神父様、風邪を引く。前編
サヴィラは徐々に覚醒していく意識の中で毛布を手繰り寄せて体を丸めた。
何だか部屋が薄暗いな、と寝ぼけた頭で考えていると、カーテンの向こうからザァザァと雨の音が聞こえて来た。その音だけで寒いような気がして、サヴィラは掛け布団の上に広げてあったガウンを手繰り寄せて布団の中でもぞもぞと袖を通した。
まだ秋の半ばに差し掛かるか否かという所で、人族や獣人族なんかはここまで寒さを感じないのだろうが、有隣族であるサヴィラからすると雨など降ればもう寒くて嫌になる。有隣族は、暑さと寒さが極端に苦手だ。さらに言えば寒いのは本当に嫌いだ。冬眠したくなる。もっと北の方だと有隣族は本当に冬眠する。
「おはよう、テディ」
「ぐー」
ごろりと寝返りを打って布団から顔を出しベッドの脇で眠っていたテディに声を掛ける。熊系の魔獣であるテディは、冬眠する習性を持つが、ここは町で冬眠する場所はない。森に帰る気配もないので、寒さで弱らないように今は屋敷の中に居る。大抵、サヴィラの傍にいるのは、サヴィラがこの屋敷の誰よりも早く暖炉を使うのを知っているからだ。一週間ほど前のやけに冷え込んだ日に使ったのをちゃんと覚えていたらしい。
人とは貧困に慣れるのには時間がかかるが贅沢を覚えるのは早い。貧民街に居た頃は、どれだけ寒くてもネネやルイスたち家族のため、日々の糧を稼ぐためと言い聞かせて薄着でも耐えられたが、今では父が仕立ててくれたこのガウンに甘え切っている。
サヴィラは意を決して起き上がり、もこもこの室内履きに足を入れ、ベッドから降りて暖炉に近付いていく。脇に置かれていた薪をくべて呪文を唱えて火を熾す。サヴィラはいつも部屋が暖まってから着替えるのだ。暖炉に火を入れれば、すぐにテディがのそのそとやって来て、暖炉の前で丸くなった。
サヴィラの部屋は、三階にある日当たりの良い南向きの広い部屋だ。父の部屋から一部屋挟んでいて間に挟んだ部屋は、ミアの部屋だが幼いミアは父のマヒロと一緒に寝起きしているので使ってはいない。
きっと本当は父は、書斎の隣の部屋ではなくて奥にある主寝室を使うべきなんだろうけれど妻が居ない今は使う理由もないと書斎の隣の部屋を父は寝室として使っていた。
サヴィラの部屋には、大好きな小説が詰まった大きな本棚が二つと天蓋付きの大きなベッドが一つ、テディ用の特注で作ってもらった大きなクッション。暖炉の前には座り心地の良いソファセットがあり、クローゼットとキャストが一つずつ、パーテンションで区切られたスペースには勉強をするためのデスクがある。全てサヴィラがマヒロとミアとリックと一緒に選んだものだ。父のお眼鏡に敵った品々はどれもこれも素晴らしい使い心地だが無論、値段も高い。だが父曰く「金がある人間が金を使わないと経済は回らない」とのことで彼はお金を使うことに躊躇いがない。時々、躊躇いがなさ過ぎて困る時もあるが。
漸く部屋が暖まってきてサヴィラはクローゼットから取り出した服に着替える。無論、長袖長ズボン、ベストにジャケットまで完備だ。
コンコン、と控えめなノックの音が聞こえて、どうぞ、と答えて振り返る。
顔を出したのは、父の護衛騎士のリックだった。サヴィラが兄のようにも慕う人である。
「自分で起きられたんだね、今日は雨が降って寒いから先に暖炉をと思ったんだけど遅かったみたいだ」
「まだ冬じゃないから、大丈夫。何持ってるの?」
「これは白湯だよ。私の仲間にも有隣族がいて寒くなると毎朝、誰かどうか彼に白湯を飲ませてたんだ。だから、サヴィにもと思って」
はい、と渡されたマグカップをお礼を言って受け取る。じんわりと手に白湯の温かさが染み渡る。ふーふーしながらゆっくりと飲む。ただのお湯だがそれでも体を内側から温めてくれる。
リックはとても気が利いて優しい。それに背も高いし、顔だって父ほどではないが優しさを感じさせる整ったもので、その上、騎士としても優秀だ。
