第十一話
「ん~。どこも手掛かりがないねぇ」
「髪飾りの工房で現物もあるから見つかるかと思ったんだけどなぁ」
一路はエドワードとともに黄地区にいた。
ここは多くの工房がひしめき合う地域で、職人街とも呼ばれているエリアだ。
丁度、ぽっかりと時間が空いたのでネネの父親がどこかの工房で働き始めたのではないかと調べに来たのだ。
「収穫はティナへのお土産だけだよ」
訪れた工房で花をモチーフにした可愛らしい髪飾りが有ったので、つい買ってしまった。
セサルがマギーに押し付けた髪飾りは布製だったが、布製の髪飾りではなく、銀製の髪飾りや木製の髪飾りと素材は違えど、髪飾りなどを扱う工房をしらみつぶしに回っている最中だ。
なかなか良い品の工房もあったので、そこは今度真尋にも情報を共有しよう。
「あー、今日はここまでだな。そろそろ商業ギルドに行く時間だ」
エドワードが懐中時計を取り出して言った。
もうそんな時間か、と一路はぐっと伸びをした。
ここへ来たのは初夏だったから、どんどんと暑くなった季節が緩やかに冬へ向かっていくのを冷たくなった風に感じる。
「そういえば、市場通りの空き店舗、マヒロさんから譲ってもらったやつ。あそこに店を出すのか?」
馬を預けている騎士団の詰め所へと足を向けながらエドワードが首を傾げた。
「その予定だよ。収穫祭が終わったら、内装の工事とかあれこれ計画を立てていくつもり。二階と三階を工房にしたいから、そこに置く道具もあれこれ相談しないとだし、雇う人たちのことも考えなきゃいけないし、やることは山積みだよねぇ」
「俺に手伝えることがあれば、言えよ? 重い物とか持てるぜ」
ニカッと笑うエドワードに、一路は「ありがとうございます」と笑いながら返す。こういう真っ直ぐで優しいところがエドワードの一番の美点だと一路はひそかに思っている。誰かを助けることにためらいがないのだ。それは重い荷物を運ぶだけの時も、相手が死にそうになっている時も、中身がどうあれ関係ない。
「僕のお店もだけど、うちにもまた一人増えるかもなんだよね」
「ああ、世話番か? カマルさんの紹介なら間違いなさそうだけど、えらく時間がかかったなぁ」
「カマルさん、僕らのことには妥協を許さないから……いや、魔物関連はそもそも妥協しない人だけど」
「確かにな」
エドワードがカラカラと笑った。
「良い人が来てくれるといいね」
「カマルさんみたいなテンションだったら、マヒロさんが断りそうだけどな」
「それは言えてる」
一路は思わず、あはは、と声を上げて笑ってしまった。
だが、真尋は騒々しい人間が好きではないので、容易く想像できてしまったのだ。
「どんな人が来るかは分からないけど、家がにぎやかになっていいねぇ」
「……イチロは、別に家を持ったりはしないのか? 結婚してもあそこに?」
「そのつもりだよ。やっぱり同居ってあれこれ気を遣うって言うでしょ? だからもし、新居を購入するなら早めがいいと思って、前にティナにも確認したんだけど『絶対にあそこがいい』って言われちゃった」
その答えがいささか意外だったのか、エドワードが二度、三度、瞬きをした。
「妖精族って、もともとが里の方では集団で生活しているでしょ。だから、みんなで一緒に暮らしていると安心するんだって。それにほら、妖精族って綺麗な人が多いから狙われやすいでしょ?」
「ああー……」
騎士として心当たりがありまくるのか、エドワードが微妙な顔になる。
なにせつい最近も、誘拐犯から妖精族の女性たちを保護したばかりで、その内の一人は我が家で働いてくれているのである。
「もし、僕とティナの間に赤ちゃんが生まれても、あの家なら外部からの侵入はまずできないし、ティナ曰『子育ての先輩がたくさんいて心強いです!』だって」
「確かにプリシラもクレアもユキノさんも頼りになるし、キース先生もいるしな。保護箱が必要な新生児をそのまま治療、保護できる環境だもんな……」
「ね。治癒術師……それも指折りの先生が常駐しててくれてさ、皆で子育て応援してくれて、その上、防犯もばっちりとくれば、確かにここに住んでるほうがいいなって僕も思ったもん。僕だって育児には全力で取り組むつもりだけど、神父としても、経営者としても、どうしても忙しくはなるだろうし、現に忙しいし……。それなら信頼できる人たちが僕の大事なティナの傍にいてくれたほうが安心するなって。僕、せめてお金だけはティナに苦労掛けたくないから、そこは手を抜きたくないんだよね」
「……神父なのにそんなにお金ばかり稼いでて、いいのか?」
「いいんじゃない? だってさ、人間って楽にお金を得ると、堕落しちゃうから」
