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称号は神を土下座させた男。  作者: 春志乃
第二部 本編
134/158

第六十話 哀れな男

※暴力・流血表現があります




 馬車を下りると外は、しとしとと霧のような雨が降っていた。

 薄暗い通りの奥にひっそりとたたずむ倉庫に向けてマントを羽織り、フードを深々と被ったサヴィラが歩いていく。サヴィラの両脇には、幸いカラスに目玉はくりぬかれなかったらしいベンとラモンがいる。この二人はマントを来ておらず、二人の服はうっすらと濡れている。

 彼らは、粛々と歩みを進めていた。

 リックはベンの後ろを歩きながら、彼の首に手をかけて進んで行く。ラモンの後ろには、ルシアンがいて同じように首に手をかけている。何かしたら殺すぞと単純なおどしをかけているので、二人の顔色は土気色だ。実際、逃げようとしたらリックとルシアンはためらいなくこの首を締め上げる所存だ。

 そして、リックたちの後ろには仲間の騎士たちがいて、マヒロはリックの隣を歩いている。

 騎士たちは全員、騎士団から支給されているマントを着ているのだが、これらすべてに使用者が魔力を流すと一定時間、隠蔽魔法が発動し、姿を感知できなくなる術式紋が刻み込まれている。

 クロードがマヒロが開発したこの隠蔽魔法の術式紋を全てのマントに書き込んでくれたのだ。まだ試験段階だが、例の隠蔽魔法の紙型のものとこちらとで使用感の違いを試したいらしい。

 ちなみに術式紋を描くというのは非常に神経を使う仕事らしく、達成感の浮かぶ疲れた顔をしたクロードは仕事を終えると迎えに来たキアランの隊の騎士とともに帰宅した。


「時間通りだな」


倉庫の入り口で、若い男が黄色い歯を見せて笑う。

隠蔽魔法はしっかりと発動しているようで、男にはリックたちの姿は見えていないようだった。


「ああ」


「今日は天気が悪いな」


 男は、夕暮れに染まり始めた空を見上げて言った。

 ラモンが言っていた通りの合言葉を男が告げる。


「いつものことだ」


 ラモンが答えを返せば、男はますますにやけ面を浮かべて、倉庫の扉を叩いた。そうすれば、大きな扉が、ギギギッと蝶番を軋ませながら開く。

 マヒロが真っ先に入り、ラモンたちを追い越すようにして仲間たちも中へ入っていく。

 ジェンヌとガストンだけがリックたちの後ろに残る。ガストンは最後を任されていて、ジェンヌはリックたちとともに、被害者たちの下へ連れていかれるだろうサヴィラと一緒に行くのだ。


「へへっ、まあ、入れ」


 そして、リックたちも中へ入り、ガストンが駆け込むようにして入ると扉は閉められる。

 広い倉庫の中は、ところどころに荷物が詰まれていて、その一角で誘拐犯たちが酒を飲んでいるようだ。酒と煙草の臭いがする。


「へぇ、こいつがあのオーブの支配人から頼まれたっつー、犬の娘か」


 男がフードを勝手に脱がせ、サヴィラの顔をのぞき込む。サヴィラは、怯えたように顔を背けて身を小さくするが、男の手がサヴィラの顎を掴んで顔を上げさせた。

リックは、心の中でサヴィラが男にキレませんようにと願いながら、周囲を探る。仲間たちは、手筈通りに動いている。

 倉庫の中にまんべんなく仲間たちが散っていく。


「これは、向こうの奴らが受けてきた仕事だろ?」


 男の問いかけにラモンは「俺は知らねえ。ジャスが勝手に連れてきた」と返す。

 ジャスというのは、こちらのアジトにいるとされている男だ。詳しいことはまだ分かっていないが、ラモンたち曰く下っ端のまとめ役のような男だと言っていた。


「んだがよ、別の支配人だかが、この娘を探してるって話じゃねぇか」


 サヴィラの顎から手を離した男が煙草に火を付けながら歩き出す。

 その背に続いて、リックたちも動き出す。


「バカ息子が手を出したらしいが、旦那に取っちゃ親友の娘だってんで、お怒りらしいぜ。奥さんのほうは、息子の味方らしくてよぉ、奥さんがお怒りで、奥さんと懇ろな支配人が俺たちに依頼してきたんだよ。あんたも可哀想になぁ」


 これっぽっちも憐れんでいないような口調で男が言った。

 倉庫の中は木箱が壁を作っていて、まるで迷路のようだった。だが、被害者がいると思われる場所へは一本道だった。木箱の壁は高く、一般の女性が登るのは難しいだろう。だからこそ一本道なのは、出口で待ち構えれば簡単に捕まえることができるからに違いなかった。

