無邪気さである。
授業終了のチャイムが鳴った。
気が付けば私たちは一つの授業をサボってしまったことになっている。
私と茜は眼鏡をかけ、いつも通りの姿に戻ってから焦って教室に戻った。
そのとき、
「葵ちゃん! 茜ちゃん! 今日の放課後ここ集合な!
茜ちゃんは俺と一緒に部活休んでもらっても良い?」
「了解です……!」
放課後にも集合する約束をして解散した。
次の授業で戻って来たことを担任に伝えたら、再び頭を抱えてため息をつかれた。
よっぽど普段サボるなんてしないような私が反抗したことが先生にまた一つパンチを食らわせてしまったらしい。
申し訳ないと心から思ったものの、また今日も梓たちは部活をサボる。
長い長い授業を終え、梓たちは部活を休むことを言ってきてからあの場所に来た。
休むと言いつつ校内に残っているので、それも秘密。
地味な二人と輝く一人、すごくアンバランスだと思う。
「あの大会のときの写真、今持ってますか?」
「はい、持っていますよ」
「大会のときの写真? なにそれ、俺もらった覚えないんだけど……」
「梓さんのぶんも私が持っていますよ。
オーディションのあと、楓さんがどうせ梓は失くすから、って」
失くさないよと反論して来ないところを見ると、良く失くすのだろう。
一人五枚、各部門優勝者がもらえる写真は、厚めの紙に挟まれて渡された。
お互いのを交換して見たのだが、茜はボーダーの柔らかそうなニットに黒いパンツ、それに腰にスカートのように布を巻いていた。
軽くセットされた髪は金に近い茶髪で、やっぱり可愛さがうりらしい。
「このときだけ髪を染めていたのですか」
「いえ今もその髪色のままですよ! ほら……」
茜の次の行動によって私たちの目は飛び出してしまった。
彼の髪が取れたのだ。
……違う違う、ウィッグを外したのだ。
ボサボサの黒髪ウィッグを外すと、この写真と同じ軽めの茶髪。
耳にもかかり、少し長めなところがまた可愛らしさを倍増させている。
いつも部活のときでもウィッグ被ってバスケットボールをしていると思うと慣れているんだとわかる。
「そ、それバレたりしないのか!?」
「この学校の校長が僕のお父さんなんで、そのことは先生たちに話してあります」
「お父さんが校長先生……!?」
さりげなく茜ってお金持ちなのかもしれない。
お金なんてそんなに持っていないただの高校生にとっては羨ましくて仕方ない。
そこでオーディションを受けた経緯を話した。
茜は親にかなりの反対を受けたようだが、小さい頃からあったというアイドルになりたいという夢への熱意や強い想いを語ってどうにか許しを得たらしい。
有名俳優に会いたいという楓のために出場した私たちとはぜんぜん違う。
「……で、お姉ちゃんと一緒だということで渋々了承してくれました。
その間祖母の家で祖母の看病をしていたので離れるわけにもいかず関西でエントリーしました。
そのとき関東で出てたら梓先輩と当たってたと考えると……僕関西代表として出場して良かったです!」
そう嬉しそうに言った。
ぱぁっと開いた笑顔は無邪気で可愛さを感じた。
こっちまできゅーんとしてしまうような、そんな感じ。
あの小さい子を見たときの『可愛いねぇ』っていう感情がなぜか茜を見ていても湧いてくるのは、彼が可愛らしいからか。
写真を見て、たしかに関西代表だと言うのにも頷けた。
そこで全員がまた眼鏡を外し、髪もおしゃれにセットした。
ちょっと試してみたい服があるという茜によって、ミニファッションショーをしてみようという話になったのだ。
茜が六セット服を持って来ていたので、私たちもそれを借りた。
梓はカジュアル系、私はかっこ良い系、茜はゆるくて可愛い系。
男物だったが茜が低身長だったおかげで難なく着られた。
「それ良いね、かっこ良いのも似合ってるんじゃん?」
「梓さんも普段着のような格好も良いと思いますよ」
そんな褒め合いをしていると、廊下から足音と話し声が聞こえた。
「昼間さー、またあの和泉がさー……」
話している内容から考えて昼間の女子グループだと思い当たった。
そう思えばここは彼女らの拠点だった……。
焦ってそれぞれが隠れる。
私は掃除用具入れに……え?
「葵先輩……すみません、ちょっと我慢してください……」
急いでいた私と茜は、あろうことか同じところに隠れてしまった。
狭くて暗い、この掃除用具入れの中に……!
私自身が可愛い系男子が好きなのもあって、ついつい出してしまったのだと思います。
きっとこれからの作品でも一人は出てくるのでは……?




