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天才からの告白である。

私が呆然と突っ立っていると、あのいじめグループが戻ってきた。


「和泉にパンとジュース頼んだのにまだ来ないんだけど!」

「使えねーな、あいつ!」

「……おい、あいつらが葵ちゃんをいじめてるやつらか?」


私はそんな質問に答えたくもないので無視する。

グループのメンバーたちはまた来た道を引き返していた。

でもなぜか無視していることに気付いていないのか、よし、と呟いてグループのほうへ全力疾走していく。


「ちょ、ちょ、待って……!」


梓を使って私がいじめを止めようとしてる卑劣なやつみたいでプライドが許さない。

私はこんな見た目をしているけれど、むだにプライドが高くて困る。

まあ可愛げのない女、ってこと。

全力で止めたにも関わらずその耳には届かなかったようで行ってしまった。

本気で走ればクラス一速い足を持ってはいるのだがかなり男子の中でも足の速い梓には到底追いつかない。


息切れしながらも意外に遠くまで行ってしまっていたグループと梓に追いつく。

だが時すでに遅し。

梓はグループに対し、


「そういう最悪な行為、絶対に許さない。

彼女は君らみたいに誰かと一緒に誰かの悪いところ探してるやつよりよっぽど強いってことに気付かないのか?」

「はぁ? うるさ……」


殴りかかろうとするリーダー格を他のメンバーが止める。

振り払おうとするリーダー格に、


「あいついつもテスト一位の猪瀬梓! ……さらにイケメンだし」


最後は関係ないのではないかというツッコミは誰もしない。

ということは全員が共感しているということなのだろう。

私は陰で聞いていて、それまでその名前に既視感を覚えていた理由がわかった。


そうだ、いつも定期テストで一位の人だ……!


私はなにかで負けることが嫌で仕方なく毎日五時間は勉強している。

もちろん中学生時代は常に一位だったのだが最近は一位に大きすぎる差をつけられて二位しか取れないのだった。

自分の成績ばかり見ていて上の人などまったく見ていなかったが……確かに猪瀬、そんな名前の人の噂を聞いたりした気はする。


私がプライドを引き裂かれているとき、すでにグループは恐れたのか、


「すみません、もうしません」


と謝りながらいつか謝罪したいのでケーキとかどうですか? と狙っていたが、君らみたいな性格ブスは大嫌いだ、とばっさり断られていた。

本当にいじめを止めてくれるなんてヒーローのようだとも思ったが、お礼も言わぬまま人のいないその空き教室に入って扉を閉めた。


「なに、かっこ良くて惚れちゃった?」


にやけながら冗談を言うがそんなのに付き合っていられるほどの余裕はない。


「私の素顔のこと、絶対誰にも言わないで。お願いします」

「別にわざわざ言わないって約束するけどさ……」


その代わりどんな代償を求められるのか怖かった。

ついビクッと体が動き、梓から目を逸らしてしまう。


だが彼のこと行動は予想外で、いきなり私の手を両手で包み込んで来た。

びっくりする私に構わず、にこっと笑って、


「俺と付き合ってくれない?」


そう告白された。

私の脳内では色々な私が会議を開き、どういう意味かを議論していたが結論は一つしか出て来なかった。

そしてゆっくり理解したとき、


「……え?」


と短い一文字が口から発せられていたのだ。

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