 たどり着いたのは、木箱の壁が取り囲む倉庫の奥の奥で、隅に大きな檻が置かれていた。

 中にはベッドが一つ置いてある。そこに三人の女性がいて、ベッドの上で身を寄せ合っている。ここから見る限りでは大きな怪我などはしていなさそうだが、薄暗いのでよくわからない。彼女たちの足首からも鎖が伸びていて、チャリチャリと鎖の鳴る音がする。


「おい、さっき話した追加だ」


「へいへい」


 見張りの獣人族の男がこちらに背を向け、檻の扉の鍵を開け始める。


「へへっ、やっぱり可愛い面してんなぁ」


 男が舐めるようにサヴィラを見る。

 リックは、どうかどうか父親に似て短気な彼がキレませんように、と祈りながら魔力を足の裏へと集中させる。

 ふと視界の端で光が見えて目だけを向ければ、木箱の壁の向こうから天井のほうに向かって光の球がふよふよと上がっていく。全員、配置についたというマヒロからの合図だ。光の周りをマヒロのカラスが数羽、旋回している。


「ちっこいが、こういうのを好む変態爺は多いんだ。良い値で売れそうだなぁ。あーあ、俺に金がありゃあな」


「あんたは、そういうのが好きだなぁ。俺は、奥にいるボンキュッボンの姉ちゃんじゃねぇと食指が動かん」


 見張り番がけたけたと笑いながら言った。

 サヴィラとそれを追いかけるように体を滑り込ませたジェンヌが中に入れば、ガチャンと鍵がかけられた。


「『アイス・ロック』、『ファイア・ボール』!!」


「『ヴァイン・バインド』!!」


 サヴィラとリックが同時に呪文を唱えた。

 サヴィラが一瞬で見張りの男の下半身を氷漬けにして、その次に打ち上げた火の球が合図となり、隠蔽魔法が解除されて、そこかしこで男たちの悲鳴が一瞬だけ上がった。目の前の男はルシアンによって引き倒され、ラモンとベンもリックの拘束魔法で蔓でぐるぐる巻きになって床に転がった。


「ジェンヌ、鍵だ」


 氷漬けにされた見張りの男の胸ポケットから鍵を取り出して、ジェンヌに渡す。腕は出せる程度に鉄格子に幅があるので、外から鍵をかけても中から開けられるだろう。鍵さえかけておけば、逆に安全だ。


「ありがとう、あとは任せて」


「私とルシアンは、向こうに」


 リックとルシアンは頷いて、男たちにロープをかけてずるずると引きずっていく。凍り付いている男が床をガリガリ削ってうるさい。


「カァカァ!」


 一本道を抜けると木箱の上でカラスが鳴いて、翼で進行方向を示しているのでその通りに進んで行くと、ぽっかりと開いた空間に出た。

 そこにはテーブルがいくつかおかれ、酒瓶が転がっている。おそらく家でいうところの談話室のようなスペースなのだろう。

 仲間たちが捕まえた誘拐犯が次々に連行されてきていて、リックたちも男たちをそこへ追加する。


「リック、ジェンヌたちは?」


 木箱の上に立って、全体に指示を出していたマヒロが首を傾げる。


「無事に被害者を発見し、現在、彼女たちと一緒です」


「そうか。なら、俺もそちらに……」


 ドンっ、バキバキガラガラガッシャーーーン!!!

 突然、檻のあるほうからすさまじい衝撃音が聞こえて、皆が息を吞む。


「サヴィラ!!」


 マヒロが真っ先に息子の名前を呼びながら駆け出し、リックも木箱を登ってその背を追いかける。後からルシアンとガストンがついてくるのが分かった。

 近づいていくと、檻の傍に積み上げられていた木箱の壁が崩れている。


「何があった!? サヴィラ! 無事……だな?」


 降り立ったマヒロの声に困惑がにじむ。

 リックも数拍遅れて隣に飛び降り、檻の中を見て眉を片方だけ上げる。一拍遅れてやってきたガストンとルシアンも「どうした?」と首を傾げた。

 檻の中には女性三人を背に庇うサヴィラ、彼らの前で剣を構えたジェンヌがいて、ジェンヌは風魔法で防御壁を展開している。一見、一触即発の雰囲気なのだが女性たちもサヴィラもジェンヌもぽかんとしているし、檻の鍵はかけられたままだった。

 何よりジェンヌが剣を向けているはずの相手がいないのだ。


「どうした?」


 マヒロが問いかける。


「タ、タマ殿が……パンチを……」


 ジェンヌが呆然と答えながら、崩れた木箱のほうを指さす。

 リックたちも振り返るが、そこにはタマがふよふよと浮かんでいるだけだ。


「きゅーい、きゅい!」


 タマはなぜか誇らしげに胸を張って、鼻を鳴らした。


「と、父様、大変! タマが男を殴って、ぶっ飛ばしちゃった……!!」


 サヴィラが降りの中でこちらに駆け寄って来る。


「は?」


「リックたちが行った後、どこかに隠れてたらしい男が来て、何か魔法を放とうとしたんだ。ジェンヌがすぐに気づいて、風魔法で防御壁を張ってくれたんだけど……男が呪文を唱え終えるより早くタマが出てって、男を殴ったんだ」


