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アリシア雑貨店  作者: ハゲ爺
1章・アリシアの自立
4/4

今昔スラム街とこれから

4話目です!魔眼でお願いします!


自分が楽しんで書いているのであまり読む人を意識していない節があるかもしれません。

申し訳ありません。


~ウェイスト地区・スラム街・老人の家~



メイちゃんは一頻り泣いたあと、疲れて眠ってしまった。今はベッドで寝かせている。

私の肩は涙でぐっしょりだ。


「あぁ、そうじゃ。自己紹介がまだじゃった。儂の名はバフじゃ。子どもたちからはバフ爺と呼ばれとる。一応、このスラム街を切り盛りしとるもんじゃ」

「私はアリシアです。アウグの森から今日出てきました。自立するためにできることを色々見て回っているところです。スラム街が目について、ふと入ってきました」

「なんとっ!あの『魔女の申し子』様じゃったとは!無礼をお許しいただきたいのじゃ」

バフという老人はそう言って頭を下げてきた。


「いえいえ頭をあげてください!偉大なことをしたのは私ではなく、師匠のティファですから」

「それでも頭を下げないわけにはいかん相手じゃ。なんせ、この国があるのは大魔道士ティファ・アウグのお陰じゃからな。その娘にはそれ相応の敬意を払わねばならん」

師匠が偉大なのは認めるが、私はなにもしていないのだ。難儀なものである。


「それはそうと、このスラム街についてお話を伺っても?」

「あぁ、そうじゃった、そうじゃった。まず何から話したものかのぅ⋯⋯。では、昔のスラム街から⋯⋯」


そこから続いた話が長かったので、要約してみた。


昔。

大体50年ほど前まではこのスラム街も普通の居住区だった。しかし、住民の高齢化が進み、空き家となる建物も多くなった。


その空き家を取り壊すにも大量のお金がかかるために領主はそのまま放置したそうだ。

なんとも無責任な領主である。


そして、子どもを育てる気のない親がこのスラム街に子どもを捨てていき、捨て子で溢れるスラム街が形成されてしまったらしい。


たまたま街に来た時にスラム街の惨状を見たバフ爺は、孤児院にスラム街の捨て子を預けられないか相談しに行ったそうだ。だが、流石に人数が多すぎて孤児院でも受け入れきれなかったそうだ。


バフ爺はその頃、家業である農業を引退して息子に引き渡し、老後をゆったりと過ごそうとしていたそうだ。


しかし、スラム街をなんとかしたいと思い、老後のために貯めておいた貯金を全て崩してスラム街の復興に当てようとしたらしい。


それでも、このスラム街の子ども達を養うには足りず、バフ爺自身も苦しい生活を強いられているらしい。


家業を受け渡した息子夫婦に迷惑をかけるわけにもいかず、自分でスラム街の外に茶畑を作って生計を立てているらしい。


私が無責任だと切り捨てたことを、バフ爺はやろうとしていたのだ。余生を尽くして。


そんな生活を7年ほど続けているらしい。


「昔は儂の家内も手伝ってくれとったんじゃが、2年前に死んでしまってのう。それからはわし一人じゃ」

なんと。奥さんも手伝っていたのか。


「奥様は何を売ってらしたんですか?」

「ん?わしの家内か?あやつは『雑貨店』という、よう分からん店を開いとったな」

ん?雑貨店?なんだそれは?


「その『ざっかてん』とは一体なんですか?」

「そうじゃな。なんと説明すれば良いか⋯⋯。普通、あらゆる物を一箇所で売ることはしないじゃろ?」

「そうですね。回復薬を売るなら回復薬専門店を営むのが普通です。その方が回復薬の品質をあげることに専念できますからね」

街の中心部にある人気の店は何かに特化したものが多い。品質が高い店が多いのだ。


「じゃが、あやつが営んだのは『雑多なものを集めて売る』という店じゃ。何にも特化せず、自分の気に入ったものを仕入れて売っとった。やり始めた時は赤字が続くんじゃないかとヒヤヒヤしたもんじゃ。じゃが案外黒字経営でのぅ。スラム街の復興によく貢献しとった」

ん?とてもいいこと聞いたのでは?私の目指す最終形態な気がする。


「まぁ、その店舗も儂の家内が死んだ後、引き継ぐ者がおらんかったからそのまま廃屋になっておるんじゃかな」

バフ爺は苦笑しながら言う。


「あの、私もスラム街の復興のお手伝いをさせてもらってもいいですか?」

私の口からポロリと漏れた。


バフ爺は口をあけてポカーンとしている。無理もないだろう。今日のふらっと訪れた人間が苦しい生活を強いられている街の復興を手伝いたいと言い始めたのだ。


私も最初はスラム街を助けようなど無責任だと切り捨てていた。けれど、話を聞いているうちに、自然とスラム街の子ども達に同情心のようなものを持ってしまったのかもしれない。


