迷子の人助けである。
最後はこんな格好をしているから、記念ということでメルヘンチックにメリーゴーランドに乗ってみた。
家族連れが目立つなか、私たちは短めな列に並ぶ。
すると、私も梓も同じタイミングで服の裾をつんと引っ張られた。
その服の裾を引っ張った手の持ち主は私たちのかなり下にいた。
「おねいちゃんたち、ママどこかなぁ〜?」
「どうしたの? 迷子かな?」
こんな純粋な小さな男の子にも完璧に『お姉ちゃん』と認められ、どこか嬉しそうにする梓は、男の子の目線に合わせて話を聞いてあげることにしたようだ。
迷子と言われ、男の子はなんだか不満そうな顔をした。
そしてぶんぶんと顔を横に振り、
「迷子じゃないもん。悠ちゃん、一人で遊びに来ただけだもん」
頬を膨らませる様子を見て、私たちは顔を見合わせて微笑んだ。
『僕は迷子なんかじゃない、子供じゃないもん、大人だもん』。
きっと"悠ちゃん"はそれを認めて欲しかったのだろう。
なんと可愛らしい発想だろう、仕草だろう、そう思いつつも親は探さねばならない。
「そうだね、じゃあ悠ちゃんがお母さんたち探しに行こっか!
お母さんたち、悠ちゃんとはぐれちゃって迷子になっちゃってるよ?」
……上手いの一言である。
悠ちゃんのことを迷子と言わず、親御さんの方を迷子ということにし、『迷子を探しに行こう』と言った。
これなら悠ちゃんも不満気な顔はせず、
「仕方ないなー、探してあげるよ!」
ふふんと鼻を鳴らしてそう言った。
さっそく悠ちゃんの親御さんを探そうと今日の服装などを聞いてみるも、彼はメリーゴーランドに乗りたいの一点張り。
とりあえずは乗せてあげるしかないということになり、列に残った。
すぐに順番は回って来て、私は白馬、梓は悠ちゃんを膝に乗せて黒い馬に乗った。
優しいオルゴールのような音色とともに、ゆっくりと回転を始めた馬たち。
私たちはさすがにもうはしゃぎはしないが、悠ちゃんは興奮しっぱなし。
「わあぁ……! 楽しいね、おねいちゃん!」
「そーお? なら良かった、良かった!」
なんだかこのメリーゴーランドの周りに高校生たちが集まって来た気がする。
「ねぇ見てあれ! 芸能人だったりするのかな⁉︎」
「写真撮ろうぜ! こんな美人この辺にいないぞ!」
「今の言葉は聞き捨てならないけど写真写真!」
そうか、私たちのことを撮っているのか。
こういうメリーゴーランドにふさわしすぎる格好をして乗っているのだから、注目されて当然である。
梓は写真慣れしているせいかウインクしたり笑顔を見せたりしているが、私はずっと真顔を貫いていた。
だが、近くの馬に乗る梓が悠ちゃんに変顔を見せて笑っている姿を見て、思わず頬が緩んでいた。
やっぱり子供って可愛いなぁ、そう実感した。
メリーゴーランドに乗った後、悠ちゃんは素直について来てくれた。
今日はお母さんと2人で来ているという。
お母さんの特徴を聞いてみると、
「んっとねー、ママはねー、髪長くて綺麗で、今日はふわふわしたわたあめみたいなお洋服着てるよ!」
「もう少しヒントとかないかな?」
「えー? ママのお誕生日はねー……」
「いや、大丈夫! じゃあ行ってみようか、迷子センター」
「そうですね、それが確実かと思います」
私たちはここから少し離れたところにある迷子センターに向かった。
梓は途中で疲れて眠いと言い出した悠ちゃんをおんぶした。
そろそろ迷子センターに着く……というところで、悠ちゃんが叫んだ。
耳元で叫ばれた梓はびくっと肩を震わせて後ろを振り向く。
「どうし……」
「ママー! ママー!」
指差す方を見ると、『わたあめみたいな服を着た、髪の長い綺麗な』女性が周りをきょろきょろと見渡していた。
その顔は不安そうで、これから迷子センターに駆け込む予定だったようだ。
私たちは彼女の方に走っていった。
「すみません、悠ちゃんのお母さまでしょうか?」
「悠太! 今までどこ行っちゃってたの、心配したでしょ!
……あの、悠太を助けてくださりありがとうございました。
本当に、本当に! ありがとうございます!」
何度も深々と頭を下げられ、つい私たちまで恐縮してしまう。
お気になさらず、と連呼して微笑みかけた。
「では、ありがとうございました!」
「おねいちゃんたちばいばーい!」
「いえ、見つかって良かったです。悠ちゃん、ばいばい!」
2人の親子は、手をぎゅっと繋いだまま雑踏の中に消えていった。
私たちは最後の最後に疲れたものの、人助けが出来て気分良く帰れた。
私たちにも子供が出来たらあんなかんじかな……?
いつの間にかそんな妄想まで膨らませていた。