「父様とミアは?」
「マヒロさんは、教会に居るよ。朝一で書類を片付けていたからね……一か月後に収穫感謝祭が迫っているからあれこれ忙しくて。ミアちゃんは、起きて下でティナさんたちのお手伝いをしているけど」
言いながらリックが部屋のカーテンを開けてくれた。大きな窓の向こうでは、雨に霞んだ景色が広がっていた。何だか一日中、降っていそうな雨だ。サヴィラは白湯の入ったマグカップを手に窓辺に行く。
サヴィラの部屋は三階だから、広い庭がよく見える。ここへ来たばかりの頃は、荒れ果ててどうにもならなかった庭もルーカスとその弟子たちの手によって段々と素晴らしいものになっている。
薔薇園に薬草園、噴水をメインにしたエリアや遊び心溢れる迷路まである。テディの為のエリアもあってそこには背の高い大きな木がある。元々あったものだが、枝葉を整え、肥料を与えてルーカスが手入れをしている木は見違えるほど生き生きとしている。紅葉する種類のものだと言っていたから、もう少し秋が深まったらきっととても綺麗だろう。
「そういえば、シラは? 今日は元気?」
「んー、プリシラさんは今日も体調が優れないみたいで、部屋の方で寝ているよ」
そう言ってリックは困ったように眉を下げた。
プリシラはここ数日、風邪を引いて寝込んでいるのだ。熱はそれほど高くないのだが、胃腸に来る風邪らしく吐き気と胸やけが酷いらしい。
「これからシラだけじゃなくて、クレアだって風邪を引くかもしれないし、ティナもいてくれるけど、ティナの仕事は受付嬢だからね。シラに無理をさせ過ぎていたのかもって父様が落ち込んで、新しく人を雇うべきか悩んでたよ。」
「まあ、マヒロさんは、繊細な所があるからね」
「やっぱりメイドに乗っかられたのは父様でも堪えるんだね」
ごほっとリックが咽た。
「だ、大丈夫? 水飲む?」
サヴィラは、空になっていたマグカップの中を呪文を唱えて水で満たし、せき込むリックに渡した。リックは、唾が気道にでも入ったのか、ゴホゴホいいながらカップを受け取り、大きく息を吸ったり吐いたりしながら、ゆっくりと水を飲んだ。
「マ、マヒロさんに聞いたの?」
「え? うん。父様が、人を雇って自分は兎も角、俺の上に乗っかる女や男が出ても困るって。俺、一応、実家に居た頃、絵図付きで性教育は受けてるからね。貴族にとって最重要項目だし」
「待って、男って何?」
リックが頬を引き攣らせる。
「……イチロには内緒って言われたけどリックならいいか。父様、男にも襲われたことがあるって言ってた。その男は物理的に性別を変えて再起不能にしてやったって言ってたけど」
リックがそっと自分の股間を押さえた。サヴィラだって男だ。気持ちは分かるし、父から話を聞いた時は同じことをした。
父のマヒロは、女性には優しいが男には基本的に容赦の無い男である。
「マヒロさんは人を惹き付ける方だからね。クロードさんが、あれこれと紹介はしてくれているんだよ。でも未婚女性は絶対に駄目だって断っているんだよ。これだけの屋敷をプリシラさんとクレアさんだけど管理するのはどうやっても無理だから、マヒロさんも人を雇う気はあるみたいなんだけどね……イチロさんはマヒロさんの判断に任せるって言ってたけど」
そう言ってリックは苦笑を零して肩を竦めた。
リックやエドワード、イチロも休みの日は屋敷のことを手伝ってくれているが、基本的に彼らは多忙だ。マヒロに至っては何の役にも立たないし、寧ろ仕事をしていてくれる方が屋敷は安全だ。何せ先日もマヒロは暖炉掃除をして部屋中に灰をまき散らしてイチロとリックに説教を喰らって、ミアにまで怒られていた。
「まあ、そういう訳だから、当分の間は鍛錬を控えて私とエディも朝ご飯の仕度を手伝うことになったんだ」
「なら、俺も手伝う」
リックが、良い子だね、と笑ってぽんと頭を撫でて来るのがむず痒い。素直にそれを喜ぶには気恥ずかしくて、当たり前だよ、と返してサヴィラはリックに背を向け歩き出す。
