本当のエンディング
母が居なくなってからパシリが発言した。
「…元勇者様、大変気になったのですが」
「何?」
「母君はどうやって帰ったのでしょうか」
ここは雲の上だ。例え仮に声が聞こえたとしても、来れる筈がない。
「多分、空間ねじ曲げたかなんかじゃない?前に見たことある」
元勇者は投げやりだ。その瞳は疲れきっていた。人間に空間ねじ曲げは無理だとパシリは思ったが、元勇者が可哀想なので、それ以上ツッコミはしなかった。
「ごめんなさい。マオ、喚ばないほうが良かったですか?」
「マオのせいじゃないよ。ありがとう」
元勇者は、マオの頭を撫でた。しかしその手はちょっと…だいぶガタガタ震えており、明らかに無理しているのがよくわかった。
「さぁ、神がどうなったか見に行こうか」
重い扉を開けると、そこには…
「ヒィッ!人間怖い、人間怖い、人間怖い、人間怖い…」
部屋の角で丸くなり、すっかり怯えた神がいた。ドアを開けただけでこの反応である。
「…この短時間で一体何が…」
パシリの呟きに答える者はいなかった。
唯一心当たりがある元勇者は、さすがに神が可哀想だと思ったようだ。
「ねぇ、神様。僕はもう仕方ないけど、僕の子供達は普通の人間にしてくれないかなぁ」
「すんません、すんません、生まれてきてすんません、変なハリセン作ってすんません…は?」
神様はブツブツ謝っていたが、元勇者の願いに、驚いていた。
「やるのは構わんが、よいのか?」
「少なくとも、100年は平和が続くよう頑張るさ。せめて子供や子孫には僕みたいになりたいもの、やりたいことを諦めてほしくないから。本当は、勇者なんて、なりたい奴がなるべきだよ」
神様は驚いた。
「お主、勇者になりたくなかったのか?勇者といえば、憧れじゃろ?」
「うん。僕は、生まれた町で畑でもいじりながらのんびり暮らして、爺さんになって死にたかった。勇者になんかなりたくなかった。だから、アンタを殴りに来たんだ」
「ふむ、わかった。生まれてしまったお主をいじることは出来んが、生まれた子供は普通の人間にしよう」
神様は約束した。
ボケ=ツッコミは優しく笑った。それはマオ以外には滅多に見せない笑顔だった。
「じゃあ、もう許してあげるよ」
勇者は身を翻し、神殿をあとにした。
それから、パシリは元勇者がどうなったか知らない。
マオだけ連れて、消えてしまったからだ。あのハリセンと一緒に。
ハリセンを持った男なんてすごく目立ちそうなのに、全然見つからない。
パシリはいつの間にか代理魔王になって、人間と交流できるようめまぐるしく働いている(モンスターは弱肉強食が基本なので、パシリが魔王になった)
きっと彼らは、
「ところで、いつまでそれ持ってる気ですか?」
「うん。なんか手放せなくて」
元勇者の手には、赤黒いハリセン。
「やっぱりこれ、呪いのハリセン?」
「☆99ですから、可能性はありますよね」
「…………」
とかマオと会話して、なんか冒険してるに違いない。
もしかしたら、マジで農家になっているかもしれない。想像したらあまりに似合わないので、笑ってしまった。
「パシリ様、大変です!」
「どうした?」
「城に異常にでっかいカボチャが届きました!!」
果てしなく、嫌な予感がした。こんなカードがついてましたと渡される。
『なんか、品種改良しようとしたら、失敗したからあげる。ちなみに激マズだよ。がんばれ。
ボケ=ツッコミより』
笑った罰だろうかとパシリは思った。タイムリーすぎる。隠しカメラとかないだろうかと本気で探した。見つからなかった。
1週間頑張って、カボチャはパシリが食べた。カボチャは本当に激マズだった。いろいろ試したがまずかった。スープが一番ましだった。
そして、今度は大根(やっぱり巨大)が送られてきた。パシリは変に改造しないで普通の野菜を作れよ、と思った。
パシリの受難は続くようだ。
パシリは日記をつけていた。いつか物語になるといい。
勇者という肩書きを嫌った、元勇者の物語。
ハリセンを片手に戦う、変な勇者の物語。
何百年も後で、この日記が資料となり、人とモンスターの争いを初めて止めた真の勇者として、ボケ=ツッコミの伝説は皮肉にも有名になるが、それはまた別のお話。
これでれじぇんどおぶツッコミはおしまいです。
実はこの後ショートとれじぇんどおぶパシリがあったのですが、掲載するかは不明です。




