サンドホエール戦
バシュゥッ!!
船に備え付けてあったバリスタから、つがえた矢が発射される音が鳴る。
「早く倒してここからおります!!」
そしてエストの怒号までも。
サンドホエールとエンカウントしたシャケ達は、この混沌とした中備え付けてある兵器で応戦していた
「ムイスラ!毒くれ!」
「あいよ」
シャケの要求に短く答えると、アイテムボックスから毒の入った瓶を取りだしシャケへ投げて渡す。
それをシャケは上手く取ると、その瓶を開け、バリスタ用の矢にかけていく。
「こういう強そうなのは状態異常攻めに限る」
「たまに聞かないやつもいるけどな」
「そういう事言うなって!」
バシュゥッ!!
毒矢に仕立て上げると、間髪入れずサンドホエールに撃ち込む。
「クオォォォォッ!!」
毒矢が突き立てられたその瞬間、サンドホエールは悲鳴を上げながらのたうちまわり始めた。
「即効性の毒が効いてるな」
「いや、効きすぎでね?こんなに暴れられるとこっちが危ないんだが?っと、危ねぇ!」
ムイスラに悪態をつくとそれと、ほぼ同時に砂船に向かってサンドホエールがぶつかり砂船が大きく揺れる。
「うっう、気持ち悪いです…………うおぇっ」
「おい、誰かあの戦力外をどうにかしとけ!」
「いえ、いくらか吐いきましたから幾分かマシになりました。なのでさっさと終わらせましょう」
口の端に液体を垂らしながらタブリンは、あろう事か普段使っている弓でバリスタ用の矢をつがえ始めた。
「ふぁ?!」
「あれ、船酔いのせいですかね、弓が凄く引きずらいです」
「そりゃそうでしょうよ!」
「う〜らぁ〜!!」
タブリンの異常な力にシャケが驚いていると、その隣でエストがバリスタの矢に魔法を付与して撃ち出し始めた。
「お前らはなんなの?なんで船に乗った影響で覚醒してるの?!」
「『捕縛』」
「は?」
「えっ?」
シャケがツッコミに追われていると、ムイスラの声と共に腰辺りに何か違和感を感じた。
それはミーも同じようだった。
「あいつらだけじゃない、お前らも羽ばたくんだよ!!」
シャケはムイスラの一言に嫌な予感を覚え後ろを振り向くと、そこにはシャケとミー、そして砂船を繋いだロープがバリスタの矢
に括り付けられているのが見えた。
「………………」
「嘘、だろ?」
これから起こることを察した二人は、片や言葉を失い、片や現実を否定しようとする。
「発射ぁ!!」
しかし、次の瞬間にはシャケ達の身体は砂上を舞っていた。
「いやぁぁぁぁ!!うっ」
「うわぁぁぁぁ!!うぇっ」
悲鳴が上がり、それと共にサンドホエールにぶつかり小さく声を漏らす。
「ゲッホゲホッ、何すんだ!」
「危なくなったら回収するから思う存分暴れとけ!」
「クソが!」
「黒猫丸いくよ!!」
ムイスラの怒号に合わせてシャケとミーがサンドホエールの表皮を蹴り、身体を駆け各々攻撃を入れていく。
エスト、タブリン、ムイスラは各自バリスタ―約1名自らの弓で―攻撃し、シャケとミーが暴れ回り身体を砂や船に打付けるサンドホエールの上で攻撃を続ける。
「あんまりダメージ入ってるように見えねぇ……」
「いや、流石に入ってると思うよ?」
「俺の攻撃の話、こいつのこの皮膚に打撃とか全く
入ってる気がしねぇ」
「じゃあどうするのよ、せいっ!!」
サンドホエールを攻撃する片手間に話していると、シャケがふとあるアイデアが浮かんだ。
「よし、目潰して身体に入って倒すか」
「待って?今身体に入るって――」
「目ん玉からお邪魔しまーす!!」
ドチャッ
次の瞬間、シャケはいや音を立てながら腕を前にして目を潰しながら体内へと入っていった。
「クオォォォゥ!!」
「うっるさ!ってうげ、ほんとに入ってった……」
シャケがグチャグチャと音を出しながらサンドホエールの中へ入っていくのを、ミーは思い切り顔を引き攣らせ見ていた。
「わたし戻っておこうかな……」
ミーはそう呟くと、バリスタの矢からロープを取り、ロープを引きながらサンドホエールから砂船へむけ飛び、見事飛び移った。
「シャケは?」
「インサイドホエール……」
「ほんとあいつには驚かされる事ばっかりだわ」
ムイスラが呆れながらその様子を見ていると、サンドホエールの暴れ具合が目に見えて激しくなっていた。
「これはすぐ終わるかもな」
「案外呆気なくて驚きね」
「いや、覚醒してる奴が2人にアホンダラ野郎1人いりゃこんなもんだろ」
「そうね」
2人が笑い合っていると、サンドホエールの動きがどんどんと鈍くなって来ていた。
「これは脳みそ到達しましたな」
「ほんとシャッケは常識外れねぇ、普通ゲームで敵の中に入ってくかしら?」
「この前一緒になったアキもやりそうだけどな」
「どうかしらね?女の子よ?そんな事しないんじゃないかしら」
「どうだかね」
こうしてサンドホエール討伐依頼は3人の活躍により、予想より早く終わったのだった。




