2.リリという少女
主人公とヒロイン回です。
「すごい!!」
少女が感嘆の声を上げた。
「そうかな? これくらい何でもないよ」
「おおおお前、何しやがった!」
塗りたくったのはただの墨液なのですぐに立ち上がる大男。
まあ、そうなるな。
「その黒いのはお前に呪いをかけたんだ。 はやくここから去って顔を洗わないと呪いで死んでしまうぞ」
「なんだと!? うわあああああああ!!」
真っ赤な嘘なのに信じたようだ。
連中は墨液も知らないようだし、なかなか上手な"でまかせ"ではないだろうか。
踵を返して一目散に走り出す大男。
それに続いて連れの連中も走って逃げていった。
「やれやれ、まあこんなところかな」
「ありがとうございました……! あなたは魔術師の方なんですね?」
その少女が嬉しそうな顔をして近寄ってきた。
「うーん、魔術師でも何でもないただの学生なんだけどなぁ」
「魔術を勉強している学生さんなんですね!」
あーいや、と説明しかけたところでめんどくさくなってやめた。
はて、この子は何者なのだろうか。
「私はリリといいます。 すぐ近くの王の娘で、少し散歩をしていたらあの男達に追われてしまって……。 あなたのお名前は?」
「ああ、俺は墨田 修二っていうんだ…………って王様の娘!?」
「まあ! すてきなお名前!」
満面の笑みを浮かべるリリという少女。
これを無視していたら俺が処刑されていたかもしれないと思うとゾッとする。
「あなたにお礼がしたいのですが、この後はお時間ありますか?」
「ああ、まあ、色々聞きたいこともあるし大丈夫だよ」
「ふふ、嬉しい!」
頰を赤らめて手を合わせるリリ。
ここがどこだか聞くためにも付いていくのが得策だと思った。
「姫様~!!」
「アラン!」
甲冑を着た男が走って来た。
「姫様! 勝手に出歩かれては困ります! あなたはドーラ王国の姫なのですよ! ……なんですかこの男は」
俺を睨み据えるアランという男。
「やめなさい、アラン、この方は私を助けてくれた恩人です。 今からこの修二さんにお礼をしたいので、お城までの手配を」
「は、はっ! 了解しました」
アランは慌てて近くにいた部隊と合流し、色々話し合いが行われた後に俺は馬車に乗せられる。
馬車の広さには余裕があるのに、リリさんは俺にぴったりとくっ付いていたがそれは気にしないことにした。
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