心配そうなエドワードに一路は肩を竦めて返す。
「王都の教会は、献金で腐っちゃってるんだから、僕らは兼業で副業を持っているほうが絶対にいいと思う。もちろん、一つのことに集中したほうがいいって意見もあるだろうけど……信者に養ってもらおうとすると、いずれ堕落してしまう。だったら自分で稼いで、自分の面倒は自分で見たほうがいい。もちろん教会で行われるお葬式とか結婚式とか、そういうものに掛かる費用は信者からもらうけど……それは寄付ではなし、そもそもがその式に掛かる費用だからね」
「なるほどなぁ」
「それに真尋君は、雪ちゃんがこっちに来たのもあるから、もっとバリバリ稼ぐんじゃない?」
「え? 今以上に?」
エドワードがぐるんと一路を振り返る。
便利な魔道具を次々に開発しているので、こちらへ来てたった数ヶ月に係わらず、真尋は引くほど稼いでいるので、驚く気持ちは分かる。
「結婚する時にね、約束したんだって。雪ちゃんに、お金だけは苦労をかけないって」
「だって、もともと金持ちだろ? マヒロさんも、ユキノさんも」
「そりゃあそうだけど、親のお金を使うの、あの意地と見栄の塊みたいな男が許容すると思う? それも自分の一番大事な妻に」
「思わない」
「でしょ? だから向こうに居る時も未成年だったけど普通にあれこれして稼いでいたよ。……そもそも真尋くんと雪ちゃんの結婚を最初から喜んでたのなんて、真尋くんのお母さんだけ。お父さんは、自分が恋愛結婚だったから真っ向から反対していたわけじゃないけどあまりいい顔はしてなかったね。んで、雪ちゃんのご両親に至っては、普通に反対」
「なんで? 顔良し、頭良し、家柄良し、性格は……まあ、あれだけど、妻には世界一優しいのに!?」
性格がちょっとアレと評される親友に一路はなんとか笑いをかみ殺しながら、口を開く。
「彼自身じゃなくて、彼の家の問題だけどね。誰が子どもが産めないという点で娘を忌み嫌う親族が溢れかえっているところに、嫁にやりたいって思う? それに雪ちゃんは体が弱くて、入退院を繰り返して……余命だって決められていた。もちろん、雪ちゃんは余命宣告なんてものは全部覆して今は元気だけどね。でも、それだったら、なんの苦労もない人生を送ってほしいって願うのは、親として普通のことじゃないかな」
「それは、……そうかもな」
「雪ちゃんのご両親だって、真尋くんに対しては優しかったよ。娘をこの世で一番大事にしてくれる男だからね。でも、彼を取り巻く環境に素直には頷けなかったって感じかなぁ。真尋くん自身も、結構それを負い目に感じていたみたいで、結婚する時に『お金だけは苦労をさせない』って約束したんだよ。間違っても他のことで苦労を掛けないのは、無理だからって」
「案外……不器用な人なんだな」
「そうかもねぇ」
完ぺきを追い求めてしまう友だから、なかなかに不器用なところがあるのを一路はずっと昔から知っている。
なんでもないただの高校生だった頃、もっと肩の力を抜いて生きればいいと思っていたけれど、彼がわずかな弱みも見せず、完ぺきな男の仮面をかぶって生きることで、守っているものがあるのを知っていたから、そんなこと軽々しく言えなかった。
寂しいという感情を知らなかった男は今、妻がかまってくれないだけで、子どもたちの顔が見られないだけで、拗ねてむくれている。
日本にいた頃だって見た姿だけれど、それは一路が幼馴染だったからだ。真尋が感情をあらわにしている姿なんて、早々、誰でも見られたわけじゃない。真尋の父親は、息子があらわにした感情何て喜怒哀楽の怒しか知らないはずだ。
でも今の彼は、周りからからかわれるくらい、拗ねてむくれている。子どもみたいだね、と町の人に笑われるその姿が一路は嬉しい。
皆はまだまだ真尋は「無表情」だと言うけれど、日本にいた頃、外の世界に居る時の彼に比べたら、今の真尋は全然「無表情」なんかではないのだ。
「今の真尋くんは、なんの憂いもなく幸せそうで……」
見上げた先、建物の隙間から見る空は、少し狭くて、薄く広く白い雲が伸びている。その雲の合間に見える空の青さは、やっぱりあの頃と変わらない。
「ここへ来たことが正解だったよなんて、置いてきたものが多すぎて僕にはまだ言えないけれど……でも、きっとね、ここで生きるほうが、真尋くんは呼吸が楽なんだ」
足を止めた一路につられるようにエドワードも足を止め、そして空を見上げた。
「幼馴染をやって長いけど……あんなに楽しそうで、寂しそうで、自由な彼を僕は初めて見ているからね」
「そうだなぁ。心地よい居場所ってのは、案外、思わぬところにあんのかもな」
