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夕暮れ時の人気のない公園のブランコは、女子中学生の恋話が良く似合う!!

掲載日:2013/05/22

 夕暮れ時の公園には、中学二年生の少女がよく似合う。


 そんなことを、どこかの偉人が言ったかどうかは定かではない。大事なのはそこではない。今現在、この公園に中学二年生の少女が居ることが大事なのだ。

 

 二人の少女は、夕方の誰もいない公園で、ブランコに揺られては、他愛もない会話を繰り広げていた。一人の少女は、立ち漕ぎで軽快に風を切り。もう一人の少女はブランコを漕ぎもせずに、椅子として利用していただけだった。

「夕焼け空って綺麗だよねぇ~」

 立ち漕ぎの少女は、漕ぐのを止めること無く言った。

「私は、青空のほうが好きかも」

 座っている少女は、一瞥もしないで呟いた。

「春の、草木芽吹く香りっていいよねぇ」

「私は、夏の日に焼けた土の匂いのほうが好きかも」

「山田っていいよねぇ」

「私は、鈴木くんのほうが好きかも」

 そう答えた直後、少女は相手にハメられたことに気がついた。

「なるほど」

 誘導尋問に成功した立ち漕ぎの少女は、ブランコを急停止させた。

「知らなかったわー。花陽はなよが鈴木の事好きだったなんてー」

「ば、馬鹿ッ……。山田くんか、鈴木くん、どっちかなら、鈴木くんのほうかなぁ~って意味なんだからね!!」

 いままで物静かキャラを装っていた花陽と呼ばれた少女は、動揺をあらわにした。


 ちなみに、彼女らの通う中学は、超絶過疎化の進むド田舎にあるために、全校生徒はたったの八人。中学二年生は全部で四人。すなわち、ここに居る二人の女子の除けば、あとは二人しかいないのである。


「はいはい、そういうことにしておいてあげます――なんて、言うと思ったか!! 本日は、『徹底記者会見、花陽の想い人は誰!?』 をおこないたいと思います~」

 パチパチパチパチ

 どこからともなく、拍手の音がこだました。

「うふふふふ……凛子りんこぉぉぉぉ」

 ブランコから立ち上がった、花陽の背後には黄金色に光り輝くオーラが立ち昇っていた。

「こりゃまずい……。私は避ける、何が何でも避ける。」

 顔面蒼白になった凛子は、ブランコから飛び降りて、花陽からの距離を出来る限りとろうとした――が、間に合いはしなかった。

「凛子のアホォォォォォォ~~!!」

 その刹那、音速を遥かに突破した花陽の拳が、凛子のみぞおちに向かって放たれた。

「ひゃ~」

 みぞおちに向かって、正確に放たれたと思われた拳は、約一メートル横にそれていた。が、しかし、ソニックブームが凛子の身体を、空高く舞い上がらせていた。

「私は見事に着地を決める。きっちり着地を決めて、怪我一つないんだからな!」

 と言っては見たが、ただ今凛子の身体の位置は上空二十メートル。どう軽く見積もっても、即死コースは逃れられない。だがしかし、凛子は空中五回転、途中サービスシーンのパンチラをはさみながらも,見事に着地を決めてみせたのだった。

「ふぃ~危ない危ない。ホント、花陽と居るといつ命を落としてもおかしくないわぁ~」

 凛子はスカートについた土埃を払いながら、自分の生を実感していた。

「凛子……自業自得って言葉を知っているかしら?」

「いやいや、ちょっとばっかしからかっただけで、命奪われてたらたまりませんってば。ホント、花陽は一見クールに見えてるけど、煮えたぎるマグマみたいなもんなんだからなぁ」

「誰のせいで噴火していると思っているのよ!! ほんとにもう」

 頬を膨らまして怒る姿は、どこからどう見ても普通の可憐な女子中学生でしかなかった。

 が、しかし、蒼龍花陽そうりゅうはなよは、一万二千年前から続く暗殺拳法『暗弩炉女堕流アンドロメダりゅう』の正統後継者なのである。

 ちなみに必殺技は、太陽系割りである。


「ホント、私じゃなかったら死んでたよ。私のスーパー能力のお陰で人殺しにならないですんでんだから、感謝してほしいわ。今すぐ千円くれてもいいわー」

 等と、具体的な額を請求する少女。彼女の名前は言ノ葉凛子ことのはりんこ。一見、ショートカットでくりくりお目目、そんなボーイッシュなかわいい女子中学生であるが、実は一万二千年と三日前から続く『言語自在流パーフェクト・ワードの使い手である。