「テディ、下に行くよ」
「……ぐー」
返事はしたが動く気配はない。
山みたいに大きなテディは、どうやら暖炉から離れたくないようだった。
「テディ」
「……グー」
渋々、テディが起き上がる。サヴィラは呪文を唱えて暖炉の火を消して、テディとリックと共に廊下へ出た。
広い廊下は薄暗くて夏でもひんやりとしているのに、これから冬になるにつれてますます寒くなるかと思うとそれだけで嫌になる。
「冬なんかなくなればいいのに」
「ははっ、さっき話した彼もよく同じことを言っていたよ」
「その人、冬の見回りとかどうしてるの?」
「懐炉を抱えて、マフラーをぐるぐるまきにして、制服の下にセーターも着こんで行ってるよ。冬はそうやって着込めるし、コートも着用できるから良いけど、夏がね」
「……父様の格好も大分暑苦しかったけど、リックとエディは本当に暑そうだった」
騎士団の制服は、きっちりかっちりしている。下はトラウザーズにブーツ、上はワイシャツ、ベスト、ジャケット、スカーフ、そしてマントだ。時折、熱中症でぶっ倒れる騎士もいるほどだ。その騎士は警邏中、偶然、買出しに出ていた父とサヴィラの前で倒れたので父が担いで近くの詰所に連れて行き、治癒術師が来るまで面倒を見たのだ。父は「来年はどうにかしたほうがいいな」と呆れたように呟いていた。
「でも私たちは、マヒロさんたちの優しさで部屋の中ではワイシャツ姿だったからまだいいほうだよ」
「そうなんだ」
そんな話をしながら食堂へ入れば、おはよう、と声を掛けられて挨拶を返す。
ジョシュアとレイは既に席についていて何かの書類とにらめっこをしている。クレアとティナ、エドワードは忙しなく朝食の支度をしている。ミアとジョンが手伝っている。リースはと探せば、父親の膝の上で大人しくしていた。
テディは、食堂にはいると窓際で日向ぼっこをしていた狼の親子の下へ行き、もふもふの温かさを求めて間に割り込んだ。優しいロボとブランカ、ロビンは快くテディを迎えてくれる。
「おはよう、サヴィ」
ミアが駆け寄って来たのを受け止めて、背を屈めれば頬に朝の挨拶のキスをしてくれる。サヴィラもミアの頬にキスを返して、小さな頭を撫でた。
「父様はまだ教会? イチロも?」
「ううん。イチロくんは、ルーカスおじいちゃんと温室にいるわ。でもパパはまだ教会」
「そうか。なら私が様子を見て来るよ、もしかしたら誰かが来て話し込んでいるのかもしれないし」
そう言ってリックが入ったばかりの食堂を出て行く。ミアはクレアに呼ばれて、彼女の下に行き、サヴィラが手伝おうかと思ったがなんとなくリックを追いかけて食堂を出る。
「リック、俺も行く!」
だいぶ先に行っていたリックが足を止めて振り返った。急いで駆け寄れば、どうしたの?とリックが首を傾げる。
「俺も父様を呼びに行こうと思って」
「そうか、なら一緒に行こう」
サヴィラの言葉に目を瞬かせたリックは、ふっと笑って頷いてくれた。再び並んで歩き出し、エントランスから広い庭へと出たのだった。
広い庭を教会の方へと歩いて行く。教会の東側にはそこから入れるドアがあり、いつぞや父が教会を囲む柵と屋敷を囲む壁を物理的にぶち破って行き来できるようにしたのだ。正面まで回らない分、近くなって便利になったのだが父は当たり前のようにイチロに拳骨を貰っていた。
教会は今でこそ狭い敷地に窮屈そうに建っているが歴史をさかのぼれば、この屋敷の敷地も含めて青の1地区の半分が教会の敷地だった。修道女や修道士のための寮や神父が祈りを捧げるための建物など様々な建物があったり広い庭があったりしたらしいが、教会の勢いが衰え、信仰が失われて行く中で財政難をどうにか乗り越えるために切り売りされた結果、教会のみが残ったのだ。