カラカラとエドワードが笑った。
「俺もさ、家族のことは愛してるし、領地の皆の子も大好きだし、大切だ。自然しかないような小さな領地だって、あそこは間違いなく俺の故郷だって胸を張って言える。でも、三男である俺のものにはならないから」
エドワードの瞳は、きっと彼の故郷の空の色が彼の瞳に溶け込んだのだ、と彼の故郷を知りもしないのに、一路は漠然と感じた。
どこまでも澄んでいて、広々とした情景がその目の中に存在している。領都の建物の隙間から見える小さな空では彼の瞳を彩るには足りない。
「間違っても兄上に死んで欲しいとか、兄上たちが嫌いなんてことはねぇよ? 一生、俺の憧れで、自慢で、俺の大事な兄上たちだ」
「分かってますよ」
一路の返事に慌てたように振り返ったエドワードが眦を緩めた。
この国では爵位を継ぐのは基本的に長男だ。長兄も次兄も健在で、聡明だと言うのだから、エドワードに爵位が回ってくることはまずないだろう。むしろ、その権利が回ってきてしまうことは彼にとって耐えがたい悲しみを伴う不幸であると言える。
「オウレット男爵領はアルゲンテウス辺境伯領にくっついてんだ。実は馬で三日も走れば着くんだぜ」
「そうなんですか?」
「おう。大昔の戦争で共に戦い、忠臣のように辺境伯を支えたことで、有事の際にはクラージュ騎士団が守ってくれるという約束があるんだ。もちろんうちの領にも自警団くらいはあるけど、いざという時は手を貸してくれることになってる。だから俺は、クラージュ騎士団に入ろうと思った。俺の愛する家族と大好きな場所をいざという時、守れるようにな」
「それで騎士になったんですか?」
「おう。幸い、魔法も剣も得意だったからな。クラージュ騎士団に入って、大変だったけど、俺の居場所はここだって思えた。大事な故郷と同じだけ居心地のいい居場所だ」
「居場所って、本当はいくつあってもいいのかな……」
「当たり前だろ。それに居場所っていうのは疲れた時に休む場所でもあると思ってんだよ。母上と喧嘩したら、父上のところに逃げ込んで、父上と喧嘩したら、兄上のところに逃げ込んでさ。そうやって、逃げ込める場所でもあっていいと俺は思うんだ」
「なら僕と喧嘩したら、実家に帰るんですか?」
「そうはいっても実家遠いからなぁ、喧嘩しててもいざって言う時はイチロの傍にいたいし……あ! カロリーナ小隊長のところでいいや!」
名案だと言わんばかりのエドワードに一路は「絶対に怒られますよ」と声を上げて笑った。すると「それはそうだ」と真顔で頷き「リックの実家がある!」とまた彼は名案を思いついたようだった。
彼の真っすぐで、曇りない姿勢を一路も尊敬している。落ち着きがないところと、愛馬を愛しすぎているところが残念な護衛騎士だけれど、彼のこの真っすぐさは、他の何にも代えがたいのだ。
「さ、行きましょうか。ちょっと走らないと間に合わないかも」
「あ、本当だ。行くぞ、イチロ!」
「はーい」
さわやかな秋の風を感じながら、一路は走り出したエドワードのマントが揺れる背を追いかけるべく、駆けだしたのだった。
「……細工師、だったんだねぇ」
「王都の工房にいたらしいですよ。あちらの友人に照会してもらいました」
広場に面する通りから、一本裏に入ったカフェのテラス席で海斗はクロードが用意してくれた資料に目を通す。
そこにはネネの父・セサルの身元が明らかにされていた。現在、四十六歳。案外、年食ってるね、と呟く。
細工師とは金属を彫金する職人のことだ。主に金属食器やゴブレット、装飾などを手掛ける。
「友人だと思っていた同僚に騙されて、借金を抱えることになった。そして、ここから先は推測ですが故郷であるこのアルゲンテウス領に戻り、ブランレトゥの貧民街に落ち着いたようです」
「借金自体はどうなってるの?」
「借金はもうありません。何年か前に金貸しが死んでいるんです。王都の自宅で殺されたんです……あくどい商売をしていたようで、かなりの恨みを買っていたため、犯人候補が大量にいすぎて、結果、犯人が分からなかったそうですよ」
クロードが淡々と告げて、紅茶の入ったカップを口元へと運ぶ。
こちらで真尋と最も仲が良い友人だという彼は、類は友を呼ぶというのか、真尋と同じく無表情だ。整った容貌とその頬に浮く鱗も相まって、体温さえも感じない青白い顔をしている。
「職人ギルドに問い合わせたところ、……つい最近、クライドと名を変えて、紫地区の工房に籍を置いているということが判明しました」
「今日、弟とエディが黄地区を当たっていたんだけどねえ」
「無駄足になってしまいましたね。こちらの情報は私がここへ来るまでの間に届いたものですから」
