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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

鬼教官と眠る騎士見習い

作者: 羽倉了
掲載日:2026/05/05

ガリー・ガリガリは教官である。

騎士見習いたちにとって、ガリーは鬼教官である。

だが一人だけ恐れない強者がいた。

ジャン・ダンである。

優秀な成績で騎士団に入団したが、訓練では何故か落ちこぼれだった。

とにかく眠る眠る。

訓練中でも舟を漕ぎ、ガリーが叱っても眠る眠る。ガリーは頭を抱えた。

食堂でも舟を漕ぎ、スープの皿に顔を突っ込むこともあった。

「ほら! ちゃんと口を開けなさいジャン・ダン!」

ガリーは思わずジャンの世話を焼く。

あるときガリーは目撃する。

王太子殿下とジャンが一緒にいるところを。

笑い合う姿に胸の奥が痛んだ。

ガリーは二人から目を逸らした。

そしてジャンの世話を焼くのをやめた。

ジャンはスープの皿に顔を突っ込む。

ガリーはその場から離れる。

王太子殿下と笑い合ったジャンの顔が忘れられない。


訓練中に飛んできた木刀が顔にぶつかり、鼻血を出してよろめいた。

「教官!」

ジャンが木刀を放り投げてガリーに駆け寄る。

「大丈夫ですか!?」

鼻を押さえるガリーはただ頷くだけで、何も言えないでいる。

「ああ! 教官が何も言わないなんて! 死んでしまう!」

「死にませんよ」

木刀を飛ばした見習いは顔が真っ青で、今にでも倒れてしまいかねないでいる。

「そのまま訓練を続けなさい。私は保健室に行きます」

「オレが付き添います」

ガリーはジャンの言葉に何も言わなかった。


保健室は開いていたが、保険医は出ているようで誰もいない。

ジャンは何処からか見つけたタオルをガリーの鼻に押しつけた。

「いつもの教官なら受け止めるか避けるかするでしょうに、今日はどうしちゃったんですか?」

ガリーは血に染まったタオルを鼻から離すと、鼻血は止まっていた。

「私にもぶつかる日があるんですよ」

「教官にぶつけた奴、オレと打ち合いしてたんです。オレのが決まって、木刀を飛ばしたんです。でも決めたオレが悪いですよね? すみませんでした」

「あなたが悪い訳じゃないでしょう」

「なら飛ばしたあいつですか?」

ガリーはジャンから目線を落とす。

「私がいけなかったんです」

「今日の教官は本物ですか? 教官の皮を被った別人じゃないですよね?」

「さあ。どうでしょうね? どっちだと思います?」

ジャンはガリーの頬を引っ張る。そしてキスをした。唇から離れるジャンをガリーは見る。

「どうしてキスしたんですか?」

「今なら怒らないと思って」

ジャンはもう一度ガリーにキスをする。

「オレ、もうすぐ毒味役から外してもらえそうなんですよ。そしたら教官の一番の生徒になるんで、そしたら付き合ってくれませんか?」

「あなた。毒味役なんてしているんですか?」

目を丸くするガリーにジャンは頬を掻く。

「あれ? 知りませんでしたか? 他の教官は知っているんですけど」

「知りません。どうしてあなたが毒味役なんてやっているんですか?」

「オレの体質はどんな毒でも体内で分解できるんですよ。その代わり眠くなるんですけど。オレが優秀な成績で騎士団に入団したんで、王太子殿下が毒味役はもったいないとおっしゃられて、毒味役から外してもらえそうなんですよ」

「だからいつも眠そうだったんですね」

「てっきり教官も知っているものかと思ってました」

「ガリーと呼んで下さい」

「いいんですか? オレまだ教官にふさわしくないのに?」

「私の隣は私が決めます」

二人は見つめ合い、そしてどちらともなく、キスをした。

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