「まさか、この壊れて崩れた木箱の中にいるのか」


 サヴィラとジェンヌが頷いた。

 タマは、力こぶでも見せるかのように短い腕を曲げて、ふんふんと鼻を鳴らして得意げだ。

 マヒロが天井を仰いで、はぁぁぁ、と長々と息を吐き出すと顔を戻した。


「ジェンヌ、檻の中にこのテントを張れ。この間、園田に整備させたので色々とそろっているはずだ。部屋の中の物は自由に使っていい」


 ジェンヌが中から鍵を開けると、マヒロがアイテムボックスから取り出したテントを渡す。ジェンヌがお礼を言って受け取り、中のスペースにそれを立てる。小さいテントの中は、高級ホテルのような部屋があるのをリックも知っている。この檻の中で過ごすよりずっと快適だろう。

 サヴィラが魔法を駆使して女性たちの足枷の鎖をぶっちぎると、女性たちは幸いなことに自力で歩いてテントの中に入っていった。ジェンヌが最後に中へと入っていくのを見送るとマヒロが口を開いた。


「俺たちはこれから救出作業だ。どうなろうが知ったこっちゃない犯罪者だが、重要な情報を握っているかもしれないのでな」


「はい」


 リックがたちは声を揃えて返事をする。


「俺も手伝うよ」


 サヴィラが檻から出てくる。


「ああ、頼む。では、俺が上から動かすものを指示するので、丁寧に頼むぞ。二次被害は避けたいのでな」


 そう告げて、マヒロが風魔法で階段を作って上に行く。


「まずサヴィラ、手前の大きな木箱を蔓でどけてくれ。リックは、その次の木箱だ。ルシアン、そこが崩れないように見ていてくれ、ついでに変な音がしたら教えてくれ。ガストン、つぎはこっちだ」


 マヒロが、パズルのように積み重なり絶妙な均衡を保つ木箱と周囲の安全確認をしながらどれを動かすかの指示を出す。リックとサヴィラが蔓で大きな木箱をどかし、ルシアンが近くで観察し、ガストンがそれ以外の破片を手作業でどかしていく。

 三十分ほどかけて木箱の山をどかし切った奥の奥で、男が伸びていた。幸いにも崩れた木箱がお互いを支え合って空間ができ、潰れずに済んだらしい。


「……父様、その人、生きてる?」


 檻の前に戻ったリックの隣でサヴィラが男の前にしゃがみこむ父の背に声をかける。リックとサヴィラからは、男の投げ出された足が見えるくらいで姿は見えない。


「なあ、キースは治せると思うか? ちょっと素人だと手が出せん状態なんだが」


「え? どんな状態なんです?」


 リックは思わず問いかける。ルシアンとガストンが後ろからのぞき込んだ。


「顔が……こう、ぐしゃぐしゃというか」


「……生きてんの?」


 マヒロの答えにサヴィラがドン引きしながら問う。


「生きてはいるな、辛うじて……む、俺と同じで魔力循環不順症かもしれん。治癒魔法が効かん」


「うわぁ……」


 サヴィラが頬を引きつらせる。マヒロの傍で男をのぞき込んだガストンとルシアンの頬も引きつっている。

 魔力循環不順症を引き起こしているということは、おそらくタマは魔力を込めた拳を叩きこんだのだろう。隣で首を傾げているこの小柄なドラゴンの小さく短いこの腕は、見た目に反して威力がすごいようだ。


「俺は絶対にキスしたくないが……そもそも、これが口か?」


「え、こっちでは?」


 ルシアンが指差す。

本当にどんな状態なのだろうか。


「というか、誰だってキスは無理ですよ。あれは神父様の奥様だからできた芸当です」


「愛がないとだめか」


 ガストンの言葉にマヒロが言った。というか彼は、口の場所が分かったら誰かにキスさせるつもりだったのだろうか。


「お、首より下は魔法が効くな……ルシアン、小鳥は出しておくから、悪いがひとっ走りいって、キースを迎えに行ってくれ。首から下の骨折やらなにやらは俺が良い感じに治しておく」


