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息子である。

今日は授業がなく、自己紹介と配布物配りのみで下校を迎えた。

部活原則禁止なので全員が友達と共に校門を出る。

私は友達と言えるような友達がいないので一人で帰宅。

帰るとき道中のパティスリーに寄った。

ここは日課となりほぼ毎日寄って絶品のチョコレートミントケーキを買う。


「いらっしゃい、今日から学校お疲れさま! はい、用意しといたよ!」

「いつもありがとうございます」


この店の主人を務めるのは四十代の豪快な女性。

白い歯を見せて常に笑っている人だ。

旦那さんもいるが、今は何か病気になって入院中らしいがどのような病なのかはまったくわからない。


それにしてもなぜ今日から学校だとわかったのだろうか。

春休み中ほぼ毎日同じ荷物を持って制服で図書室に行っていたというのに。


「なんで今日から学校ってわかったのですか?」

「あれ、言ってなかったっけ。あたしの息子がね、同じ学校なのよ!

……あ、ほら、帰ってきた!」


おばさんに同じ学校に通う息子がいたなんて初耳だ。

良いタイミングで帰って来た息子さんが連れられて店の奥から出て来た。

なんで俺店の方出なきゃいけないんだと文句を言っている。

だが暖簾をくぐらされて私の前に出た。


「こいつがあたしの息子、梓って言うのよ!」

「え、葵ちゃん!?」

「あらぁ、お知り合いになったの?」

「今日から同じクラスで隣の席なんだよ」


奥から出て来たのは優しいおばさんとはぜんぜん違う息子、梓だった。

言われてみればあの明るさと笑い方はそっくりかもしれない。


「うちの子色々悪いとこばっかりだけどよろしくねぇ!

葵ちゃんがお隣なら安心だわ!」


そう褒められたところで梓は嫌いなので乾いた笑いしか出て来ない。


そんなことにも気付かずにうちにあがってご飯食べて行きなさいよと言われた。

親も待っているので、と言いたいところだが二人はこの時間仕事なので確実に家にいないしいつも一人だ。

兄ももう彼女と同棲を始めているのでいない。


「一人でご飯食べるよりもみんなで食べましょ! ほらあがってあがって」

「いや悪いので……」

「なーんも遠慮しないで!」


遠慮ではなく梓と一緒にいるのが嫌なのだが断る理由も見つからない。

流されるまま家にあがらせていただく。


中は普通の家で和室と洋室がある。


「夕食のそうめん出来るまで梓の部屋で勉強でもしててね」


梓もはーいと言って私を二階にある梓の部屋に入れる。

男の子とは思えないくらい綺麗なモノトーンの落ち着いた部屋。

ちょっとは気まずい雰囲気にはなったものの彼の部屋を勝手に見て回る。

勉強机の上には写真が置いてあって良く見ると、すごく綺麗でスタイルの良い女性。

手に取って見ていると、慌てて取り上げられた。


「これ俺が今好きなモデルだから!

今日から一番好きなのは葵ちゃんだから、安心して!」


そんなこと言われても意味がわからないので無視する。


小さなテーブルを出して向かい合って勉強を始めた。

まじめに参考書に向かっている姿を見ると成績一位の理由は分かるが、普段はぜんぜんわからないよなぁ。

なんて失礼なことを考えていた。


ちょっと緊張しながらも進む勉強時間は少し楽しいと感じてしまう私がいた。

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