父はイチロと共に毎朝毎晩、教会で祈りを捧げている。朝はルーカスとクレアも一緒だ。時々、ソニアとミアもお祈りしている。前に一度、誰もいない時間を狙ったのかレイが中に入っていき、こっそりと祈っている姿もみたことがある。
皆、もう抱き締めることのできなくなった人たちの為に祈っているのだ。
あの襤褸を纏った神様の前に跪いて、両手を合わせて握りしめ、願うように祈っている。
「……俺、父様に何をお祈りしているのかって、聞いたことがあるんだ」
リックがこちらを振り返ったのがなんとなくわかった。サヴィラは自分の足のつま先を見ながら先を続ける。
「俺とミアが平穏であること、世界が平和であること、そして、朝はティーンクトゥス様が今日も世界を見守っていてくれるようにお願いして、夜は見守っていてくれたことに感謝するんだって。……ねぇ、リック」
「ん?」
顔を上げてリックを見上げる。
「……父様の神様は、愛を司どる神様なんでしょ?」
「マヒロさんとイチロさんはそう言っているよ」
「ならなんで……父様から母様を奪ったの?」
リックは、深緑の瞳をぱちりと瞬かせた。
父の妻であるユキノを母様と呼んで欲しいと言ったのは、他ならない父だった。ミアはお母さんはオルガ一人だけだけど、パパのお嫁さんならミアのママだね、とユキノのことをママと呼んでいる。マヒロの息子と娘であるサヴィラとミアがそう呼ぶことで、ユキノにもマヒロがサヴィラたちに抱く愛が伝わるような気がすると、家族として確かにそこにあるような気がするのだと言っていた。
そんな目にも見えない不確かなものに縋るほどマヒロはユキノを愛しているのだ。
「父様は母様を誰より愛しているんだよ。会ったことがなくても分かるよ、首にかけたロケットの中の絵を凄く大事にしてて、毎日、こっそり見てるんだ。ユキノってすごく大事にそうに名前を呼ぶんだ。愛の神様なのにどうして、父様から母様を奪ったの?」
リックは、寂しそうに目を細めて首を横に振った。
「ごめんね、私には……分からないよ」
そう告げるリックまでなんだか悲しそうでサヴィラは逃げるように顔を俯ける。
「……俺は、父様の神様は嫌いだ。だって、神様が父様に一番、酷いことをしたんだ」
「サヴィラ……それでも君の父様は、神様を大切に想っているんだよ」
くしゃりと優しく頭を撫でられる。
マヒロが神様を大切に想っていることはサヴィラだってちゃんと知っている。知っていても、いや、知っているからこそ許せないのかも知れない。
サヴィラにとっては会ったことのない神様よりもマヒロのほうがどうやっても大切なのだ。大切な人に酷いことをされて怒らないでいられるわけがない。
「護衛騎士だから私は、四六時中、マヒロさんと一緒に居る訳だけど……一緒にいるとね、分かるんだよ。マヒロさんがどれだけ君とミアを愛しているかって……君とミアと一緒にいる時のマヒロさんは、誰が見たって分かるほど幸せそうだ。奥様が居たら確かにもっと幸せだったかもしれないし、君達に弟とか妹が増えたかも知れないけど、マヒロさんは今ある幸せを何より大事にする人だよ」
「……うん」
こくりと小さな子どもみたいに頷いた。
リックが苦笑を零したのが聞こえたような気がしたけれど、ガチャリとリックの腰ほどの高さの鉄の戸を開けた音にかき消されてしまった。その門を通れば教会までは一メートルにも満たない。
「神様が……母様から父様を奪ったように、」
教会の扉に伸ばされたリックの手が止まった。サヴィラは、ぎゅうと自分のズボンを握りしめる。
「俺とミアから父様を奪ったら、どうしよう……っ」
呆れるくらいに弱っちい声だった。震えてしまったのが自分でも分かる。
リックがしゃがみ込んで下からサヴィラの顔を覗き込んでくる。心配そうに眉を下げた彼の深緑の瞳をじっと見つめ返す。
「母様を奪われても、父様は……神様が大切なんだ。だから……いつか、神様がまた願えば俺とミアだって」