「分かりました」


 ルシアンが騎士服から私服に着替えてぴょいと木箱の上に飛び、駆けて行った。樹上で暮らす習性のある豹系の獣人族であるルシアンたちは、とても身軽だ。

 もう一つのアジトはここから遠くないので、男が息絶える前にナルキーサスが来てくれることを祈るしかない。


「ガストン、こいつをあっちに運ぼう。間違っても被害者に見せるようなものじゃないのでな」


「そうですね」


 マヒロがアイテムボックスから取り出した担架に二人がかりで男を乗せて水のベールで囲うと、二人でそれをあの広場のほうへと運んでいった。

 きっと仲間の哀れな姿を見た男たちは、変な気は起こさなくなるだろう。


「リック、ここで見張っててもらってもいい? まだ残党がいるとも限らないし。俺、中の様子を見てくるから」


 檻の中に建てられたテントを指さしてサヴィラが言った。


「ああ、分かった。任せておいて」


「うん、ありがとう。タマも……女の人たちが怖がったら困るから、ここで待機」


「きゅい!」


 リックの騎士の礼を真似する様は微笑ましいのに、その背後のぼろぼろの木箱の山のせいでそれだけで済まない。

 サヴィラが苦笑をこぼしながら中に入っていくのを見届けて、リックはランタンを取り出して、蔓で掛け台を作ってつるしておく。

 ぼんやりと明るい周囲を見回す。タマは、物珍し気に辺りを見回っている。

 白銀の美しい真珠色の鱗がこんな埃っぽい倉庫の中でも、ランタンの灯りを反射して鈍く輝いている。

 タマも、テディも、ポチも、名前だけならどのご家庭にもいそうな可愛らしさがあるのに、蓋を開ければSランク、Aランク、伝説と意味の分からない肩書を持っている。その上、A+ランクの生ける伝説と名高いヴェルデウルフ(それも親子)もいるのだ。

 リックの主たちは、王国を征服しようと思えばできてしまうかもしれないという事実に気づいて、教養としてしか知らないアーテル王国の国王陛下が、どうかマヒロの逆鱗に触れるような馬鹿な真似をしませんように、とリックは祈った。


「きゅ? きゅい、きゅい!」


 タマが壊れていない木箱の壁の前で止まり、リックを呼ぶ。

 祈りをささげるのを中断して振り返る。


「どうしたんだい、タマ」


 近づいていき、首を傾げる。

 タマがきゅいきゅいと鳴きながら、木箱と木箱の間を指さした。タマが男を吹っ飛ばして壊した木箱の壁を正面とするなら、向かって右側の壁際に積み上げられた木箱の壁だ。


「ん? これは……」


 おそらくタマのパンチの衝撃で男が吹っ飛んでいったとき、この木箱の壁も少し動いたのだろう。壁際に整然と並んでいたはずの木箱がずれている。


「すごい衝撃だったんだね」


「きゅーい! きゅいきゅい!」


 タマがそうじゃない!と言いたげに不機嫌に尻尾を振る。

 生憎とリックにはドラゴンの言葉が分からず、首を傾げる。


「リック~、あれ? あ、いた」


 サヴィラがひょっこりと顔を出す。


「どうかしたのかい? 女性たちに何か……」


「彼女たちは、とりあえず少し衰弱してるけど、大きな怪我はないみたいって報告しに来たの。シャワーを浴びたいって言うから、出てきたんだ。何してんの?」


 サヴィラがテントと檻から出てきて隣にやってきた。


「タマが何かを教えてくれているんだけれど、何か分からなくて」


「きゅーい、きゅきゅ、きゅいきゅい!」


 一生懸命何かを伝えてくれるタマだが、飼い主であるユキノなら何か分かったかもしれないがリックにはさっぱりだ。


「何か……床にあるのかなぁ」


 サヴィラがしゃがみこみ、リックもそれに続く。


「あ」


 サヴィラが何かに気づいたのか、小さく声を漏らした。

 そして、鼻先を床に近づけ這いつくばるようにして周囲の匂いを嗅ぐ。


「サヴィ?」


「ここ。ここら辺からなんか、地下室の臭いがする」


「地下室の、臭い?」


「うん。地下って空気が巡らないから、臭いが独特なんだ。たぶん、どこかに地下に降りる入り口があるはずだ」


 言いたいことはなんとなくわかるが、リックのような人族はその匂いを感じるためには入り口を開けるか、地下室に入るかしないと分からないのだ。


「タマ、ピアースかシヤンを呼んでこられるかい?」


「きゅ!」


 へたくそな騎士の礼をしてタマが飛んでいく。

 その間にリックは壁際の木箱をどかしていく。少しして黒豹系の獣人族であるピアース騎士と狼系の獣人族であるシヤン騎士がやってきた。


「どうしたんだ、リック。女性たちに何か……」


「いえ、なんだかサヴィラが地下室の臭いがすると、私には分からなくて、お二人ならと思って」


「ここ、この辺。俺も嗅覚は鋭いほうだけど、嗅覚のギフトスキルは持ってないから」


 サヴィラが指さしたあたりに二人がしゃがみこむ。


「たしかに臭うな、シヤン、分かるか?」


「ああ。任せてくれ」


 嗅覚のギフトスキルを持つシヤンが注意深くあたりの匂いを嗅ぐ。


「ここだ。床板が外れるぞ……よっと」


 シヤンが床板をひょいひょいと外すと、地下へと続く階段が現れた。

 ようやく地下室独特の臭いが、リックの鼻でも嗅ぎ取れた。


「地下なんて資料にあったか?」


 ピアースが言った。

 建造物は商業ギルドに資料がある。クロードを介してこちらの商業ギルドにその資料を出してもらったのだ。間取りなどが分かるだけでもこちらは有利になる。だが、リックも記憶している限り、地下室に関する記載はなかった。

