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まさか、この年でお子ちゃま気分を味わう羽目になるとは…(遠い目)。

「ただいまー」


「おかえりー!」


昼食食べて、おやつの時間にドライフルーツ入りの甘いパンを食べて、夕飯食べてから二人で勉強して、夜食食べ終わった頃かな。

玄関から聞き覚えのある声が聞こえたから、反射的に返事する。

トイレはこの部屋にあるから開かずの間と化していたドアが開いて、ひょっこりと顔を覗かしたのはふわふわした純白の髪を持つ後輩く…


「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!」


「どうしたっ!?」


どうしたって聞いて来る意味がわからないよ、青髪くん!

キミたった今、白いはずの髪の毛を赤く染めた後輩くんの横通ってこの部屋に入って来たよね!?

見ればわかるよね!この異常さぐらいは!!


「…何もないじゃないか。まったく、驚かせて」


「先輩ったらもー。そそっかしいんだから」


「私のせいっ!?」


呆れた眼差しが二人かから注がれる。

ちょっと待って!なんか納得いかないんだけど。


「それ、まさかち」


「おい、汚れくらい落とせ」

「あっ、忘れてたー」


差し出されたタオルを受け取ってごしごしと顔を擦る後輩と、その後を確認して頷く青髪くん。


「キレイになったよー」


間延びした後輩が私の元へてけてけやって来ると、にっこりと笑う。

でも待って、髪の毛はそのままになってるから!!


「ちょっと待ったぁ!!」


「「?」」


何で二人共疑問に思わないの!?

仕方ない、ここはお姉さんとしてキレイとは何かを教えてあげなくては!!


「お風呂入るよ!」


「「!!」」


と、いう訳でお風呂に直行する私は後輩を掴んで引き摺り込んだのだが。


「あひゃひゃひゃひゃっ」


「どこかかゆいとこありませんかー?」


「あひゃひゃひゃひゃっ」


全部かゆい!っていうか、くすぐったいよ!!


何故だろう。

キレイを伝授するのは私のはずなのに、風呂場(これも部屋の中に配置されてた…ここってアパートの一室?)に引き摺り込んだら攻守逆転してた。

『はい、ばんざーい』の一言で、寝巻代わりのワンピースを頭から脱がされて、悲鳴を上げてうずくまる私はいつの間にか全裸になってた後輩に抱き上げられて風呂場のイスに座らされる。

ちょっ、前隠してよ。

ついでに、目を隠したり胸を隠したりと忙しい私は、気付けばおパンツも脱がされてた。


そんでもって後輩は、全身くまなく洗いはじめたんだ。

…私の身体を、石鹸を泡立てた自分の手で。


「う゛う゛ぅ゛っ…。もう、お嫁にいけない……」


髪の毛は丁寧な仕事に満足だけど、足の指の間も皺も、本当に余すことなくキレイに磨かれた私は両手で顔を覆って涙を流す。

…どこの皺を丁寧に洗われたかは、例え魔王に脅されてもいえない。


「いーんじゃないの?お嫁に行かなくても」


「よかない!!」


後輩は平然とそんなことをいったけど困るわ!!

そりゃ、余計なものが下に付いてるから本当はムリだってことはわかってるけどさ…。


「なんでー?」


「そりゃあ、私だって家族がほしいし」

「ボクと一緒にいるんじゃダメ?」


「へっ…?」


慌てて振り返れば、後ろに片膝を着いた後輩が下から見上げて来る。

ずっと背が高くなった後輩を見下ろす機会はもうなかったから、銀色の無垢な眼差しが予想以上に近くて彼にいわれた言葉以上に驚いてドキドキした。


「あなたは、ボクとずっと一緒にいるのはイヤ?ボクは、ずっとあなたと一緒にいたい。片時も離れたくないの」


「………」


身体付きも顔立ちも大人の男の人になり掛かっている後輩だけど、まるで子どもみたいだ。

そんな彼にとって、私が魔王討伐という重大任務とはいえ、黙って旅立ったことが堪えていたんじゃないかと思えば心が痛んだ。

周囲から浮いていて、関わるのは私と青髪くんぐらいしかいないから、あの大きな大神殿の中でずいぶんと寂しい思いをしていたのかもしれないね。

そう思えば、子どもじみた『ずっと一緒』という言葉も…。


「だって、ボクがいない間におもしろい行動を取られたら見られないもん」

「台無しだよ!!」


思わず怒鳴り付けた。

本当に台無しだよ、後輩!!ここはしんみりとかほんわかするシーンだろうに!!

しかもよく考えたら、全裸でこんなことしても滑稽以外の何ものでもなかったよ!


「おバカ!このおバカ!!」


「あはは。よいしょ」


「笑いながら抱き上げないで!ちょ、何でこのまま湯船につかる…待って!なんで膝の上なの!落ちないからそっちに座らせて、ちょっ、まっ!」


アパートの一室みたいな間取りのわりに、何人でも入れそうな大きなお風呂。

横に座らせくれればいいのに、後輩は当たり前のように私を自分の膝の上に座らせる。

しかもお互いに、何も身に付けてない状態で、だ。


もちろん、後輩の目に下心はまったくこれっぽっちもない。

と、いうことはこれは完全なる子ども扱い…っ。


「わたしはこどもじゃないぃぃぃぃぃぃ!!」

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