「そんなことになるわけないよ。私が保証する。マヒロさんは、君とミアが欲しいといったら玉座だって手に入れるだろう男だよ?」
「……でもっ」
信じたいのに信じきれなくて、サヴィラは言葉を詰まらせた。
リックは、困ったように笑うとサヴィラの頬を両手で包み込んだ。人族の彼の手はとても温かい。
「ありえない話だけどもし万が一、そんなことになったら私と一緒に探しに行こう。勿論、ミアも一緒にね」
想像したこともなかった提案にサヴィラは目を瞬かせた。リックは、優しい笑みを浮かべてサヴィラを見上げている。その目のどこにも嘘はない。
「私も一応、貯金とかしているし、腕に覚えもある。冒険者にでもなって路銀を稼いで探しに行こう」
ね、と笑ったリックにつられるようにサヴィラも小さな笑みを返した。良い子だ、とリックはサヴィラの頬をぎゅうとすると立ち上がった。
「さ、マヒロさんを呼んで、屋敷に戻ろう。お腹ぺこぺこだよ」
「そうだね、俺もお腹空いた」
リックがドアを開けて教会の中へ入る。サヴィラもその背にくっついていく。
教会の壁には中も外も足場が組まれてステンドグラスや壁自体の清掃、修補が行われている。初めて入った時の埃っぽさはなく、ずらりと並ぶ信者が座る木製の長椅子も綺麗になっていた。
「マヒロさん、朝食の支度が出来ましたよ」
リックの声が石作りの教会に響く。サヴィラはリックを追い越して椅子の間を小走りになりながら石像の前に跪いて祈っているのであろう父の下へ行く。
「父様、朝ごはん、だ、よ……父様!!」
正面玄関から石像へまっすぐ伸びる通路へ出て、それを見つけた瞬間、サヴィラは叫んだ。
マヒロが石像の前に倒れていた。
「父様! 父様!?」
「マヒロさん!」
リックもすぐに気づいて二人で駆け寄る。
父は祈っている最中に倒れたのか手の傍にロザリオが落ちていた。サヴィラは、父の顔の前に膝をつく。リックがすぐさま父を抱え起こした。父の額に手を伸ばせば、サヴィラの冷たい手が火傷をしそうなほど酷い熱を持っているのが伝わって来た。
「す、すごい熱だ……」
「マヒロさん、マヒロさん」
リックがぺちぺちと父の顔を軽くたたくと長い睫毛が震えて月夜色の瞳がゆっくりと現れる。ぼんやりした瞳がサヴィラとリックを交互に見た。
「ああ、朝飯の時間、か……」
「そ、そうだけど、そうじゃないよ! 父様、倒れてたんだよ?」
「……ちょっと寝てただけだ」
「変な意地を張らないでよ!」
そろっと視線を外した父にサヴィラは頭を抱えたくなった。リックが大きなため息を零す。
「サヴィ、背負うのを手伝ってくれ」
「う、うん!」
マヒロの体をサヴィラが預かるとリックが向きを変えてマヒロに背を向ける。父は大丈夫だと言って自分で立ち上がろうとしたが、すぐに倒れそうになったので、サヴィラは蔓の魔法を使ってマヒロの体をリックの背に乗せた。立ち上がるリックから父が落ちないように支えながらサヴィラも立ち上がった。足元に落ちていた父のロザリオを拾う。
「サヴィ、先に言って皆に伝えて来てくれ」
「分かった!」
サヴィラはロザリオを握りしめるようにして駆け出し、教会を後にした。
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ここまで読んで下さって、ありがとうございました!
数か月ぶりの更新ですが、楽しんで頂ければと思います。
絶えず、閲覧、感想、ブクマ登録をしていただけたおかげでこうして再び更新再開出来ました。
この風邪の話はあと中編、後編があります。それが終わったらいよいよ第二部にに入りますので、もう少しだけ番外編にお付き合いください。
更新できなくなった理由の一つが「番外編はいらない」という旨のコメントで、それが幾つかあって悩んだのですが番外編も大事なお話なので、我が儘ですがお付き合い頂ければと思います。
次のお話も楽しんで頂ければ、幸いです♪