そう告げる彼の肩の上にふわりと黒いカラスが降りて来た。
真尋の発明品で実際の生き物ではないと言うが、隠蔽魔法で本物に擬態する魔道具は、心臓の音が当たり前に聞こえて来そうだった。開発に貢献しているクロードは大小の小鳥たちを数羽貰って、活用しているらしい。
「そんなに簡単に名前って変えられるものなの?」
「……今回は工房の親方がセサルに同情して、後見人になりましたから、できたことです。名前を変えられても魔力は変えられませんから、魔力探知で検索をすれば、一発で分かったでしょうがあれには本人の協力が必要ですから」
「なるほどね。娘を娼館に売ろうとした男の何に同情したんだろうね」
資料をアイテムボックスにしまい、海斗は脚を組む。
クロードはカップを置いて眼鏡のブリッヂを指でくいっと押した。
「さあ。ただ……変わろうとしてはいるようですよ。どういった心境かまでは身元照会では分かりませんがね」
そう言ってクロードは肩をすくめた。
多分だが、この人は類友である真尋と一緒で他人に興味ってものがないのだろうなぁ、と察する。真尋も身内に関しては些細なことでも気に掛けてくれるが、そうではない他人には一切興味のない男である。だが、似ている二人だからこそ、程よい距離感をお互いに保てるので、仲良くできているのだろう。
「あー、いつ行くかなぁ……明日はさ、雪乃のドレスの打ち合わせがあるからあいつ絶対に動かないし」
「神父様は奥様を溺愛していますからね。彼が奥様に頼まれて赤ちゃん言葉を喋った時は天変地異が起きるかと思いましたよ。その後、赤面していましたし」
「なにそれ? 幼馴染の俺さえ知らない情報なんだけど?? え? あいつの顔面って発熱する以外で赤くなるの? 雪乃が緊急入院したっつって青くなってるところしか見たことないんだけど??」
セサルのことがどうでもよくなるほどの衝撃的なニュースだった。
「リンゴのように耳まで真っ赤でしたよ。もしも同行するなら……あー、そうですね、うーん……明後日の午後二時なら一時間ほどお付き合いできますが」
「天変地異が起きそうな話を軽く流すじゃん…………とはいえ、そこで行くかぁ。俺も一応、パートナーがいるからドレスづくりに顔を出さないといけないし、真尋の代わりに顔出さなきゃならないところもあってさ」
「神父様、今やナルキーサス様にとって代わってアルゲンテウス領一忙しい男ですからね。神父様の予定を押さえるの、本当に大変だって私の秘書が嘆いていますよ」
「あいつ、こっち戻ってからマジでほとんど家にいないからね。自分で首突っ込んだ事件と自分でするって決めた案件だから、あいつも頑張ってるけど、多分、その内ミアより先に限界が来て急に休暇取るとか言いそう」
「そうなると大勢の事務官と秘書が予定の調整に泣くことになりますね」
クロードがかすかに笑ったのがなんとなく分かった。
「貴方も来て間もないのに、お忙しいと聞いていますよ。年明けに弁護人試験を受けるとか」
「まあね。もともとそっち系の仕事をしたくてあれこれ学んでいたから。とはいえ元いた国とこっちでは法律も大分違うから、勉強の真っ最中だけど、楽しいよ」
「そうですか。弁護人は商業ギルドの管轄なので、筆記試験に関しては、これまでの試験の過去問題などの閲覧ができますから、必要な時は申請してくださいね」
「え? そうなの?」
「はい。商業ギルドの総合受付で弁護人試験の過去問題の閲覧をしたいと言えば、あとは手続きをするだけです。あと面接練習は予約制ですが、職員が本番さながらに練習に付き合ってくれますよ」
「すごいな、知らなかったよ。一応、試験に関する資料はもらったんだけど、詳しいことは書かれていなかったからさ」
「面接試験では、五人の面接官がいますが、必ずひとり、犬系か狼系の獣人族がいます。なぜか分かりますか?」
クロードの青緑色の双眸がじっと海斗を見据える。
海斗は少し考えて、首を横に振った。
「犬系および狼系の獣人族は、嗅覚のギフトスキルを持っています。彼らは我々の魔力の匂いをかぎ分けます。私も有鱗族ですから、多少の匂いは分かりますが、彼らほどの精度はありません」
「魔力の匂いを、ねえ。そういや、ウォルウに一路と匂いが似てるとは言われたなぁ」
「血縁関係があると似るんですよ。でも、彼らが嗅ぎ取ろうとしているのは、貴方の心です」
今一つ、彼の言いたいことが分からず首を傾げる。
