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ミネラルウォーター『爽やかブルース』

作者: 蒼井真之介
掲載日:2017/07/27

思いついて書いた小説です。ちょっぴり学ぶべきことがあるかもしれませんが、楽しんでくれたら嬉しいです。

改めて電話が嫌いになった理由をこれから話すよ。俺は電話が嫌いだけど固定電話を自宅に備えてはいる。万が一の緊急事態や天変地異の連絡を教えてくれたり、念のために、こちらからも知らせる連絡手段のために置いていた。電話はどこの家にもあるはずなので、俺、個人としては、単なるインテリアとして電話を捉えている。

これから話すことは今から2日前の話だ。昼頃に見ず知らずの人間が、どこで調べたのかは分からないが電話が掛かってきた。



『はい、村瀬です』


『わたくし、ウォーターズという天然水を扱う会社の水沼と申します。お宅のお水はいかがですか?』とセールスの電話が掛かってきた。



『水は水道水で十分だよ』と言って俺は電話を一方的に切った事があった。しばらくして、また電話が掛かってきた。



『はい。村瀬です』



『先ほどお電話致しました水沼です。水道水は危険な物質が含まれている危険性がありますよ』


『例えば?』


『それは言えません』


『じゃあ、言うなよ』

と言って俺はまた切った。しばらくして、また電話が掛かってきた。


『はい』


『川田さんですか?』


『いえ違います』



『あっ、間違えました』

と間違い電話が掛かってきたが、どうも水沼っぽい声だった。

しばらくして、また電話が掛かってきた。

『はい』


『内藤さんのお宅ですか?』

『違います』


『あっ、間違えました』


『おまえ、水沼だろ?』


『えっ!?』



『水沼だろ?』



『違いますよ』

と言って切れた。

水沼だな。次、掛かってきたら、ミネラルウォーターは要らないと言おう。

10分後、また電話が掛かってきた。


『水沼か?』


ガチャン!ツーツーツー。

ほとんどイタズラ電話になっているよな。


ウォーターズという会社を調べたら実際はしていた。水沼の存在だけが怪しくなってきたな、と俺は思った。

しばらくして、また電話が掛かってきた。


『はい』


『水沼です』


『どうした?』




『村瀬様、ミネラルウォーター、1ケース10本で良いので、買って頂けないでしょうか?上司が今月のノルマをクリアしなかったら、水沼の首を真っ先に切る、と言われてしまいまして…うぇん(涙)』


『いくらするんだ?』



『今、村瀬様の自宅付近にいるのですが、今からですね、お値段も含めまして、詳しいお話を、ご説明に、お伺いしてもよろしいでしょうか?お願いいたします!』哀願する水沼が哀れに思い始めた俺は考えた。



『分かったよ。今から来い』


『ありがとうございます!』水沼は涙声になっていた。


5分後、



ピンポーン♪


「はい」


「水沼です」俺は玄関を開けた。水沼は2ケースのミネラルウォーターの箱を抱えていた。


「話だけは聞くよ」「村瀬様、こちらの天然水当社が発売しておりまして『爽やかブルース』という商品名です。バナジウムやミネラルが豊富に含まれていまして、清少納言が飲んでいたらしい天然水です」


「らしい!?」


「はい。エルヴィス・プレスリーが来日した時には、当社のバックアップの元、お風呂のお湯代わりとして沸かしたらしい天然水です」


「エルヴィスは来日していないよ」


「えっ?」


「来日していない」


「あわわ、間違えました。ジミーです。村瀬様、ジミーです」


「どこのジミーだ?」


「ジェームス・ディーン」


「帰れ!!今すぐ帰れ!!」



「また来て良いですか?」


「ダメだ」



「上司が、上司がぁ!」



「ちなみに、1ケース、いくらするんだ?」



「期間限定商品でして80万円です」



「水を限定扱いにするんじゃない!あきらかに、詐欺だな。嘘八百を並べて人を陥れて騙す仕事は仕事ではない」



「村瀬様、私は新婚でして可愛い嫁がいます」



「ほ〜う。いつ結婚したんだ?」



「1週間前です」



「左手を見せろ」



「ダメです!」



「帰れ!!今すぐ帰れ!!」

と俺は水沼を玄関の外に放り出した。俺はミネラルウォーターを抱えた水沼の左手を見た。水沼は結婚指輪をしていなかった。 俺は玄関の扉の覗き穴を見た。水沼は泣いていた。いや、これは確実に嘘泣きだろう。水沼は、しばらくして、ケロッと普段の顔に戻してからスマホで時間を確認して、踵を返した。



今朝の朝刊の片隅の記事に『ミネラルウォーター詐欺師逮捕』と小さな記事が載っていた。



内容は



『昨夜、午後7時頃、元・警察官の田部良勝さん(75歳)宅にミネラルウォーターのセールスに来た水沼増男(33歳)が田部さんの通報により詐欺容疑で逮捕された。ミネラルウォーターは1ケース10本で120万円もしたとのこで、あまりの高額に驚いた田部さんが、昔、使用していた手錠をその場で水沼容疑者に掛けて緊急110番をした。駆け付けた警察官によると水沼容疑者は「俺は明日、入院中の母の大腸の移植手術に立ち会わなければならないんだ!だから逮捕はやめてくれ!」と泣きながら言い、警察官が不審に思い、水沼容疑者の自宅に電話をしたところ、元気な声で母親が電話に出たので、警察官が母親に事件の顛末について話をした。警察官は母親に「今、何をしていましたか?」と聞くと焼きそばを食べながら、クイズ番組を見ていたとのこと。田部さんは水沼容疑者に手錠を掛けた時、「俺をなめたらイカンよ!」と言ったとのこと』




私は普段から愛飲しているミネラルウォーターを飲みながらこの朝刊を読んだ。



やれやれ。

イカれた奴がいる。



つまり、俺が更に電話を嫌いになった理由がこれなんだ。





ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[一言] 電話のやり取りに思わず笑ってしまいました。この水沼さん営業に向いていないなぁ。と思っていたら、あ~あ、そう言うことだったのかぁ…。 村瀬さんの電話の対応さすがでした。 詐欺には気を付けない…
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