行く先失った想い
私は煉瓦の花壇に腰掛けていた。
さわやかなそよ風が私を包み、何枚かの木の葉が横を舞う。
後ろから近づく足音。
「さくら…」
振り返ると、愛しい人が微笑みながらこっちを見ている…
「純。」
触れたくて急ぎ足で近づいた。
「さくら…さくら!」
目を開くと、さっきまで見ていた顔と同じ…でも、ちょっと違う。
「翔…?」
彼は私の前の席に座って話しかけてきた。
「お前いつまで寝てんだ?とっくに放課後なってんぞ?」
ふと時計を見ると、6時になる少し前だった。
「…ほんとだ…全然気付かなかった。」
彼はさみしそうな顔をしたあと、そっと呟いた。
「純……か…」
2人しかいない教室。その声はハッキリと私に聞こえた。
窓の外を見ると綺麗な緑の木々達が、夕日色にほんのり染まっていて、
心が締め付けられるような…そんな淡い色を出していた。
私はあの日から毎日のように同じ夢を見ている。
純は私に微笑みかけて、いつまでも思い出を引っ張り出す。
ねぇ……どうしたらいいか…何をしたらいいか…
どうやって生きたらいいか…何にも…何にもわからない。
「ごめん。翔…」
帰り道、突然口を開いた私に翔は驚いたと思う。
それから私は何も言わず俯いていた。
「なんでお前が謝るんだよ…」
胸が苦しくなった。
純がいなくなってから、翔は私にものすごく気を使ってくれた。
自分も辛いはずなのに……
「ごめん…」
純を忘れるなんて絶対ありえないし、前を向いて生きてだっていけない。
「消えたい…消えてなくなりたいょ…」
「…ふざけんな!!!」
私の言葉に、翔は声を荒げて怒鳴った。
「なんでそう馬鹿なこと考えるんだよ…お前…
お前までいなくなったら…俺、どうなるんだよ…」
翔の初めて見る弱く泣きそうな目に、私は後悔した。
「………翔。」
「…何?」
翔が涙をぬぐったように見えた。
「私、純が大好きなの…」
「……うん。」
「いなくなっても、大切なの…」
「……うん。」
「想いは、ずっと純の方に向き続けてる…」
目の前が見えなくなっていた。
「………。」
翔は私を抱きしめた。
翔の体が小刻みに動いていて、私も涙が溢れてきた。
大好き…大好き…純…どこにいるの?
帰ってきて…さみしいよ、切ないよ…
「俺がいるから……あいつと同じ顔なんてお前は心底嫌かもしれない…
でも、俺がお前を一生まもってやるから!!」
「ぅぅっ…」
あぁ…翔がいてくれて良かった。
ありがとう…
今は、まだそれしか考えられないけど…
あなたがいなくても、生きていく方法を探すよ。純…