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血と愛は同じ赤色をしている  作者: 津崎新


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7

正吉との仕合に勝利した勘助は駒姫の護衛をすることが認められた。だが、駒姫の側に四六時中いるわけではない。


元々、駒姫の護衛はたくさんいる。交代制になっており、勘助の担当は主に夜である。そのため、日中は空き時間となっていた。


駒姫誘拐のために城内探索をしなければならないとはいえ、あまり城内をうろうろしたら怪しまれる。


勘助は空き時間を主に鍛錬に当てることにした。城内は稽古場があり、自由に使ってもいいとのことだった。


「おう、勘助。今日もきたのか」


「精が出ますね」


勘助が稽古場に一礼して入ると、汗だくの男達に声をかけられた。駒姫の護衛に着任してからというもの、沢山の人に話しかけられるようになった。


勘助は片手を上げて返事した。稽古場に立て掛けられていた木刀をとると、そのまま稽古場の隅の方へと向かった。情が移りすぎると、任務遂行の妨げになる。


勘助は木刀を振るい始めた。風を切る音がする。炎を扱うことも大切だが、それだけでは駄目だ。きちんと刀と呼吸しなければならない。


それに伊与に頼り切っていたら、夫としての矜持がなくなってしまう。勘助は畳を踏みしめ、腰を使って、刀を振るった。


勘助の額に汗が滲む頃に小さな気配が近付いてきていた。


「しーしょー。今日も刀を教えて」


弥太郎という少年だった。

仕合を見て、勘助の武を大層気に入ったようで、弟子入りを志願してきたのだ。


弥太郎は亀山家に代々遣える武士の家系だが、戦で父親を亡くしたばかりで、刀を教わる相手がいないようだ。そのような事情があり、あまり無下にすることもできず、弟子入りを渋々受け入れた。


「ああ、わかった」


「どうやったら、しーしょーみたいに刀から炎を出せるようになるの?」


弥太郎は純粋な目で勘助を見た。


神刀の一族を継げばいい。今まで稽古をつけてやっていたが、弥太郎には素質がありそうだ。初めて神刀の一族を継がせたいと思う子供に出会った。


だが、焦ってはいけない。今はまだその時ではない。


駒姫を拐う時に合わせて、ついでに弥太郎も拐ってしまえばいいのだ。


そう思うと、弥太郎に刀の極意を伝えたくなる。弥太郎は一族の後継になるのだから。


「それは刀に聞いてみないとわからないな」


「……どういうこと?」


「晴れの日も、雨の日も、風の日も、刀を振るって、刀のことをよく知ることだ」


「わかった。僕、毎日刀を振るうね」


そう言うと、弥太郎は木刀を振るい始めた。


素直に物事を聞く子は上達が早い。勘助は目を細めて、弥太郎を見た。


しばらく稽古をつけていたら、弥太郎のお腹が鳴った。


「しーしょー……お腹減った……」


周囲を見渡すと、誰もいなかった。どうやら、没頭しすぎたようだ。


「よし、それなら飯にするか」


「やったー!」


勘助達は木刀を立て掛けると、稽古場から一礼して出ていく。


二人は城内の台所へ入る。そこでは家臣達が賑やかに食事をしていた。


勘助と弥太郎が席に着くと、女中が近づいてきた。手には二人分の食事の盆がある。


「お師匠さん。うちの子がいつもお世話になっています」


弥太郎の母親であった。


弥太郎はどこか照れ臭そうだった。


「何できたんだよ、母上」


「お世話になっているんだから、ちゃんと挨拶しないとね。この子ったら、最近はいつも師匠さんの話をするんですよ。今日はこんなことをしたとか、僕もいつかしーしょーみたいに刀から炎を出すんだとか。お礼にお師匠さんは大盛です」


お盆には確かに大盛の玄米がよそわれていた。味噌汁も具沢山な気がする。


「母上! もういいでしょ!」


「おほほ、ごゆっくり~」


弥太郎の母親は配膳すると去っていった。


「もう、母上ったら……」


弥太郎は頬を膨らませた。


「でも、しーしょー。いつも刀を教えてくれてありがとう! 僕、いつかお家の再興をして、母上を楽させてあげたいんだ」


弥太郎は笑った。


神刀の一族を継いで、儀式をすれば、刀から炎を出すことは可能だ。しかし、そうすれば、弥太郎は家の再興も母親を楽にすることもできなくなる。


勘助と弥太郎は違う方向を見ているような気がしてならなかった。


食欲がなくなった勘助は大盛の玄米を育ち盛りの弥太郎にあげることにした。

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