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星の底の世界で  作者: 早朝さんぽ
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【第四話】異世界からきた男

教会、礼拝堂の椅子に、中年で髭をたくわえた一人の男が座っていた。


ここに来てから、青い空を見ていない。夜に星は見えることもあるが、日中、太陽はいつも厚い雲に覆い隠され、ぼんやりと形が見えたり、見えなかったりする。

風景は十九世紀後半といったところなんだろうか。通信は公衆電話がある。遺伝子医学が発達しているらしい。獣のような姿をした人をたまに見かける。しかしトラブルの種にもなっているようなので、この世界ではきっと気難しい話だ。そしていちばんの違いは、地球の形。

丸くない。いや、とてつもなく巨大な丸の一部なのかもしれない。

世界の地図を見て驚いたが、どうやら宗教画の類でもないらしい。

空の上に天使の世界、下に魔物の巣くう黒い海・・世界の中心には巨大な柱がある。

言葉は、もといた世界のいろいろな言葉が混ざったような・・コミュニケーションがスムーズとはいえないが、意外とわかるものだった。

そして、俺のいた世界の話をすると決まって、『星の世界』の話だと言われた。

天使の世界のさらに上にあると言われている、星の世界。きっと宇宙のことを言っているのだとは思うが、ロケットが無いためどうやって行くのかはわからない。

遠くからでも見えるあの巨大な柱は、宇宙まで続いているのだろうか・・?


「忘郷者の方、故郷へはきっと帰ることができるでしょう。天使様はあなたのことも、見守ってくれていますよ」

司祭が話しかけてきた。

この世界では、『天使』が信仰の対象となっているようだった。天使の姿は見えないが、どこにでもいて良い行いも悪い行いも見ている、と。

「忘郷者、か」

この呼び名の意味を知ったとき、いい気分ではなかった。召喚術に偶然巻き込まれ、不明な要因により送還ができない者。故郷を忘れ、帰る場所を見失った者。

忘れるわけが、ないだろ・・っ!!

心の中で、男は震え、叫んでいた。


ノエル、ミュカ、リンゼの三人が、司祭を訪ねてやってきた。


指輪を見せられた司祭様は、快くミュカに従った。

「書庫の鍵を持ってまいります、こちらでお待ちください。それから・・」

司祭様が続けて言う。

「お待ちの間、よければあの方のお話を聞いてさしあげてください。忘郷者で、星の世界から来たと言っているのです。お気の毒に・・たくさんの人と関わることがきっと必要でしょう」

星の世界から・・?夢の答えあわせではないが、僕は興味をそそられた。

「こんにちは、良ければ話を聞かせてください。

僕なんて、星の世界の夢を見ることがあるんです」

男は驚いたようだったが、すぐに話に乗ってきた。


俺は、まさか自分と同じ世界から来た人にこんなに早く出会えるなんて、と少し警戒した。『忘郷者』を哀れんだ嘘かもしれない。その夢の話とやらを聞いてからだ。

・・・少年の話を聞いているうちに、俺は自分の目から涙が溢れていることに気がつかなかった。少年の夢には、俺の知っている最新の自動車やテレビゲームらしいものが確かに登場している。

故郷に一人残してきてしまった、息子との思い出が溢れて止まらなくなる。

「俺は・・俺は、必ず・・必ず、帰る、帰るからな・・!!エディ・・!!」


ノエルは、困惑しながらも少しもらい泣きしそうだった。すると洪水のような涙を流しながらミュカが話しかけてきた。

「ノエル君、星の世界も、六次元魔法も、きっと、きっと見つけよう、私たちの手で・・!」

うわすごい泣いてる、とノエルは思った。

書庫の鍵を持ったまま見守る司祭の横でリンゼも、二人の優しい仲間のことを見つめていた。

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