 これは文字通り、言葉に出したことが現実になるという、神の領域の技であった。

「うわぁ、こんなことに、技使っちゃったよぉ。今月お小遣いきびしいのになぁ」

 これは一体どういう意味を指しているのだろう? それはすぐさま解ることとなる。

「まいど!」

 空間の歪みから、気さくな感じで唐突に顔を出したのは、言葉の神である。

 容姿を説明するならば、メガネをかけた人の良さそうなおっさんである。ただし、大きさは三十センチほどであるのだが……

「えぇっと、今回しめて二百八十円となりますぅ」

 言葉の神様はそろばんを弾きながらニコニコ笑顔で言った。

「もうちょい、おまけしてくれない?」

「いやぁ、うちも商売ですからねぇ。これでも原価ギリギリなんですよぉ」

「しゃあねえなぁ、ほれ」

 そう言うと、凛子は神様の手の上に、渋々と二百八十円をおいた。

「ありがとやしたー。またご贔屓に~」

 そう言うと、言葉の神様は、また時空の穴から帰っていった。

 何が一体どう原価なのか。疑問は尽きないところだろうが、人にも色いろあるように、神様にも色いろあるのだ。


「んで、話戻すけどさー。花陽ってさ、鈴木のことが好きなわけ?」

「そんなことよりも、ほら、凛子。夕日が綺麗よ」

「いやいや、夕日とかはどうでもいいからさー。実際どうなわけよー。ラブなの? ラブしちゃってるの? ラブな人生なの?」

「うふふふ……ほら、凛子、夕日が綺麗だから、裸眼で長時間直視するといいわよ」

 勿論、花陽は笑ってなどいなかったし、冗談を言っているつもりもなかった。凛子の後頭部を鷲掴みにして、夕日から目をそらさせないように、がっちりホールドしていた。

「まずいって! これホントに目が駄目になるやつだってば!!」

 ジタバタともがく凛子のことなど、まるで意に介さないように、

「当たり前じゃない。目をダメにしようとしているんだから、うふふふ」

――こいつ本気だ……

 好きな男を聞き出そうとしたら、両目を潰されました。なんて、笑い話で済むレベルではない。完全にホラーだ。しかし、今現在進行しているこのシーンは、まさにホラーそのものであった。無表情で『うふふふ』とつぶやく花陽は、すでにごく普通の女子中学生のソレとは明らかに違っていた。

「はっ、そうだ!!」

 凛子は閃いた。

「顔を夕日からそむけられなくても、目を閉じればいいじゃないかー」

 まさに、コロンブスの卵的発想である。

 えっ? なぜすぐに思いつかなかったのかって? 人間窮地に立たされたときは、得てして冷静な判断ができないものである。もし、嘘だと思うなら、友人に殺意を抱かれてみるといいだろう。

「ふふふ、これで私の目は守られたぞー」

「はたしてそれはどうかしらね……うふふふふ」

 その刹那、凛子の首筋に針に刺されたような痛みが走った。

「うふふふふ、秘孔っぽいものを突いたわ。凛子の意志とは関係なく、瞼は開いていくわ」

「な……ん……だ……と……」

 その言葉通りに、凛子の瞼が己の意志とは関係なく、ゆっくりと開いていった。

――このままでは、私の目はホントに焼かれてしまう。こうなったら最後の手段をとるしか……

「花陽ォォォォ。――ご、ごめんなさい……」

 凛子の必殺『涙目で素直になっての謝罪』が炸裂した。

「もぉ……わかればいいのよ、わかれば」

 効果は抜群だ。

 後頭部を完全にロックしていた腕は解かれ、凛子の身体は開放された。

 


