするが、怪物に先回りをされる。
静香は怪物に殴り飛ばされ、地面を転がる。
(もうダメ……)
その時だ。
静香の体に変化が起こった。
彼女は鮮やかな黄緑色のカマキリのような異形に姿を変えた。
そして、同時に力が湧き上がってくる。
異形は立ち上がり、怪物を圧倒し、右腕をカマに変えてぶった切る。
「ぐわああああ!」
怪物は悲鳴を上げ、倒れて四散した。
「はあ……はあ……」
異形は自分の体を改めた。
驚き戸惑う異形。
(これ、夢に出た)
異形は静香の姿に戻る。
「見つけた」
静香がその声に振り返ると、端正な顔立ちをした一人の女が立っていた。
「君を捜していたんだよね」
「誰?」
「ああ、私はルーシア。惑星ワームの軍人よ」
「わくせいわあむ?」
「うん。私は幼くして地球へ派遣された、あなたを捜していたの」
「え?」
「驚いたよね。地球人であることを否定されたのだもの」
「なるほど。さっきの変身はその惑星ワーム特有の能力ね?」
「物分かりがいいのね」
「あの怪物はなんなの?」
「ワーム人と敵対する組織、バルバロッサ。さっきのはバルバロッサの思想の影響を受けたワーム人だけど」
「私は戦うのを運命づけられてるのかしら」
「あなたは惑星ワームの王女でね」
「王女……?」
「マンティス、あなたにはこの地球をバルバロッサから守ってほしいの」
「マンティス?」
「あなたの名前よ。お願い、あなただけが頼りなの」
「そ、そんなこと急に言われても……」
「あなたの育ったこの地球が滅ぼされてもいいの?」
「よくないけど……うーん……」
「悩んでる場合じゃないわ」
「いや、でも……」
「やつらはすぐそこまで来ているのよ?」
「私、高校生だし」
あ!
と、静香は思い出した。
「遅刻だー!」
静香は高校へ向かって全速力でダッシュした。