自分が元々孤児だったために持った同情心。

師匠に助けられた私が持っていいのか分からないが、それでも子ども達の未来の幅を広げてあげたいと思った。


「気持ちは嬉しいんじゃが⋯⋯、止めるべきじゃ」

「いえ、私がやりたくてやるのです。止められてもやります。お願いします。バフ爺」

バフ爺は難しい顔をしている。だが、止められてもやる気である。


「⋯⋯具体的には何をするんじゃ?」

「その、バフ爺の奥様の『雑貨店』を引き継ぎたいと思います。様々な問題はあるかもしれません。ですが、成功させます。どうか、認めて頂きたい」

バフ爺はさらに難しい顔を深めた。


「⋯⋯⋯⋯分かった。儂に止める権利もないしの」

やりました!営業する権利を勝ち取りました!


「ありがとうございます!では、バフ爺の奥様の雑貨店の敷地とその近辺の敷地を使用しても構いませんか?領主に申請をするべきでしょうか?」

「うーむ⋯⋯。特に要らんと思うぞ。領主もこのスラム街に関しては一切手を出さんつもりでいるようじゃし。なんか言って来たら『スラム街を助けようとしないくせに今更口出しですか?』とかなんとか言ってやればいいじゃろう」

確かにそうだ。少し笑ってしまった。


「しかし、まさかあの『魔女の申し子』様が手伝ってくれるとは思わんかった。これでスラム街も安泰じゃな」

「いえいえ、私にそんな力はありません。少しでもこのスラム街の子ども達の生活が良くなるように努力するだけです」

「それでも周りの住民に与える力は大きい。繁盛間違いなしじゃな」

「今からそんなにハードルを上げられると困ります!」

私があわあわと狼狽え、バフ爺がふぉっふぉっと笑う。


でも、少しでも繁盛するように頑張ろう。

スラム街の孤児たちのために!私の自立のために!


「じゃが、今日はもう遅い。そろそろ降の7の鐘がなる頃じゃろうて」

なんと、もうそんな時間だったのか。


「じゃから、話を詰めるのは明日するのじゃ。じゃが、儂の家には泊まれる所が無いのじゃ。すまんが、宿を取ってくれんかの?」

「勿論です。そこまでお邪魔するつもりではないですので」

すると、ベッドで寝ていたメイちゃんが起きてきた。


ネムネムと目を擦って私の方を向いた。


「お姉ちゃん。もう行っちゃうの?」

「そうだよ。でも、また明日来るからね」

すると、メイちゃんは椅子に座る私に近づいて抱きついてきた。


「行かないで欲しい⋯⋯」

深緑の目でそう訴えてくる。

可愛い。食べちゃいたい。


うぉっほん!失礼。取り乱しました。決してふしだらな事なんて考えてませんとも。えぇ。


ちょっとよだれが出たが、バフ爺には見えていないでしょう。たぶん。

少し興奮してしまった。気を付けよう。


しかし、どうしたものか⋯⋯

連れて帰るわけにも行かないし⋯⋯




⋯⋯⋯⋯あ。いいこと思いつきました!


「あの、バフ爺。メイちゃんを雑貨店の従業員として雇っても構いませんか?」

これでメイちゃんを確保。もとい、雑貨店での労働力を確保するわけである。


「構わんが⋯⋯、決定権は儂ではなく、メイにあると思うんじゃ」

確かに、それもそうである。メイちゃんにきいてみよう。


見つめてくるメイちゃんの目を見る。

破壊力はドラゴンのブレス並みに高い。


「メイちゃん。私が作るお店で働いてみない?勿論、成人するまででいいから」

成人してからはメイちゃんの好きな道を歩んでほしいのである。


「働く!なんでもする!お姉ちゃんのそばに居たい!」

ごフッ⋯⋯。

ちょっと鼻血出たけどすぐに治癒魔法。これで見られてはいないはず。興奮しすぎだ。落ち着こう。


「だ、そうですのでこの子は私が貰います。なんと言おうと貰っていきます」

「わ、分かったのじゃ。雑貨店の話よりも目が本気なんじゃが⋯⋯。よいかメイよ。アリシア様に迷惑をかけず、しっかりと働くんじゃぞ」

バフ爺がメイちゃんに語りかける。


「うん!頑張る!」

とても元気だ。いい事である。

しかし、とても懐かれた。いいことではあるのだが、何故だろう。危機から助けたことによる相乗効果かなにかだろうか。


「では、メイちゃんと共に今夜は宿に泊まろうと思います。他のスラム街の子達には申し訳ないですが⋯⋯」

「それはしょうがないじゃろう。これからの問題じゃ。前から考えとったんじゃが、どうにもいい案が思いつかなくての、アリシア様がいればなにか出てくるかもしれん」

買い被りすぎである。私にそこまでの力は本当に無い。


「では、今日はこれで。あの、おすすめの宿は有りますか?」

「そうじゃなぁ⋯⋯。では『ユンカース亭』に行くといい。ウェイスト地区の中心付近にある。酒場兼宿屋のような所じゃが、ユンカースは儂の知り合いじゃ。贔屓目に見てくれるじゃろうて」

