スケルトン兄弟の実力
完全に動きを止めたオートマタとその主と思われる死体に黙祷をささげると、少し寒かったのでナズナさんから予め貰っていた外套を見に纏い、セキトバに跨り帰路に着くことにした。
確かに未開の地だったが……ネットで仕入れた情報とは違ったな。
確か俺の行こうとした未開の地は砂漠だった気がするんだが、どこかで道でも間違えたか?
セキトバに揺られながら、アキは先程手に入れたオートマタに関する書物を再度読んでいた。
オートマタの設計図か、結構┃あっち《現実》にあるようなロボットとかと変わらないのか。
違いがあるとすれば動力、回路、そして心を持つ事くらいか。
『我が主、前方に人影が』
「そう、敵意があるなら適当に倒しといて」
『はっ』
アキが適当にほね太郎の問いに返すと、ほね太郎達はいつでも戦闘に入れるよう構え迫り来る人影を見ていた。
『そこな者共止まれ!!』
『でねぇとぶっ飛ばすぜ?』
『主に仇なすなら串刺しではすまんぞ』
本を読みながら事を見ていると、ほね太郎達が前から来る人影に何やら叫んでいるのだが、その叫びをものともせず人影はこちらへ向かって来ていた。
「おい、なんだあれ……」
「黒い馬に乗ったスケルトンに熊の皮を被ったスケルトン、そして骨の馬に乗った見るからにやばそうなやつ……」
「だからこんな道やめとこうって言ったんだ!!」
「仕方ない、やるしかない!!」
あー、そういやぁこいつら普通の人間とは話せないんだったな、しかもこっちは完全に敵みたいな格好してるからな……
「よし、お前ら任せた。俺はこれ読むのに忙しいから」
『『はっ!!』』
俺の命令に全員が一瞬で戦闘態勢に入り、その場は一触即発の状態に陥る。
張り詰めた静寂のこの場で、アキが資料をペラペラとめくる音だけが鳴り響く。
そして、アキがその資料を仕舞い、新しい資料を取り出したその時。
それをゴングに両者の戦闘が始まったのだった。
「うおおおお!『バーニングエッジ』!!」
「砕け散れ、『ロックハンマー』!!」
真っ先に突っ込んできた剣と槌を持った前衛がスキル名を叫びながら各々の獲物を振り上げる。
「勇敢な二人に神の御加護を『ホーリープロテクト』!!」
それに合わせるようにして後ろに控えているクレリックと思われる後衛が名前的に防御力を上げる魔法を使う。
『ふん!!』
『遅い!!』
しかし、うちのスケルトン兄弟は優秀で、ほね太郎は騎馬状態用に装備していた亡国の盾で振り下ろされた斬撃を軽く弾き、くま五郎は槌を回避し真後ろへと回り込んでいた。
「まずい!」
「させない!『アイシクルランス』!!」
『チッ』
槌持ちの前衛の後ろに回り込んだくま五郎に剣持ちが叫ぶ、すると間髪入れず後衛の魔法使いから氷の刃が飛んでくる。
それをくま五郎は舌打ちをしながら避け距離をとる、そしてほね太郎もそれに合わせて黒馬を操りアキの傍へと寄る。
『めんどくせぇ』
『五郎、私が前衛の不敬な者共の相手をします。その間に五郎は後ろを』
『ほぉ?随分と美味しい役目を取ってくなたろ公、まぁいい俺がぶちのめし来てやる。あの魔法使い俺の邪魔しやがったからな』
二人は一頻り話し合うと目を赤く爛々と光らせ、動き出した。
「来るぞ!気をつけろ!」
「スケルトンが、砕いてやる!」
『じゃあなお前ら、悪いが俺は後ろに行かせてもらう』
くま五郎がニヤリと笑い━スケルトンな為表情は変わらないが━ながら前衛の間を抜ける。
するとその様子に焦った前衛二人が何とかくま五郎を止めようと動き━━
━━ほね太郎の斬撃の餌食となった。
「ぐあぁぁっ!!」
『愚か者共、貴様らの相手は我が主アキ様の右腕ほね太郎です』
肩まで入っていた剣を引き抜くとほね太郎は赤く輝く空の双眸を目の前の二人に向けてそう吐き捨てた。
『おお、それいいなたろ公。俺は姉御の左腕、くま五郎。悪いがテメェらにゃ死んでもらう』
ほね太郎の名乗りに感化されたくま五郎は、それを真似て後衛二人の目の前に腕を組んで仁王立ちするとそう名乗りあげる。
『じゃあここで』
『この地で』
『『死ね』』
二人が声を揃え言うと同時に、ほね太郎はその前衛達の首を斬り飛ばし、くま五郎は後衛二人の心臓を拳で突き破り、一瞬にして一つのパーティを全滅させた。