「犯罪者でも普通の人はいますよ。ですがね、勘違いされることも多いのですが犯罪歴がなくても心根が腐った人間の魔力は酷い臭いがするんですよ。腐った卵や魚のような、一番、危ないのは死体の臭いをまとっていることもあります。どれだけ真人間を装っていても、ふとした瞬間、その臭いは漏れてしまうんです。どんな隠蔽魔法だって隠しきることはできません。彼らはそれを嗅ぎ分けるために面接官としてそこにいるのです。ですから、騎士の面接試験も獣人族の面接官がいますよ」
「この間の誘拐事件で関わった宝石屋の息子は、腐った卵のような臭いがするって、騎士が言ってたな」
「か弱い女性を見下して、性差で敵うはずのない力で暴力をふるおうとした男ですから、腐っていて当然でしょうね。……貴方の魔力は穏やかな陽だまりのような匂いがしますよ」
海斗は肩に鼻先を近づけて、くんっと自分の匂いを嗅いでみるが、洗濯に使われているのだろう石鹸の匂いしか分からなかった。
「自分じゃ分からないなぁ」
「人族の嗅覚では無理ですよ。でも獣人族や有鱗族にとっては、案外重要なものなんですよ。魔力の匂いというものは。……おや、そろそろ時間切れですね。申し訳ありませんが用事があるので」
クロードが懐中時計を確認すると、そう告げて立ち上がった。
「いや、こちらこそ忙しい中、ありがとう。この資料は必ず真尋に渡すと約束する。協力してもらっているのはこちらだから、ここは俺が払っておくよ」
「……では、お言葉に甘えまして。失礼します」
クロードが小さく頭を下げるとカフェを出ていく。忙しそうな背中に外へ出て間もなく小鳥が彼の肩に降り立った。彼も商業ギルドマスターとして、何かと忙しいのだ。
海斗は腕時計に視線を落とす。もう少しだけ休憩する時間はありそうだ。ウェイターを呼び、紅茶とケーキのセットを追加で注文する。
手に持っていた資料を読み込んでいると、不意に影が差す。資料もあっけなく抜き取られ、海斗は眉を寄せた。
「やあ、友よ。相席いいかい?とか、せめて聞けよ」
「やあ、友よ。相席いいかい?」
そのおざなりが過ぎる返事に海斗は溜息をこぼす。
いきなり現れた真尋は、先ほどまでクロードが座っていた席に腰を下ろし、海斗から奪った資料に目を通している。
「お前、午後から会議だって言ってなかった?」
「クロードが有力情報を渡したと教えてくれたので、会議は待たせている」
確か騎士団長やら領主やら早々たる顔ぶれが出席する会議だったよなぁ、それを待たせちゃうんだ、と海斗は呆れ半分、関心半分だ。
そもそもどうやって海斗の居場所を特定したのだろうと一瞬考えたが、彼の肩の上で羽繕いをしている小鳥に愚問だなと言葉を飲み込んだ。ちらりと見れば店先では馬車とリックが待っている。
「お待たせいたしました。本日のケーキセットでございます。こちらは紅茶のみのご注文でございます」
「わあ、美味しそうだ。ありがとう」
ウェイターが運んできてくれたケーキと紅茶にお礼を言う。紅茶単体は真尋の前に置かれた。店に入って来た時についでに注文したのだろう。ウェイターは小さく一礼して去っていく。
「改名、か」
「してるみたいだね。まあ、ああいうところから脱出するには手っ取り早い方法かもしれないけどね」
海斗は早速、フォークを手に取りケーキを切り分ける。今日のケーキはチーズケーキのようで、見た目よりもずっしりとしていて、濃厚で美味しい。
「いつ、捕まえに行くか……」
「それなら明後日、俺がクロードと一緒に、話に行ってくるよ。いきなり真尋が出て行くより俺が行った方がいいでしょ」
「見つかった暁には適当な余罪を作って、騎士に引っ張って来させようとと思っていたんだが、お前が行くならお前に任せる」
神父様が言っちゃいけない言葉が聞こえて来た気がしたが、娘を娼館に売ろうとした時点で、多分、セサルは真尋の中で人権を失っているのだ。
「Yes,Sir」
海斗の返事に「頼むぞ」と返しながら、真尋はどこからともなく現れたカラスの頭を撫でた。するとカラスは心得たように頷き、翼を広げて飛び立つ。何がどういう仕組みなのかさっぱりと分からないが、あのカラスはセサルを探しに行ったのだろう。
真尋が紅茶を一気に飲んで立ち上がる。熱いとかないのかな、とケーキを口に運んだフォークが止まる。
「ではまた今夜」
そう告げるとそのままテラスから通りへ出て、馬車へ乗り込んだ。リックが海斗に一礼すると御者席に乗り、そのまま去っていく。
海斗は口に入れたままだったケーキを咀嚼し、飲み込む。
「……忙しいやつ」
滞在時間なんてほんの数分だ。十分にも満たないんじゃないか、と思いながら海斗は時間が許す限り、チーズケーキと紅茶を味わった。
だがこの後、会計をして店を出ようとしたところでウェイターに「すでに神父様により、お支払いは済んでおります」と言われて、俺の方がお兄さんなんだけど、なんなんだよあいつ、と悔しがることになるのを、まだ知らないのだった。
