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「何となく、あなたがいらっしゃる気がしましたよ」
ソズボがバスに乗って、「ヒナネブピ登山口」というバス停で降りると、そこに立っていたのが、仙人ホル・レヘヤサボだった。ソズボが驚いた顔を見せるとホルは言った。
「驚かないでください。私も一応、仙人ですから」
ソズボは仙人ホルと共に、近くにある登山者のための小屋に移動すると、さっそくホルに、まくし立てた。
「今、ミス国では、大地震により、エワイ原発がメルトダウンの危機を迎えています。原子炉を冷やすには、水が必要だと言われているのですが、ホル師は、どうお考えですか?」
すると、ホルは目を閉じて少し考えた後、
「ミス国の人々に大変な動揺が広がってること、それは感じています。ただ、ミス国がこの後、どうなるのか?原発がどうなるか?そこまでは私には分かりません」
と答えた。そこでソズボはホルに直球で挑むことにした。
「私があなたにお願いしたいのは、原子炉の冷却のために、エワイ原発の現地に雨を降らしていただけないか、ということです」
ソズボがそう言うと、ホルは一瞬、目を丸くしたが、すぐに首を縦に動かした。
「それが、あなたの願いで、私には、その力があります。分かりました、あなたのためにやりましょう。国のためとかでは、ありません」
ソズボはその場で電話でタクシーを呼び、ホルと共に、まずは首都ウッビゾに向かうことにした。ホルは若干支度があると、一度いなくなったが、30分ほどで合流し、2人は駅に向かった。
ヘホトから連絡が来たのは、ウッビゾ行きの特急の中だった。
「ダモエ教の総本山で、教祖ズハに会いましたが、ダメですね。例え、ミス国にハルマゲドンが起こっても、教団が救うのは信者だけだそうです。助かりたければ信者になれで、お話になりません」
ソズボは決意した。
「分かった。私は今から仙人ホルと共にウッビゾに戻る。そして、帰り次第、ロケ車でエワイ原発へ向かう。君には必要な準備を頼む。仙人ホルがいれば、もう大丈夫だ」
ウッビゾに着くまでの残りの時間、ソズボはエワイ原発や、その親会社であるウッビゾ電力に取材許可の電話を入れたが、まともな話にはならなかった。残された手段は、ぶっつけ本番しかない。
ウッビゾ駅に降りた、ソズボとホルはタクシーに乗り込んだ。ホルは、まるで瞑想か居眠りでもしているように、目を閉じ、動かなかったが、ソズボは終始、大声で電話を掛け続けていた。
「テレビウッビゾ」の本社ビルに着くと、ソズボは玄関前に立っていたヘホトに駆け寄り、
「悪いが最低限の機材だけ積んで、今からヘリで『テレビエワイ』に移動する。車移動は、そこからだ」
と言った。ヘホトが驚いた顔をすると、
「ヘリじゃないと間に合わない。ミヤサさんを、ミス国を救う最後の特番だと言って脅したよ。すべての責任は俺が取る」
「テレビエワイ」では、同社社員ダユヨが協力を申し出た。
「道路は混雑してますし、地震の影響で寸断されている場所もあります。いつ到着できるのか、私自身にも分かりませんが、私はエワイ出身で、道には詳しい。エワイを救うために協力します」
16日の午後、車は「エワイ原発」に向け出発した。




