蒼天龍
戦闘開始からしばらくフリージア相手に戦っていると攻撃のバリエーションが急に増え始めた。
これは体力が一定量減らせたってことか?
そんな事を頭の隅に浮かべつつフリージアの攻撃を防いでいると、フリージアの背が淡く青く光り出しているのに気がついた。
フリージアは元から光を反射していて輝いていた、だがあの青い光はへ反射などではなく完全に発光しているものだ。
あれは大技の前兆なのかはたまた変身の前兆なのか分からない、だが警戒するに越した事は無い。
「太郎、五郎、セキトバ、フリージアが何か怪しい動きをしている。気を付けてくれ」
『『はっ!!』』
俺は太郎達に注意するよう言うと、丁度そこに飛んできた氷塊を大盾を走らせながら軌道を逸らしなんとか攻撃を防ぐ。
「危ない危ない。ったく、一体いつまでこんな事しなくちゃならないのやら」
『でやぁぁぁあ!!』
フリージアの方を見ると、側面や背後からバカ一人とスケルトンズがフリージア目掛けてどんどんと攻撃をしているのが見えた。
ほね太郎は暴れ回るフリージアの身体を匠に躱し、躱すと同時に堅実に一撃づつ攻撃を入れていく。
一方くま五郎はその持ち前の速度を生かし一撃を入れては離れ、離れた場所から勢いをつけ殴るを繰り返し効率よく最大火力を当て続けている。
セキトバはセキトバで黒馬と共に、影魔法でフリージアの様子を見つつ着々とダメージを重ねる。
んで、あっちの方は…………
俺がルアンの様子を伺おうとしたその瞬間、フリージアの顔が天めがけて打ち上がった。
「うっわぁ……」
アキが持っている大盾を一回りも二回りも大きい巨大な顔が打ち上がる様を見て、驚愕と呆れの二つの声がアキの口から漏れ出る。
「ボケっとしてると痛い目見るぞ?」
「てめぇ、どの口が言ってやがる……」
ルアンの発言に引きつった笑いで返すと、アキはある事に気がついた。
背中の光がさっきよりも強く発光してる?
それを目視した瞬間、アキの背中に悪寒が走った。
そして、悪寒に当てられたアキは大盾を素早くアイテムボックスにしまい、アサルトチャージまで用いてその場から離れる。
するとその場を走り去ったアキのすぐ後ろを青く冷たい光が通り過ぎ、それが走った道には大きな氷の結晶が綺麗に一直線に並んでいた。
あ、あぶねぇ…………あんなのくらったら即お陀仏だぞ?
脳内でそう危惧していると背中からパキパキ、という不吉な音が聞こえてきているのに気が付いた。
…………まさか、な?
冷や汗ダラダラと垂らしながら背中を何とかして見てみると、背中が凍っていた。
いや、正しくは現在進行形で凍って来ている。
あっぶねぇ!!
徐々に凍っていく装備を見たアキは即座に装備を外しアイテムボックスへと放り込み、申し訳程度のウッサーTと死霊守護者の大盾を装備しフリージアへと向き直り、の背を注意深く観察しながら大盾を構える。
『おのれ、おのれ人間どもm』
「ウォッラァ!!」
『ごぶぅあっ……』
いつの間にか瀕死になっていたフリージアがもう一度口を開いたかと思うと、案の定ルアンの攻撃がフリージアを滅多打ちにする。
あぁ、心が痛くなってくるよ…………
Strガン振りは伊達ではなく、一撃一撃がかなりのダメージを与えるようで、パーティーでかかってかなり苦戦した挙句負けるであろう相手がボロボロになりながら攻撃している。
そんな異様な光景が目の前にあった。
『ううぅぅ!!しね!しねひねぇぇ!!』
半泣きのフリージアが叫ぶと背中の光が急激に強まっていき、口から青く強い光を放とうとしたその瞬間、フリージアの顎目掛けてルアンのアッパーカットが入った。
あっ⋯⋯
この後にあるであろう出来事を予感したアキは即座に大盾を構え手当たり次第にを発動させた。
すると一瞬だけ身体が白く光り、それとほぼ同時に視界全てを青い光が覆った。
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「生きてるか?」
「なんとか」
いつの間にか後ろに回り込んでいたルアンに生存報告をするとフリージアの方を向き直る。
するとフリージアはその呼吸を止めており、アキ達が勝利した事を示していた。
「やっと、終わった……」
「だな、さて、アイテムを回収しようか……」
重い身体を無理やり動かし、フリージアのドロップアイテムを拾ったその瞬間、先程まで青空だった空が一気に暗くなった。
そしてその暗さに二人が顔を上げると、そこには蒼天龍フラシールという文字と先程のフリージアなど一呑みにしてしまう程の大きさの龍の顔が雲の中から出ていた。
「な、なぁ……そういえばお前の目的ってフリージアじゃなくてフラシールとか言ってたよな?」
「あ、あぁ」
「こんなの倒せるか?」
「無理だな……」
「ですよね〜……」
次の瞬間、フラシールの咆哮によりアキ達は宙に舞い、そのままリスポーン地点まで直行したのだった。




