プロローグ①
はじめまして。永遠です。趣味で書いてみた、駄文ですが、楽しんでいただけたら幸いです。
「はぁ…」
ここに来てから十数回目の溜息。誰もいない深夜の公園。ほとんど切れかかっている街灯の下。そこにある、古びて朽ちかけているベンチに男は座っている。
「はぁ…」
男は再び溜息をつく。男の名前は清守 飛鳥。28歳 無職。難関大学を首席で卒業後、5年間、ずっと就活に勤しんでいた。普通なら喉から手が出るほどほしい人材であるが、現代の日本は違った。
6年前の法改定により、日本は王国になり、身分の格差が大きく広がった。清守家の身分は農民。機械化が進み、雇用が減少しつつある日本では、貴族の雇用を優先し、身分的には平民以下の農民たちでは、赤字寸前の中小企業でさえ、入社するのは難しい状況だった。
そんな中、飛鳥は旧友のツテに頼り、今まで頑張ってきたが、最後の一社も「農民は雇えない」という理由で落とされた。
「はぁ…帰るか…」
飛鳥はゆっくりと立ち上り、帰路につこうとした時だった。突然、右腕の感覚が消失し、肩に激しい痛みが襲う。さらに、何が起こったのか確認する前に左手、右足にも同じような痛みが襲い、飛鳥はバランスがとれなくなり、地面に倒れた。
グルルルル…
薄れゆく意識の中、飛鳥がこの世界で最後に見たものは、自分の手足を咀嚼する、三つ首の大きな狼だった。