 元からあったのか、それとも誘拐犯たちが作ったのかは分からない。


「いや、俺は知らない」


 シヤンが首を横に振る。


「私も」


「俺も」


 リックとサヴィラが頷いた時だった。


「ふむ、俺も知らんな」


「と、父様……! いつからそこに!?」


 背後にマヒロが立っていた。ピアースとシヤンの尻尾が、ぼわっと毛が逆立って膨らんでいる。

 リックもバクバク言う心臓を押さえて振り返る。


「け、けはいも、おともしなかった……」


「においもしなかった……」


 ピアースとシヤンが呆然とつぶやく。

 そうなのだ。リックの主は、本気を出すと本当に存在が分からなくなるほど気配を消してくるのだ。マヒロは、ニヤッと笑うと手帳を取り出して何かをメモし始めた。


「音と気配に鋭い豹系も匂いに敏感な狼系も欺けるか……」


 何かぼそぼそ言っているがリックは聞かなかったことにする。


「こっち来ていいの? あの人は?」


 最初に立ち直ったサヴィラが問いかける。


「キースが到着したんで、こっちの様子を見に来たんだ」


「あの人、大丈夫そう?」


「もとには戻らんかもしれんが、とりあえず正しい位置に戻すと言っていた。タマ、君の力を借りたいそうだから、行ってくれ」


「きゅーい!」


 はーいと手を挙げて、タマはご機嫌に飛んでいった。


「さて、むろん入り口を見つけたからには入るが……サヴィラはここで待機。テントにいるジェンヌとともに女性陣を守ってくれ。それで地下から俺たち以外の奴が出てきたら凍らせてよし。シヤンはキースたちのほうに行って、ガストンに地下発見の一報を入れてくれ」


「了解」


「はっ!」


 サヴィラが頷き、シヤンはすぐに駆け出して行った。


「リックはどうする? 行けそうか?」


 暗闇が苦手な自分を気遣ってくれる主に「はい」と頷く。


「マヒロさんと一緒なら大丈夫です」


「ならかまわんが、無理はするなよ」


 ぽんと肩を叩かれる。

 暗闇は苦手だが、マヒロと一緒なら平気なのは本当なのだ


「俺が先頭で入ります。夜目が効きますから」


 そういってピアースが先頭に立つ。猫系獣人族は視覚(夜目)というギフトスキルを持っていて、暗闇でもわずかな光でよく見えるそうなのだ。


「では光の球を出そう」


 マヒロが光の球を取り出し、それを導にピアースが階段に足をかけ、ゆっくりと下りて行く。マヒロとリックもそれに続いて中へと足を踏み入れるのだった。







 階段はそれなりに長く二十段ほど続いていた。

 途中で左側の壁がなくなり、そちらに広い空間が存在していた。

 マヒロが光の球を幾つか空中に放つと真っ暗だった空間が淡い光に照らされる。


「地下牢、か?」


「そのようですね……」


「神父様! あそこ!」


 ピアースが指さした先は一番奥の牢屋だ。

 リックとマヒロには暗すぎて何も見えなかったが、ピアースには何かが見えているらしい。彼に続いて駆け寄る。

 光の球が牢屋の中に入っていくと、そこに人がうずくまっているのがようやく見て取れた。


「おい、大丈夫か、おい! だめだ、意識がないようだ」


 マヒロが声をかけるが返事がない。

 しかし、ピアースが「心臓の音がちゃんとしている」と言うので、生きてはいるようだ。リックはあたりを見回すが、鍵のようなものはない。

 

「錆びているな」


「地下で湿気が籠りますからね」


 牢屋の様子を見ながらマヒロが言った言葉に返事をすると、彼はおもむろに長い脚を振り上げ、そして、牢屋のドアを蹴り飛ばした。

 蝶番が壊れて、鉄製の扉が転がるすさまじい音がして、周辺を探るためによそ見をしていたピアースが思いっきり垂直に飛び上がった。


「マヒロさん!! またそうやって壊して!! 現場を荒らさないでください!! ユキノさんに報告案件ですからね!!」


「人命救助が優先だ。……ちっ、なんでもかんでも言い付けるなんて、告げ口野郎め」


「聞こえてますからね!?」


 そそくさとマヒロが中に入っていく。

 どうしてこの人は、すぐに強硬手段に出るのか。ここで「そうですね」などと同意しようものなら、次は何をやらかすか分かったものではないので「もっと穏便な方法があったはずです」と小言を言いながらついて行く。


