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謎のいけめん族である。

次の日、授業中梓は相変わらず話しかけてきたが、私もそれに笑顔で返すようになった。

授業中先生に見つからないようにこっそり話すのも楽しくて、少しずつ挟むギャグに声を抑えて笑っていた。

ノートを見ていた視界がいきなり暗くなった。

ひきつった顔のまま上を見てみると、腕を組んでこちらをじっと見る先生がいた。

怒られる、そう思ったが、


「まさか和泉までそんなことするとはなぁ……はぁ……」


頭を抱え、ため息をついて黒板の方へ戻って行った。

ちらっと梓の方を見ると、彼も同時に私の方を見た。

ぷっと堪えきれず笑い出し、


「先生、なんか怒る気力もなくして完璧に自信失ったな。

『ああ〜俺の授業はみんな聞いてくれないんだぁ……』とか思ってそう」

「わ、笑わせないでくださいよ……!」


梓はあごを前に出し、この先生の顔と声まねをした。

その顔や声、そして言い方までそっくりすぎて息が苦しいくらい面白い。

先生がまたこちらを見て、哀しそうな目をして大きなため息をついた。


休み時間、いつも梓とともに行動している派手グループの女子四人が来た。

机に寄りかかり、座っている私を囲む。


「なんかさぁ、最近うちらの梓に付きまとってるみたいじゃーん?」

「私好かれてるーとか思ってるわけ?」

「別に梓はあんたが好きなんじゃなくて可哀想なぼっちを放っておけないだけだからね?」

「カンチガイして調子乗ってんなよ?」


一人一人なぜか疑問文で睨みつけながら言われているが。

……これって梓に近付くなーっていう警告?


「まだ梓に付きまとったりするようなら」

「あたしらが無理矢理引き離して」

「梓を守るから」

「手段なんて選ばないかんな?」


なんでこんな意味不明な言い方なんだよ。

卒業式の『僕たちー、私たちはー』みたいでおかしいと思ったが無表情を保つ。

……これは警告なんかじゃない、脅しだ。


「ねぇ、みーぴょん。……一発、やっちゃって」


みーぴょんと呼ばれたのはふくよかすぎる大きな女。

腕は脂肪と筋肉で信じられないほど太く、指をバキバキ鳴らしている。

友達の名前を呼んだ後すぐにドスのきいた低い声で命令するリーダーも怖いが、やっぱり力ずくで命令されたことを実行する手下の方が怖い。


腕を引っ張られ、雑に今は使われていない、彼女らの溜まり場に連れ込まれる。

他の二人に両腕と両脚を抑えられて完全に自由を奪われた。

もう後は『みーぴょん』の固く握り締められた拳が私の顔面を直撃する瞬間を待つだけなのである。


ふぅー……深呼吸して目を閉じる。

静かに殴られるのを待ってあげようではないか。


「なに目閉じてんだ……っ」


ついに私は彼女に思い切り殴られた、そう思った瞬間。


ぱしっ


皮膚同士がぶつかり合ったときの音が聞こえ、痛みは感じることがなかった。

そのとき少し沈黙が続き、私はそっと目を開けて前を見る。

いきなり入ってきた光が溢れていたが、すぐに目は慣れた。


「……大丈夫でしたか」


そこには梓、ではなく、知らない男子生徒が『みーぴょん』の拳を片手で止めながら立つ姿があった。

地味な眼鏡にボサボサの黒髪、校則をきっちり守っている制服はどこか私と似ているところがあった。

ただ、私とは違って背が異常に低かった。


「なんだよてめぇっ」


頬をばしっと一発殴られる。

本当は避けられたはずだが、彼はわざと動かないままだ。


二発目を食らったとき、手がかすって眼鏡が床に落ちた。

殴られる瞬間は見ておらず、その後の彼の表情も見ていなかった。

だが女子グループがはっと息を飲んだ。


血でも出ているのかとばっと彼の方を見ると、そこには大きな瞳と整った鼻、唇、輪郭が揃った男子生徒が立っていた。


……ん? いけめん族?

前回伏線を張りましたが、回収はもう少し後になるかと。

回収し忘れないようにしなければ……!

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