旅立ちの日
少年の16歳の誕生日。
冒険が、始まる。
※この作品はくっだらないギャグであります。軽い気持ちで読むことをおすすめします。
少年はいつも通りに自分の部屋のベッドで寝ていた。鳥のさえずりが聞こえる。どうやら朝らしいが、少年は二度寝しようとした。
「起きなさい、私の可愛いぼうや」
少年は、母の声で目が覚めた。二度寝したかったが仕方ない。とりあえず気になった部分を訂正した。
「母さん、オレはもう坊やって年じゃないけど」
少年は16歳。この国で本日成人となったのだ。とりあえず反射的にツッコミを入れた。母は笑っていたが、全く瞳は笑ってなかった。そして物凄い殺気を感じ、本能的に少年は悟った。
お母様に逆らってはいけない。
「おはようございます。素敵な朝ですね、お母様」
少年は丁寧に挨拶し、頭を下げた。母は満足そうに頷いた。よかった。モーニング死は回避したようだ。
少年は母が変な物を手に持っているのに気付いた。
「それ、何?」
「見てわからない?ハリセンよ」
ハリセンなのは、見て解る…が、少年が聞きたかったのは、朝からなんでそんな品を持っていたかである。叩き起こすつもりだったのだろうか。寝起きがよくて良かったと思った。
「ああ、今日が来てしまったのね。かわいいお前に辛い思いをさせるのは悲しいけど、せめてこれを持っていきなさい。我が家に伝わるハリセンよ」
母は己に酔っており、少年の話を聞く気がないようだった。いつものことなので仕方ない。
とりあえず気になったので、少年は質問した。
「うちはお笑い旅芸人だったの?」
そういえば、親戚に旅の遊び人のオッサンがいたことを思い出すが…思い出すと精神的にものすごく疲れるので少年は記憶から無理矢理抹消した。
代々伝わるハリセンとはどんな物だろう。母からハリセンを渡される。
「いいえ、うちは勇者の家系よ。貴方はこれから魔王を倒しにいくの」
「ふっざけんなぁぁぁぁ!!」
少年は目にも止まらぬ早業でハリセンを使い、母の顔面にツッコミを入れた。素晴らしくいい音がした。
「ハリセンで魔王が倒せるか!無理じゃぁぁ!!」
これがせめて、金属とかならまだほんの少しわからなくもない、が…明らかに紙っぽい…でも紙ではない。本当になんなんだろう、これ。少年はしげしげとハリセンを確認したが、よくわからなかった。
「お母さんに対して、その口の聞き方は何かしら…お母さん、育て方間違っちゃったかな?」
ハリセンで顔面をどつかれた母は笑顔で殺気を放っている。顔には綺麗に横線が入っていた。
殺 ら れ る 。
少年は死を覚悟した。やはりモーニング死は回避できなかったらしい。とっさにツッコミしてしまう己の性質を呪った。
「ここでお母さんの制裁を受けるのと、旅に出るの…どちらがいいかしら?」
少年はまだ、死にたくなかった。やっと成人となったばかり。やりたいことは色々とある。
「喜んで旅に出ます」
そう、魔王と戦うより目の前のにこにこしていて華奢なのに異常なまでの戦闘力を持ち、冷酷非道で残虐な母と戦うほうがキツいと少年は判断した。
こうして、少年は勇者となり、ハリセンを持って旅に出ることになった。
脅しに屈したとも言う。