「おい、大丈夫か?」


 マヒロが声を掛け、リックが抱え起こすと男性は、わずかに意識を取り戻した。


「……み、みず……」


 大分痩せこけた男性は、驚いたことに騎士の制服を身にまとっていた。有鱗族のようで、頬に鮮やかな黄緑色の鱗があった。

 リックが抱え起こし、マヒロが水の球を作り出す。彼の口元に近づければ、ゆっくりとだが彼は水を飲んだ。

 男性はどれほどここに閉じ込められていたのか、大分、やせ細っていた。


「貴方は騎士ですか?」


 リックの問いに男は頷いて、震える手で懐のポケットから騎士カードを取り出した。


「除籍、されてるな」


 上からのぞき込んだピアースが言った。

 男性の騎士カードは、名前の部分に横線が一本引かれている。その下の所属や種族、年齢などを示す欄には大きくバツ印が刻まれていた。


「除籍されるとこうなるのか?」


「はい。死ぬと真っ黒くなりますが、除籍された場合はこのような印が浮かび上がるようになっているんです。水の月の事件の時も私とエディのカードもこうなっていましたよ」


 マヒロは、へぇ、とこぼして男性のカードをまじまじと見つめる。

 男性――セプスは、十八歳。五級騎士のようだ。


「あいぼうが、あやしい、うごきをして、いて……それで、ちょうさ、に、しっぱいしてしまって」


 ガラガラした声でセプスが何とか現状を伝えようとしてくる。


「大丈夫、上でまとめて捕まえたよ。俺はピアース二級騎士、こっちはリック護衛騎士、んで、神父様」


「し、んぷ、あの、ゆ、めいな」


「ああ。概ねお前の事情は分かったから、今はしゃべるな。上に治癒術師がいる。怪我や魔力不足は治してやれるが、栄養失調やら脱水やらはな……とりあえず、上に連れて行こう」


「俺が背負います」


「なら、先に行ってくれ。俺とリックで、他の牢を調べて……」


「父様ー! 応援にきたイチロがタマに殴られた奴の顔見て卒倒しちゃったんだってー! エディが運んできたよ! どうするー?」


 上からサヴィラの声が聞こえた。

 マヒロが、溜息交じりに額を押さえた。リックは、ははっと苦笑をこぼす。

 目の前の主と違って、リックの相棒の主は繊細なのだ。冒険者登録しているにも関わらず、ラスリ一匹解剖できないほどだ。つまり、男の顔はラスリの中身よりひどかったということだろう。


「ったく……どっかに寝かせておけ! サヴィ、ピアースが衰弱した騎士を連れて行く。凍らせるなよ!」


「はーい!」


 ピアースが、では行ってきます、と男を背負ったまま階段を上がっていく。

 あたりを探るが、これと言って何かがあるわけではなさそうだ。他にも牢屋はあったが、鍵は開いていて、使われていた形跡もない。

 

「他には誰もいなさそうですね」


「そのようだな」


「あとでもう少し人数を増やして、検証しましょう。木箱が出入り口をふさぐように上に置かれていましたし、そもそもこの地下室への入り口も普通の床板がそのまま載せられていたので……殺す気だったのかもしれませんね。彼は商品にはなりえなかったのでしょうか」


 階段を上がりながら先を行く背に問いかける。


「見目は整っていたが、男、それも五級とはいえ騎士を売るのは面倒だろうな。何分、力が強いし、一般人より戦うことに慣れている。それに彼は有鱗族で、もしヴァイパーやクロードのように毒蛇系であれば、毒や薬も効かず制御するのが難しい。弱らせることを優先したのだろう。眠り薬や麻酔薬は、毒草の効能を抑えたり、変換させたりすることで薬になるんだ。もとは毒であるから、毒系有鱗族には、特別な薬が必要になって大変だとキースも言っていたしな」


「確かに。私の同僚も怪我をしたとき、麻酔が効かずに大変そうでした」


「毒に耐性があるのはいいが、そこは厄介かもしれないな」


地上へ戻ると自分で出したらしい蔦の椅子に座って、サヴィラが本を読んでいた。


「イチロは?」


「運ばれてきて中で寝てるよ。さっきの地下から出てきた男性もね。キース先生は、あっちにテント張って手術中」


 本をしまいながらサヴィラが言った。


「……緊急で手術なんて、そんなにひどかったの?」


「…………まあ、鼻が頬骨の上にあったし、歯が頬から生えてた」


「うわぁ……見なくてよかった」


 サヴィラが心底ほっとしたように言った。

 騎士をやっていれば色々と悲惨なものを見てしまうが、ドラゴンにぶん殴られた男を見るのは、ナルキーサスも仲間たちも初めてかもしれない。だが、リックの主はドラゴンと一対一の大勝負をかけてぼろぼろだったので、彼を数に入れるなら二人目だ。


