3.恋人、なんですよね
「今日さ、帰りに飯行かない?」
仕事終わりの帰り準備中、先輩が言った。
「……急ですね」
「だめ?」
先輩が覗き込んでくる。
少しだけ恥ずかしくて、けど嬉しい。
「……だめではないですけど」
そう返すと先輩は満面の笑みで俺を見た。
「良かった。初デートだな」
「なっ」
言葉の破壊力。
デート……。
「え、嫌なの?」
先輩の顔が沈む。
俺は慌てて手を振る。
「や、嫌とかじゃなくてっ……」
顔が熱い……。
少しだけ目を逸らす。
「……なんか……恋人っぽいな……って」
声がだんだん細くなる。
先輩の顔が柔らかくなる。
「恋人だろ?」
俺は目を先輩に向ける。
「……え?」
「え?じゃねーだろ?違うの?」
もうだめだ。
顔が真っ赤だ、たぶん。
……なんか、泣きそうになる。
「……それで、いいんですよね……?」
「お前はまだそんなこと言ってんの?」
呆れたような先輩の顔。
先輩の手が俺の頭を撫でた。
それから、ぎゅっと抱き寄せられる。
「雪はさぁ、もうちょっと自惚れてもいいんだよ?」
俺は先輩のシャツの裾を掴む。
「俺は……慎重派なんです」
先輩がおかしそうに笑う。
「なんだよ、それ?」
背中に回った先輩の手が、ポンポンと叩く。
「ま、まずは今日初デートな」
今度は俺は素直に頷いた。
「はい、嬉しいです……」




