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地味な雑草は眼鏡を外すと美しき薔薇だった。  作者: 梅屋さくら
Episode6.新たな恋と情熱だった。
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悲願である。

「では、出場者の皆様はステージにお並びください!」


審査が終わり、オーディションはついに結果発表に移った。

私たちの後ろから司会の男性がゆっくりと入ってきて司会席に着く。

再び爽やかな笑顔を浮かべ、


「大変お待たせ致しました!

出場者たちにはしのぎを削る激戦を見せていただきましたが……

ついに! 選ばれし2名の合格者を発表致します!」


男性はまたゆっくりと手に持っていた高級感ある本を開いた。

本とは言っても、良く見ると1ページしかない。

当たり前か、合格者の名前のみしか書かれていないのだから。


良くテレビで耳にするドラムの音が響き、スポットライトが私たちの周りを彷徨う。

男性が口を開いた。


「ではまず、男性部門グランプリを発表致します。

栄えあるミステリアスコンテストグランプリは……関西ブロック、あかりさん! おめでとうございます!」


わぁっ!

その歓声は私の隣にいる梓の胸に深く突き刺さる。

だが関西ブロック代表は……茜のこと?

スポットライトの照らす方を見ると、大泣きする茜がいた。

梓を励ますことも、茜を祝うことも出来ないまま、またドラムの音が響く。


「次いで、女性部門グランプリを発表致します。

栄えあるミステリアスコンテストグランプリは……関東ブロック、RIHOさん!

おめでとうございます!」


目の前が真っ白になる。

それはまさかの展開だったから、そして私にスポットライトが浴びせられたから。


「え……?」


思わず口を両手で覆い、目を見開いたまま固まってしまう。

いろいろなコンテストでグランプリを獲得した方が良く口を手で覆っている姿を見かけるが、本当に反射的にこういう動きをしてしまうのだと今さら知った。


「グランプリに輝いたお二人は、前へどうぞ!」


男性に指示されるまま列から外れて一歩前に進み出る。

茜と隣に並び、口ひげのおしゃれなこのコンテストの開催者の方に月と星をかたどったトロフィーを授与された。

握手を交わし、そのときに、


「君の豊かなアイデアと、観客を喜ばせようとする姿勢は素晴らしかったです。

これからもそういう心を忘れずに観客を魅了していってくれることを期待してます」


と一言いただいた。

私たちはコメントを求められた。


「僕は姉と一緒に出場しましたが、姉弟二人の悲願を達成できて良かったです。

僕を応援してくれた皆様、ありがとうございました!

このありがたい賞をいただけたのをきっかけにより一層頑張りますのでさらなる応援をよろしくお願い致します!

……僕は関東ブロックのRIHOさん、浅海さんとは友人です。

二人もありがとうございます、そしておめでとうございます!」


拍手とともに私たちにメッセージをくれた。

ありがとう……そうつぶやいて私たちは泣いた。

きっと茜の言葉は彼女である楓にも向けられた言葉だっただろう。

茜にバトンを渡され、今度は私がカメラに顔を向けた。


「皆様、こんな私でしたが、たくさんの応援、そしてウェーブまでありがとうございました!

皆様が感動したと言ってくださいましたが、感動して力をもらったのは私の方です。

私たちをこの舞台に立つことを勧めてくださったマネージャーの楓さんにも感謝を伝えねばなりません……。

そして燈さん、お互いですがおめでとう。

燈さんの強さと可愛さには私たちもなにか光り輝くものを感じてました。

これから一緒に仕事することも多いかと思いますが、よろしくね」


私と茜は軽くハグを交わした。

その姿に観客はさらに沸き、拍手は絶えなかった。


「グランプリ受賞者は、テレビ出演、CM出演、ネット生配信など、様々な権利を獲得します。これからもお二人の活躍に期待したいですね!

ではテレビで視聴してくださっていた方々とはここでお別れです。

ありがとうございました! お二人の活動にご注目ください! ではではー」


男性がカメラに向かって手を振るのを見て、私たちも真似る。


このままステージの照明は消え、長かったようで短かったミステリアスコンテストは終わりを迎えた。

グランプリ受賞者は本部でこれからのことについて説明を受けた。

テレビ出演などについては後でまた冊子が届くらしく、それは一瞬で終わった。


私たちは本当は茜たちと合流したかったが、インタビューなどが重なってそういう時間は取れなかった。

仕方なくまた猪瀬家に帰ってきた。

帰る道中、感慨に浸りすぎて意外と話さなかった。というか話せなかった。

今日はお兄ちゃんとも仲直りしたわけだし自宅に帰ろう……。


家に帰る用意をしていたら後ろから梓が後ろからぎゅっと抱きしめてきた。

そうだ、忘れていた……。


「返事……聞かせてくれるの……?」

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