「女性たちはどうだ? 話はできそうか?」


「それはちょっと難しいかな、大分、疲労してて、男が近づくと怯えちゃうんだよね。俺とかイチロは平気だったんだけど、まあ、イチロは寝てたからあれかもだけど、イチロを運んできたエディはだめだった」


「そうか。……名前だけでも知りたかったんだが」


「ああ、名前ならメモしてあるよ。ここにいたのは、アリエル、ミランダ、ビビアナ。イチロたちのほうにいたのは、エリーヌ。捜査中に名前は上がらなかったけど、他にオロルとクララっていう女性がいたって。デジレ、ぺルラは見つかってないらしい」


 サヴィラが手帳を取り出して答える。

 マヒロが、ふむ、と顎を撫でながら天井を見上げる。あれこれ思考を巡らせているようだ。


「リック、俺はちょっとキースたちの様子をみてくるから、ここを頼む」


「はい」


 マヒロがサヴィラの頭をぽんと撫でるとひょいと木箱の上に跳んで、そのまま行ってしまった。

リックは、サヴィラが「どうぞ」と魔法で出してくれた蔓の椅子に腰かける。


「地下、あの人以外に何かあった?」


「とくには。使われていた形跡もないし、厄介な男の騎士を処分に困って突っ込んだんだろうね」


「さすがに騎士が失踪したのに気づかない馬鹿な上司でも、騎士が死ねばカードが黒くなって事務員が気付くもんね。すぐには殺せないけど、時間稼ぎにはなるわけだ」


 サヴィラが呆れたように言った。


「だろうね」


「甘いの食べる? 母様が持たせてくれたんだよ。みんなが疲れた時に、あげなさいって」


 はい、と差し出されたのは薄い茶色の飴だ。

 お礼を言って受け取ると濃厚なミルクの甘みが口いっぱいに広がった。


「え、おいしい。なんだい、これ。初めて食べるよ」


「母様特製だよ。キャラメルって言うんだって。美味しいよね」


 サヴィラも自分の口に放り込んだ。


「さっき、女性たちにもあげたんだ。美味しいって喜んでもらえたよ」


 いい子だな、とリックはサヴィラの頭を撫でた。不思議そうにリックを見上げるサヴィラに「なんでもないよ」と返して、辺りを見回す。

 やはり木箱以外は何もない。


「カイト、レオンの父上に会えたかな」


 サヴィラがぽつりと言った。

 リックは懐中時計を取り出す。カイトがブランレトゥに寄ってから出発した時間は過ぎていた。順調であれば、会えていてもおかしくはないが、真夜中という非常識な時間に訪問するかどうかは分からない。


「……なんていうか、母様が奥様と仲良しでしょ?」


「ああ。そうだね、ユキノさんは平民らしいけれど、良い家の出だからか、気が合うみたいだしね」


 ユキノとアマーリアは、とても仲良しだ。二人で裁縫にいそしんだり、ユキノが料理や掃除を教えたりしている。先生が優秀なのか、最近のアマーリアは、簡単な料理なら一人で作れるようになったほどだ。皿も割っていない。


「カイトがね、父様は怒らせてもいいけど、母様だけは怒らせちゃいけないって言っててさ。でも、間違いなくレオンの父上は、母様の逆鱗に触れてる気がするんだ。だって、母様が大好き奥様泣かせてるし、母様が奥様の味方である以上、父様は絶対にレオンの父上の味方しないし」


 話し合う場合、普通ならば夫同士が並んで座り、妻同士がその向かいに並んで座るか、夫婦で向かい合うように座るだろう。だが、今回に限ってはマヒロ、ユキノ、アマーリアが並んで座り、ジークフリートは一人で彼らに向き合うことになりそうだ。


「……大丈夫、例えマヒロさんがアルゲンテウス領を治めることになっても、私はマヒロさんの護衛騎士だし、サヴィラなら領主家の子息にもなれるし、将来、立派に統治できるよ」