「つまり、俺を攫おうとしている者がいるというわけか」
多少は実のある会議を終えた後、少し残って欲しいと頼まれた会議室にて重要議題だと発表された議題の説明を一通り聞いて、真尋は確認のために簡潔に告げた。
この事件を嗅ぎつけて来たのは、第二中隊の第五小隊の獅子系獣人族のフィリップがひきいる隊だ。彼らは水の月の事件でもウィルフレッドからの命でリヨンズを秘密裏に探っていた信頼のおける騎士たちだ。ただし、真尋が最も世話になっているカロリーナとフィリップは水と油かと呆れるほどにとにもかくにも仲が悪かった。
「はい。神父様の持つ力を利用しようと考えているようで、神父様の屋敷周辺でも動きが確認されているのですが……何分、屋敷は忍び込むのが難しいようで、屋敷の外に居る神父様本人を狙っているようです」
「屋根でドラゴンが寝ている家だからなぁ……庭にウェルデウルフもいるし、家の中にはキラーベアもいるし」
話を聞いていたジークフリートがぽそっと呟いた。
「で、どこの家だ」
ウィルフレッドが問う。
「確定ではないのですが、コラッド男爵家が何かを画策しているようです」
「コラッド家が?」
驚くジークフリートに真尋は視線で説明を求めた。
「コラッド家は我々と同じく中立派の貴族だ。領地はアルゲンテウス領の南西に隣接していて、領地自体は小さいが先々代の当主がやり手で今や毛織物の一大商家として名を連ねているなかなかに裕福だが……業績が落ち込み気味だと、相談を受けている」
「二代目、三代目と商売を大きくできなかったか」
真尋は煙草を取り出し、火を点ける。
「アルゲンテウス領に見放されたと、どこかの家が入り込んだか? そうだな、例えば王弟派の連中とかな」
口端を吊り上げれば、ジークフリートとウィルフレッドの表情は深刻さを増す。
アルゲンテウス領は第一王子を支持しつつ、第一王子がまだサヴィラと同い年の少年ということもあり、慎重に中立派を保っている。だがすでに王都の教会と癒着し一定の権力を持つ王弟派は、アルゲンテウス領を潰そうとしている。水の月の事件で王弟派のリヨンズ伯爵家が暗躍するも、彼らにとっては運悪く、アルゲンテウス領にとっては幸運なことに真尋と一路がいた。
今もまだあの人工的なインサニアを作り出すザラームとエイブは行方さえ知れないが、リヨンズが後ろにいたことを考えれば彼らが王弟派の手先だというのは想像に容易い。
「俺が独身だったら誘拐されてやっても良かったんだがな。誘拐犯で遊ぶのはなかなか良い暇つぶしになる」
「奥様にまた二カ月、口を効いてもらえなくなりますよ……」
背後に控えるリックが呆れたように言った。
「だからだ。ミアが泣くだろうし、サヴィラに呆れられるし、双子に近寄ることを禁じられるだろう。それは嫌だ。それにもう二度と誘拐犯では遊ばないと雪乃と約束しているんだ」
「そのお約束はぜひとも守ってくださいね」
念押ししてくるリックに紫煙を吐き出しながら頷く。
次に同じ真似をしたら、雪乃は二カ月の無視と五時間の土下座では許してくれないことぐらいは、真尋とて知っている。真尋には愛する妻と目に入れても痛くない可愛い子どもが四人もいるのだから当たり前だ。
ジークフリートは遠くを見つめ、ウィルフレッドが胃をさすっている。
「それで、フィリップ小隊長。ここで発表するということは、何らかの動きがあると判断したんだろう?」
カロリーナがフィリップに問いかける。フィリップはわずかに眉を寄せて、口を開いた。
「……マヒロ神父様は、護衛騎士が常時傍にいること、多数の魔道具を使っていることなどが懸念され、誘拐しようという動きはなくなっているそうです。同時にイチロ神父見習い様はそばに護衛騎士に加えて、ウェルデウルフがいますので同じく……そこで、基本、お一人で行動されているカイト神父様を次の標的に移したようで」
「じゃあ、それでいいんじゃないか? あいつ、独身だし」
「マヒロさん、奥様に言いつけますよ」
「やっぱりやめよう」
あなた?と微笑む雪乃の姿が脳裏に浮かんで、真尋はすぐさま訂正した。
「カイト神父殿にもやはり護衛騎士が必要なのでは?」
ウィルフレッドが言った。
「……そうは思っているんだが、あいつが出した条件をなかなか超えてくる奴がいないんだ」
ふーっと紫煙を吐き出した。薄い煙の向こうで、ウィルフレッドが首を傾げている。
「『俺より強い奴』だ」
「……カイト神父殿の実力は、いかほどで?」
ウィルフレッドがカロリーナに視線を向けた。