「では、そこにします。今日はありがとうございました」

「いやいや、今日助けられたのは儂じゃ。これからもよろしくお願いするんじゃ」

「では、失礼します」

そう言ってバフ爺の家をメイちゃんと共にあとにする。そのまま街の中心付近にあるというユンカース亭を目指す。


道中メイちゃんのことを色々聞いた。

年齢は多分8歳。正確な誕生日はわからないんだとか。私と同じである。


いつもはバフ爺のお茶畑で手伝いをしているらしい。バフ爺の労働力を奪い取った形になって少し当惑した。後で謝っておこう。


メイちゃんは、お茶をバフ爺の家に運んでいる時に人攫いに襲われたんだとか。その人さらいの死体は道中で残りカスも残らないように魔法で消し飛ばした。


その時に黒ずくめ達の身ぐるみは剥がされていた。スラム街の子ども達が盗ったのだと思うとメイちゃんは言った。馬車すらも解体された後だった。


馬がどうなったのかは考えない方がいいだろう。それだけ飢えているのだ。怪我をしてまでも食料を得ないといけない現状なのだ。


そして私はメイちゃんと共に『ユンカース亭』に辿り着いた。



~ウェイスト地区・ユンカース亭~



ドアを開けてみると、そこは酒場になっていて、カウンターにはくわえタバコの渋いおじさんがいた。


カウンターにメイちゃんを引き連れて歩いていく。メイちゃんは周りの雰囲気に震えているが、私と繋いでいる手をキュッと握りしめ、堪えているようだ。

可愛い。


「あの、バフ爺に紹介されてきたんですけど、部屋は空いていますか?」

渋いおじさんに話しかける。


「あぁ、空いてるぞ。二部屋か?それともダブルベッドの一部屋か?」

「ダブルベッドの一部屋でお願いします。いくらでしょうか?」

「一泊1,000Goaだな。朝食もついている。風呂も共同だが使うといい。降の9の鐘からが女性の時間だ。まぁ、うちに女性客が泊まりに来ることなんて少ないんだがな」

「分かりました。大銀貨1枚ですね」

そう言ってGoaカードから大銀貨1枚を出す。


「ほぅ。Goaカードか。なかなか富豪なようで」

渋いおじさんが訝しげな表情になる。


「えぇ、まぁ。ですが、これからスラム街の復興に費やすつもりです」

「ふむ⋯⋯。なるほどな、それでバフ爺さんはここを紹介したのか」

「普通なら紹介してくれないのですか?」

「あぁ。まずここが宿屋と知っている人間がまず居ない。あの爺さんは信用した人間にしかここを紹介しないからな」

なんと。信用してくれているのか。なんだか嬉しい。


「まぁ、スラム街に金を使ってくれるからという理由だけではないだろう。じゃあ、この名簿に名前を書いてくれ」

「分かりました」

そう言って名簿にアリシア・アウグと記す。それと共にメイと記す。


「ん?アリシア・アウグ?もしや、あの『魔女の申し子』か?」

「はい、まぁ。巷ではそう呼ばれているようです」

「なるほどな。それが決定打か。まぁいい、部屋は好きにするといい。奥の階段上がって204号室だ」

「分かりました。ありがとうございます」

一言お礼を言って階段に向かう。


上がってみると部屋が4つあった。本当に止まっている人が少ないのか。


部屋に入ると大きなベッドが1つ。簡素なテーブルとイス。魔鉱ランタンがあった。シンプルな部屋である。


ベッドにダイブするメイちゃん。私もダイブしたかったが、そこは大人を出す。


「降の9の鐘がなったらお風呂に行きましょうね」

「分かった!お姉ちゃん!」

そう言ってこっちに微笑んでくる。破壊力は天使の閃光以上ではなかろうか。


そしてそのあと風呂に一緒に入り、ベッドに潜り込んで一緒に寝た。


今日は森から出てきて色々なことがあったなと思っていると、疲れがどっと出た気がしてすぐに眠りについた。


おやすみなさい⋯⋯


最後まで読んでいただきありがとうございます!


遅れてしまったのがダメでした。次出すのも明後日ぐらいになってしまうかもしれません。


Twitter始めました!

@Alicia_GS14でお願いします。

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