あいるびーばっく
雪風の吹き荒れる真っ白な山に一筋の光が降りていた。
それはこの山が雪山になってから一度として迎え入れなかった陽の光だった。
故にそこに住む全ての生物が蛍光灯に集まる虫のようにどんどんと集まっていった。
そのスポットライトの下では徒花がそかかしこから咲き乱れていた。
「341匹目!!」
ルアンの掛け声と共に猿型の敵MOBがズシャリという肉の断ち切られた音を立てながら崩れ落ちる。
「いつまで数えるつもりだそれ」
「飽きるか寝るまでだ!!」
「羊じゃねぇんだから」
セキトバから降りたアキは従魔達に命令しながら敵のタゲを取りながらルアンのふざけた答えにツッコミを入れる。
『せやっ!!』
『ふん!!』
脳裏に響く━実際に脳で響いているのだが━雄々しい共に敵MOB達の悲鳴が雪山全体に響き渡る。
ほね太郎は手に持った得物を敵へ向け構えながら走りだす。
『そこな有象無象共、我が主の糧となれ!!せやああぁぁぁぁ!!』
ほね太郎が駆け抜けた瞬間、MOB達から血飛沫が次々と吹き上がり真っ白な床のカーペットを真っ赤に染め上げレッドカーペットを作りあげた。
『ふっ、我が主から授かりし剣のサビとなるがいい』
「錆させたらぶっ飛ばすぞ?」
『す、すみませんでした!!』
アキの冗談半分の発言に若干戦きながらほね太郎が答え、貰った剣をなるべく錆びさせないよう剣を振るって血を払う。
━━ドゴォン!!
ほね太郎とアキがそんなやり取りをしているとすぐ横から何かが爆発したかと間違うような轟音が鼓膜を震わせた。
『うおぉぉぉ!!』
その轟音を皮切りに次々と轟音が鳴り響き、敵MOB達が次々と粉砕されていく。
『つぎつぎつぎつぎだぁぁぁぁあ!!』
「うおっ、あいつやべぇな。仲間でよかったわ」
くま五郎の猛攻を見ていたルアンは器用な事に迫り来る敵MOBを対処しながら額に青筋を浮かべていた。
まぁ俺もあの時熊じゃなくてくま五郎だったら速攻でやられてたな…………。
アキはそんな事を考えながら突進してきたMOBを軽くいなし、セキトバの魔法で串刺しにさせる。
「なぁ、これいつまで続くんだ?」
「正直俺にもわからねぇ、アイツらの作ったゲームだから何となくこのままだと永遠に戦闘が続く気がするが」
「嘘だろ…………都合は良いのかもしれないが正直面倒くさくなってきたぞ」
返ってきた答えにアキは苦虫を噛み潰したような顔をしながら心の内を呟く、するとルアンが何か思いついたような顔をするのだった。
「なぁアキもしだ、もし雪崩が起きたとしてお前にそれを防ぐ方法はあるか?」
「おいおい、嘘だろ?セキトバの魔法で防げるかどうかだぞ?」
「ならかけるか、いくぞ!!」
「馬鹿野郎!!」
その瞬間、ルアンがアイテムボックスから取り出した巨大なハンマーをアキ達の立つ場所より高い場所へ向けほおり投げた。
「セキトバ、雪崩に備えろ!!」
『はっ!!』
セキトバは威勢のいい返事と共に影によるドームを形成し全員を覆う。
「全員衝撃に備えとけよ?」
「誰のせいだコノヤロウ!」
その時、雪崩が影のドームを呑み込んだ。
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「ぶはっ!!」
真っ白な雪面の中からアキがポコりと飛び出した。
「あんの野郎、これで死んだらどうするつもりだったんだよ。まぁ生きてるからいいが」
俺はそう一言漏らすと、何もいない雪山を一人歩き始めた。
セキトバの魔法でドームを作ったはいいが結局途中で崩壊して巻き込まれたんだよな。
本当に馬鹿じゃないのか?生きてるからまだよかったが死んで街に戻されたらどうするつもりだったんだあいつ。
怒りを隠しもせずズカズカと歩いていると雪の中から腕腕が出ているのが見えた。
その腕をよく見てみるとサムズアップをしており、また戻ってくると言いながら沈んで行くシーンを思い出す。
「よし、ほっとくか」
「おい待てゴラァ!!」
俺が雪面から生えている腕を無視しようとすると、そこからルアンが雪から生え叫んだ。
「誰が待つかボケナス、誰のせいでそうなったと思ってんだ!!」
「え?誰?」
「てめぇじゃボケェ!!」
アキは全力の叫びとアッパーカットをルアンにあびせるのだった。