カロリーナは毎朝の鍛錬に一日も欠かさず参加しているのだ。それに真尋が不在の間も海斗と園田とは手合わせをしていたそうだ。
「剣技だけであれば、我が隊の騎士でも勝てるのです。カイト神父様も剣技はそこまで得意ではないようで……とはいっても、騎士になれるだけの実力はありますが、ですが何より、体術がとにかく強いのです。剣を向けても負けます」
真尋の幼馴染は、弟のほうは弓道が最も得意であったが、海斗が得意としているのは射撃と体術だ。射撃というものはこの世界ではなかなか実践しにくい。真尋も知識はあるので作れないことはないが、銃というものを持ち込みたくないので、黙秘している。それは海斗も同じだろう。
だが、海斗は体術の腕も真尋と同等の実力を有している。柔道、合気道、空手、テコンドー、古武術など、どれも一通りやらせたので、戦況に合わせて柔軟に対応してくる。
「俺の傍に置くと決めた時点で、危険が伴うことは分かっていたから、一路と海斗にはあれこれ仕込んだんだ。あと園田もな」
だが、もともとも気質で一路は争いごとが嫌いだ。自衛できるだけの能力は確実にあるが、こと、武術に関してはそれはそれ、これはこれで割り切れる海斗のほうが楽しそうに学んでいた。
「ミツルさん、本当にお強いですよね……カイトさんもミツルさんに勝てるかは、その日の体調やら何やら次第だと言っていましたし」
ミツルにもカイトにもボロ負けしているリックがしみじみと言った。
「当たり前だ。あれにはとくに厳しく指導したからな。俺の雪乃を守るという役目を任せるんだから、手は抜けない」
園田は真尋が育てた人材の中では、最高傑作と呼んで差し支えない出来栄えだ。執事としても、護衛としても非常に優秀で、彼を紹介してくれた園田夫妻には本当に感謝している。本人にこんなことを言えば、おそらく喜びに泣いて仕事にならないので、あいつが死ぬ間際まで言うつもりはないが。
「……騎士団の中にいるだろうが、カイト神父殿に体術で勝てるやつは……」
「神父殿が来るまで我々は多少の体術は心得がありましたが、剣術、弓術、槍術のほうが盛んですので」
カロリーナが言った。
「ですが、神父殿にご指導いただいて、我が隊は大分、ジュウドーを会得しつつあります!」
カロリーナが嬉しそうに胸をはる。気のせいでなければ、フィリップが悔しそうな顔をしている。彼も獅子系獣人族なので、強い者に挑みたい気持ちが強いのかもしれない。
「私の国では騎士のような仕事をするものを警察官と呼んでいたのですが、警察官は柔道、合気道、剣術などに長けていたのですよ。魔法には呪文が必須。それを唱え終えるより早く捕縛してしまえばこちらのものです」
「確かに鍛錬を見せてもらったが、見事だった。我が騎士団全体に普及させたいものだ」
「第二小隊が形になれば、そこから次へ、次へと広げていけるはずです。逆にアゼル騎士や女性騎士のようにどうやっても体格や性差で劣る場合は、合気道を学ぶという手もありますよ。現に一路は、合気道が性に合っているようで、そちらのほうが上手いですから」
「なるほどなぁ」
ふんふんとウィルフレッドが頷く。ジークフリートが自分の背後に控える護衛騎士に「私も体験してみたいんだが」と言って「だめです」とすげなく却下されている。却下理由は「今はそんな時間ありません」だった。だが確かに真尋に次いで、ジークフリートも多忙の身だ。
「でも、ジークが学ぶという点では、俺は必要なことだと思う。君に死なれると色々厄介だからな。自衛できる手段はいくらあってもいい」
「君はもっとこう、言い方ってものがあるだろう」
「じゃあ、友人として君に死なれたら悲しいので」
短くなってしまった煙草を指先で持て余すとリックが灰皿が出してきたので、そこへ落とす。
「じゃあってなんだ、じゃあって!」
「まあまあ、ジーク。神父殿、ですが、ぜひ、教えて頂けませんか?」
ジークフリートをなだめながらレベリオが言った。
「私もリック護衛騎士が間近で誘拐犯をねじ伏せるのを見ました。狭い室内では非常に有効だと実感したんです」
「もちろんかまわない。休日以外の朝は、庭で鍛錬をしているのでそこへ来てくれてもいいし、俺が言ってもいいが……何分、忙しくてな。来てくれるほうが確実だと思う」
「分かりました、予定を調整してみます」
レベリオがしかと頷いた。
「それで話を戻すが、カイト神父が狙われているというのなら、この際、護衛騎士でなくとも護衛を帯同させるべきでは?」
「異論はないが……フィリップ、今夜、紳士俱楽部があるのは知っているか? というかコラッド家に君の部下が潜り込んでいるという認識で良いか?」
