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『やるなやるな』といわれるとやりたくなるのが人情だ。

「いいか?絶対に勝手に外に出るなよ」

「ハイハイ」


「絶対だぞ」

「ハーイ」


「これでもし勝手に外に出てるのを見付けたら足に鎖を付けるからなもちろん長さを調節して部屋の中では移動出来るようにはするつもりだがああそうだ足だけじゃ心配だから手も首も繋いで」

「いいから出掛けたら?」


れんほう草(まんま、ほうれん草だった)を練り込んだもっちりパンを頬張ってた私は、まだまだ注意し足りないらしい青髪くんを促してあげる。

みんな、私をいくつだと思ってんのさ。

ちなみに、私をお子ちゃまだと一番思っているらしい後輩は指切りげんまんまでして出掛けて行った。

『針千本飲ます』の部分がやたらと早口だったけど、奴は私に何を飲ませる気だ。生マーピン(ピーマン)か。

…子どもじゃない私でも、生マーピン千個分の苦みは耐えられる自信がないんだけど。


「わかったな、絶対だぞ」

「ハイハイ、わかったわかった」


「………不安だ」

「…いいから、仕事いってらっしゃーい!!」


魔王討伐の旅に出掛けてるはずの私が、大神殿から仕事を任されてる二人にくっ付いて行けるわけがないからさっさと行ってくれ。

幼いお子ちゃまを家に置いていくお母さんみたいな態度で、後ろ髪引かれまくりな青髪くんはやっとこさ出掛けて行った。


『オカーサン』か。

私は獣人さんのことを思い出す。

二人と一緒に過ごしている内に、あの魔王討伐のための旅は夢だったんじゃないかって考えることが多くなった。

王族である姫さまが存在してるのは国民全員知ってることだけど、それ以外の剣士さん、エルフくん、そして獣人さんは私が作り出した空想のキャラクターだったんじゃないかって、さ。


だってさ、あんなすばらしいおっぱいと腹筋と、あと魅力的な耳と尻尾ともふもふを持った男のヒトなんて私の思想そのままだよ!?

しかもぶっきらぼうな口調の割に、面倒見が良くて優しいなんて完璧超人、作りものじゃなければ存在しないって。

しかも、そんなヒトに『好き』っていっただけで——…………。


「きゃー!!」


私は獣人さんにされたあのことを思い出して、恥ずかしさのあまり床を転げまわる。

てっきり私を溺死させるつもりだと思ってたけど、あれってディープなちゅーだよね?

ヤバい、私大人の階段上っちゃったの?


ゴロゴロ転がってそのことを思い出した私だけど、今はそれが夢だったんじゃないかってことを考えてる最中だと思い出してピタリと止まる。

…あんなエッチな夢見るってことは、私って相当欲求不満だってこと?

そのことに気が付いた私は、上半身を起こした状態で項垂れた。

よかったよ、今二人がいたら大事故が起こってただろうから出掛けてくれて本当によかった!


「…あっ、でも。本当は獣人さんがいて、夢だと思ってたあのことが現実ってこともあり得るか」


そうしたら、私が欲求不満じゃないって証明になるよね。

だったら、私が取る行動は一つ。


いそいそと出掛ける準備をした私は、きょろきょろ周囲を見渡して二人がいないことを確認してから開かずの間と化していたドアを開けて、廊下を爆走して外へと飛び出した。

二人がさんざん外に出るなっていってたけど、何度もそんなに念を押されたらやりたくなるのが人ってもんだよね?

まあ、どうせ二人が帰って来る前ぐらいには帰る予定だから遠くには行かないし、そう簡単にいるかどうかもあやふやになっちゃってる獣人さんが見付かるとも思えないからさ。

だから、書き置き一つ残すことなく、私は出掛けてゆくのだった。

おしおきフラグ。

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