「待って、リック、諦めないで。俺、別に領主なんて面倒なものになりたくないんだけど??」


 がしりと腕を掴まれるが、一介の護衛騎士には荷が重すぎる案件だ。


「大丈夫だよ。前に雑談した時、マヒロさん、領地を治めるくらいはできるって言ってたし、ほら、発展させてやるって言ってたでしょう? ね、大丈夫」


「なんにも大丈夫じゃないけど??」


「だって無理だよ、ユキノさんが味方じゃない限り、私たちには何の力もないんだよ!」


「……それはまあ、そうなんだけどさ」


「私もまた改めてマナーとか色々学ばないとな」


「ねえ、リック、本当に諦めるのが早いって!」


 サヴィラにがくがくと強請られるが、リックの意思は固いのだ。


「ドラゴンをぶん殴って従魔にしたような男が勝てないユキノ(相手)に、自分の奥さんから逃げ回っている意気地のない中年のおじさんが勝てると思うの?」


 リックは静かに問いかけた。

 サヴィラは、数秒の間を置いた後、リックの腕を離して椅子に座りなおすとどこからともなく本を取り出して広げた。


「…………俺も、改めて勉強頑張ろ」


 そういって、サヴィラは本のページをめくるのだった。







おまけ


「白トカゲ、いいか、お前がやったんだから、自分で責任を取るんだ。こいつの顔に貼りついているだろうお前の魔力を取るんだ」


 ナルキーサスの命令にタマは、反省した様子で「きゅー」と鳴いて、お見せできない顔をしている男の傍をうろうろする。

 助手として駆り出されたガストンは、せっせと盥に水をため、同じく駆り出されや火属性持ちのジョージと一緒にお湯を沸かしていた。お湯がわくと、ナルキーサスがそこに様々な手術の器具を放り込んでくる。


「ったく、つい先日まで魔獣型魔力循環不順症など百年以上治癒術師をやって十二名しか会ったことがなかったのに、この短期間で二人も発症するとは! こいつで十四人目だ。白トカゲ、次から絶対に殴るんじゃないぞ、あのシャボン玉みたいのに入れて、自由を奪えば十分だ。分かったな」


「きゅー……」


「しかもこいつ顔がぐしゃぐしゃじゃないか。こういうのは治すのに時間がかかるし、元の顔が分からんからどうしたもんか。外の奴らは、こいつの顔を見た途端、軒並み気絶するから分からんし」


 本当にあれこれ見慣れたガストンでもちょっと引いてしまうほど、酷い有様だった。

 神父様は冷静に「モザイク加工が必要だな」と言っていたが、モザイク加工とはどんな加工だろうか。

ヒアステータスで名前が「コド」ということだけは分かったのだが、元の顔を尋ねようにも彼の顔を見た誘拐犯たちは、軒並み気絶してしまい話にならないのだ。


「きゅ、きゅきゅー!」


 タマが男の顔からぺいっと何かを引っぺがすようなしぐさを見せた。

 飛んできた何かがガストンが盥に溜めていた水の中にぽちゃんと落ちる。首を傾げながら拾い上げて、指先でつまんで顔の高さに持ってくる。


「なんだ、これ」


 ガストンの指の先ほどのタマの鱗によく似た綺麗な小石だ。隣でお湯を沸かしていたジョージが「綺麗だな」と感心する。


「見せてくれ!」


 ナルキーサスが飛んできて手を出してきたので、その手に載せる。

 ナルキーサスは、まじまじとそれを見つめると黄色の瞳をらんらんと輝かせた。


「これは白トカゲの魔力の塊だ! マヒロの奴、黒トカゲの魔力の塊はあの爺にあげてしまってな。私だってほしかったんだ! 研究のし甲斐があるぞ! ふむ、なんだかいい感じに機嫌も上がってきた! お前の顔もいい感じに治してやるからな! 今思い出したが例のペンダントにお前の髪を入れればお前の顔は再現可能だ! 安心しろ、私はこう見えて絵も上手いのだ!」


 鼻歌を歌いながらナルキーサスが楽しそうに白衣の襟を正し、熱湯の中から手術用の器具を魔法で取り出して、自分の横に置いたワゴンに並べて行く。


「なあ、ガストン」


「なんだ、ジョージ」


「つまり魔獣型魔力循環不順症ってのは、その原因となった魔力の持ち主である魔獣に剥いでもらえばいいってことかな」


「ああ、そういうことになるな! これがタマだけなのか他もできるのかもわからんが、世紀の大発見だぞ! ただ、なんの役にも立たないがな!」


 ご機嫌なナルキーサスがジョージの疑問に答えてくれた。

 だが、事実、なんの役にも立たないよなぁ、とガストンとジョージはナルキーサスの横にいるタマを見る。

 タマは「きゅいきゅい」と、短い腕を振りながらナルキーサスを応援している。

 怒り狂った魔獣と死闘を繰り広げて発症するのが魔獣型魔力循環不順症だ。それを勝負がついた後に「邪魔なんで魔力をはがしてください」と言って、はがしてくれる魔獣なんていない。とどめは刺してくれるかもしれないが。


「俺たちもまだまだ知らないことが多いな、ガストン」


「そうだな、ジョージ」


 二人は遠い目で頷き合い、せっせと水をため、お湯を沸かすのだった。


ここまで読んで下さって、ありがとうございます。

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次のお話も楽しんで頂けますと、幸いです。

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