「わぁい、真っ赤じゃない世界って素晴らしいなー」

 瞼の開閉を自由にできることが、これほど素晴らしいことだったなんて――それを初めて知った凛子は、産んでくれた父と母に感謝の念を贈った。

「んで、話を戻すけど、花陽は鈴木のことを……」

 と、そこまで言いかけて、鈍い音と共に自分の足元に全長数キロはあろうという地割れが出現したことを視認して、言葉を止めた。

「あら、何を言いかけたのかしら?」

「ううん、なんでもない! ホント、なんでもない!!」

 その地割れが、花陽の拳によるものであることを、凛子は熟知していた。故に、言葉を止めざるを得なかった。


「まぁあれだよね。山田はタダの野球バカだし」

 

 閑話休題ではあるが、クラスメイトである山田太郎は、野球部に所属している。とは言え、全校生徒合わせても八人しかいないので、野球など出来るはずもない。さらに、野球部に所属しているのは、山田太郎一人だけという有様であった。唯一の救いといえば、山田太郎が時速二万キロのストレートを投げられるくらいである。


「さらに、鈴木のやつは、クールを気取った変形合体野郎だし」


 さらに閑話休題ではあるが、鈴木こと、鈴木メッサーラは基本的にクールな世捨て人タイプであるのだが、テンションがあがると変形をする。そして一年生に弟(鈴木ギャプラン)がおり、弟と変形合体をすることで、更なるパワーアップをするという噂があるとかないとかウンタラカンタラ……

 

「そんなのと恋に落ちるくらいなら、私は花陽と禁断の愛に落ちたほうがいいよっ」

 それは、ほんの冗談で言った言葉だった。

「な、な、何を言っているの……。バ、バ、馬鹿じゃないかしら!! 同性同士の恋愛なんて、あ、あり得ないに決まっているじゃないかしら!! そ、それも相手が凛子だなんて、あ、あ、あ、ありえないわー、ありえない率三京パーセントだわー」

 花陽の動揺っぷりは、半端ではなかった。どれだけ、鈍感なラノベ主人公だとしても、気がついてしかるべきレベルであった。

 勿論、それを見落とす凛子ではなかった。

「そっかー。私は花陽のこと、好きだけどなー」

 小悪魔のように言っては、花陽の顔をのぞき込んだ。

「な、何を言っているんだか。凛子は夕日の見過ぎで目だけじゃなく、頭もおかしくなったの!!」

 花陽は、即座に顔を伏せて、神速の如きスピードで十五メートルほど後ずさった。そして、大きく深呼吸を一つしてから……

 

「私も、凛子の事……好きだから……」


 相手に届かないように、聞かれないように、小さな小さな声で、花陽は呟いた。後ずさった十五メートル、それは相手に声が聴こえないための距離であった。

 花陽の顔面は、夕日のはるかに超えた、赤さと温度をたたえていた。


 永遠とも思える数秒間の沈黙がそこにあった。


「よぉし、そろそろ遅いから家に帰りますかー」

 沈黙の均衡を破る口火を開いたのは、凛子だった。

「そ、そうね、もうそんな時間よね」

 凛子は軽快なステップで花陽の横に並ぶと、無造作に右手を差し出した。

「な、何よこれ……」

「手、繋いで帰ろうぜい」

「バ、馬鹿じゃないの。私達もう中学二年生よ。それなのに、手を繋いで帰るとか……」

 言葉と行動は、必ずしも一致するわけではない。否定的なことを言っていても、身体は別の方に動いてしまうものだ。

 花陽は、凛子の差し出した手に、自分の手を重ねていた。

 

 

 二人の女子中学生は、夕日で大きく伸びた影を公園に残しながら、家路についた。

 公園には、マグマ層まで達しようかという、地割が取り残されていたとさ……


「まったくぅ~、後片付け大変なんだぞぉ」


 再生を司る女神、神那恵かみなめぐみ中学三年生は今日も大忙しであった。



 おしまい。

 

 


 読んでくださいましてありがとうございます。

 この短編と、同じ世界設定、同じ登場人物の短編が数作存在しておりまして、、よければそちらもよんでくださいまし~


 田舎の中学に異界のゲート開く!!

 http://ncode.syosetu.com/n4065bq/


 超古代兵器、恋文をもらう

 http://ncode.syosetu.com/n4410bq/


 登校時にはパンをくわえて曲がり角に注意!!

 http://ncode.syosetu.com/n5006bq/

 

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