3.姫の護衛隊
消化回です。
馬車に揺られること数十分。
俺たちはリリさんのお城の敷地に着いた。
「すごい大きいな……」
思わず声が漏れる。
敷地の奥にあっても巨大だということが一目でわかる立派な城だった。
警備の兵士たちに出迎えられ、馬車はどんどん奥へと進んでいく。
しばらくすると降りるように言われ、リリさんとアランさんと共に城の中を歩くと目の前に大きな扉が現れた。
「ここが王室です」
ごくりと唾を飲み込む。
なんだか校長先生に会うような緊張感がするぞ。
「お父様、ただいま帰りました」
「おお、リリか……ん? なんだねその少年は」
「実は……」
リリが、かくかくしかじかと事情を話した。
「それはそれは娘がたいへんお世話になった。 礼を言うぞ修二くん」
「いえ、たまたまそこに居ただけですので」
「しかし、なにか礼をせねばならんな……。 おい、もてなしの料理を今から作ってくれないか」
王様がそこにいたメイドさんに注文すると、彼女らはささっと部屋から出ていった。
何が出てくるのだろうか? 楽しみだ。
「お父様!」
リリが唐突に叫んだ。
「なんだ? 大声を出して」
「修二さんを私の護衛隊にお誘いしてもよろしいでしょうか!」
な……なんだって? 護衛隊?
俺は思わず首を傾げる。
「見知らぬ私を助けてくださったり、彼はとても勇敢な戦士です! それにまだ学生の身にして魔術のみで大男を追い払うという実力者でもあります! 私から修二さんをスカウトしたいんです!」
「リリがそこまで言うとは、さては別の意味もあるな?」
「……っ!」
頬を赤らめるリリ。
「まあよい、ワシは歓迎だが修二くん、君は?」
色々待ってほしかったが、止める間もなく話が進んでいってしまった。
が、ここで断ってもひとりで彷徨うだけだな。
ふむ、だとすれば答えは最初からひとつか。
「はい、よろしくお願いします」
ぱあっとリリの表情が明るくなる。
「ちょっと待ってください!」
怒声が響き渡る。
アランさんがこちらを睨み付けている。
なんだか大変なことになってきたぞ。
「私は認めません。 警備兵ならともかく、いきなり姫様の護衛隊だなんて学生の彼にそんな実力があるようには思えません」
こちらへずかずか歩いてくる。
やれやれ、面倒なことになりそうだ。
「やめなさい! アラン!」
リリが制止するもアランは止まらない。
俺の目の前に立ち、こう言い放った。
「決闘の準備を。 私に勝ったら認めましょう。 受けて頂けますよね?」
はあ、とため息をつく。
まったく、なんて面倒なやつなんだ。
「いいですよ。 喧嘩を売られたんじゃこっちも黙っていられないんでね」
俺は不敵に笑ってみせた。
次回バトルです。