「はい。私の部下が二名、潜っています。それに倶楽部にはコラッド家も出席する予定のはずです」
「俺と海斗が来ること、伝えておくといい。準備をして、捕まえに来てくれるだろう」
「で、ですが、カイト神父殿になにかあったら……」
「あれに何かあったら、俺の指導不足として何か一つ言うことを聞いてやろう。だが、海斗が勝ったら……そうだな、閣下、俺にこのまま第二小隊を下さい」
「異論有りません!」
ウィルフレッドが何か言う前にカロリーナが宣言した。気が早すぎますよ、とリックが苦笑している。
「あ、すみません。団長、どうぞ」
カロリーナが慌ててウィルフレッドに発言権を譲る。カロリーナのこういうところが、エドワードの元・上司だなと実感する。
「……目的は?」
「家の警護もだが、市井を把握する上で、便利だからだ。それに籍は騎士団のままで構わない。俺の騎士団での肩書は……なんだったか?」
「クラージュ騎士団特殊災害対策室室長です」
騎士団で仕事をするに当たって、一応、なんかいい感じの肩書が作られたのだ。神父として行動し、神父として迎えられることが多いのであまり名乗らないのだが。
「クラージュ騎士団特殊災害対策室所属小隊ということでどうだろう? 仕事内容はとくに変わりない。全員で家の警護をする必要はないから、むしろこれまで通り、警邏に精を出してほしい。それに、もしまた何か事件が起きた時、わざわざ騎士団に申請するのではなく、自由に使える隊が欲しい」
「独立させるというわけではなく、あくまで騎士団所属……配属先を変えるということだな?」
ジークフリートの確認に頷いて返す。
「独立なんかさせれば、反旗を翻す気だのなんだとが嫌がうるさくなるだろう? 俺はジークフリートがこのまま、俺たちの教会を認めつつ、まともに統治してくれれば別に何ら異存はないし、なんなら君のために知恵を貸し、力を貸し、ともにアルゲンテウス領を盛り上げ、守っていくつもりだ。言っただろう? 未知の神様を崇拝する俺たちを受け入れてくれたこと、感謝している、と。知り合いの一人もいないこの国で、受け入れてくれた存在がどれほど心強かったか。神に誓って、君たちがまともな為政者である限り、俺たちは力を貸すと約束しよう」
「ならばより一層、気を引き締めねばな」
「私もより民の平和を守るべく頑張らねば」
ジークフリートとウィルフレッドが柔らかに笑いながらも、力強く言い切った。
「手始めにその忠誠の一環として、ポチに防御壁でも張らせえるか。ブランレトゥくらいならいけるといっていたから、魔獣や強力な魔物が入れないようにできる。それだけでも水の月のような魔物騒動やゴブリントレープやダンジョンでスタンピードが起こっても最悪の事態は防げる。ふむ、思い付きで言ってみたが良い案だ。調整して張らせるか……いや、魔道具で通過できる者を調整できるようにポチの魔力自体は原動力とするか……そちらのほうがいいな。従魔とか入れないと不便だろうし、何より、うちのロボが入れなくなったら一路に怒られる」
「マヒロ、とんでもない発案をして、改善して、勝手に自分で納得しないでくれ。だが、それは領主としてもとても良い案だと思うので、次の領会議の議題に上げよう」
「分かった。それまでにまとめておく。ナルキーサスとアルトゥロ、もちろん、クロードにも声をかけよう。楽しくなってきた、メモを取らせてくれ。リック、代わりに進めておけ」
真尋は手帳を取り出し、ペンを走らせる。
「はい。……ということで、いかがでしょう? もちろん、カイトさんの了承を得なければいけませんが」
「ジークフリート様も出席される場所ですから、あまり危険なことは……」
ジークフリートの護衛騎士が難色を示す。
「私も兄上のそばにいるとしよう。コラッド家の内情を探り切るには今回を逃す手はない」
「私も賛成だ。不安の芽は早々に摘み取ったほうがいい」
ジークフリートの言葉に護衛騎士たちも言葉を飲み込んだ。
「では、賛成ということで……カイトさんはおそらく協力してくれると思います。今日、イチロさんは倶楽部には参加されないので、もともとカイトさんの護衛としてエドワード護衛騎士が任務をこなす予定でしたのでそのまま、続行でいいでしょうか?」
どんどん話が進んでいくのを聞き流しながら、事のあらましを書いたメモを小鳥に持たせて海斗に飛ばした。その内、返事が来るだろう。真尋は、会場の地図をフィリップが用意し走り、カロリーナが自分の小隊を呼び寄せるのを横目に入れつつ、新しい魔道具のアイデアを書き留めるのだった。
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